【北京=永井央紀】沖縄県・尖閣諸島周辺での中国船の航行をめぐる日本側の再三の抗議に対し、中国側は展開する海警局の船を増やして対抗した。習近平指導部が領有権を主張する尖閣諸島について、日本の実効支配を弱めようとする意図がより鮮明になった。
中国側が日本への圧力を強めた背景には、南シナ海問題への日本の関与をけん制する狙いを指摘する声が多い。杉山晋輔外務次官や横井裕駐中国大使が連日抗議するなど異例の強い対応を取っているものの、中国側は挑発ともとれる行為を依然繰り返している。
現場海域は日本の排他的経済水域(EEZ)内だが、2000年に発効された日中漁業協定により中国漁船も操業できるようになった。8月1日から東シナ海での中国漁船の操業が解禁されたことを踏まえ、日本政府関係者は「休漁が明けて大量の漁船が出漁するのに便乗して、海警局の公船がパトロール名目で尖閣周辺海域を航行した可能性もある」と警戒する。
海上保安庁の巡視船が領海から出るよう警告した際、中国公船からは「中国の管轄海域で定例のパトロールをしている。貴船はわが国の管轄海域に侵入した。わが国の法律を守ってください」と応答があった。
中国側は船舶の数を増やした一方、上陸を試みるなどの行動には踏み切っていないとみられ、あくまで領有権や施政権を強調する思惑があるとみられる。ただ、海保だけでなく海上自衛隊の艦船を現場に派遣すれば、中国海軍の軍艦を呼び込む口実にされる恐れもあり、日本政府は難しい対応を迫られている。
中国では習指導部と長老が重要課題を協議する非公式会議を開催中で、この時期に合わせた強硬姿勢は、中国共産党内での政治的な駆け引きの一環との見方もある。先の内閣改造で入閣した稲田朋美防衛相が例年、終戦記念日に靖国神社を参拝していることも影響しているとみられる。