人口密度が過度に高い東京都の知事に小池百合子氏が就任しました。小池氏の地盤でもある豊島区は、池袋という繁華街を持ちながら2014年5月に“消滅可能性都市”に23区で唯一指定された自治体です。
大都会の中心自治体が消滅候補に指定された衝撃は当時大きなニュースになりましたが、豊島区はその後、革新的な取り組みを行い、全国の自治体から財政健全化モデルとして熱い注目を集めています。
“消滅可能性都市”とは、民間研究機関「日本創成会議」(増田寛也座長)が896市区町村(全自治体の49.8%)を「少子化に伴う人口減少で、存続が危ぶまれる都市」と指定した自治体です。
不名誉な指定を受けた豊島区でしたが、1年後の昨年5月、49階建てのマンション一体型の大規模な新庁舎「としまエコミューゼタウン」を完成させました。2019年秋には旧庁舎や豊島公会堂の一帯にオフィス棟や劇場などの大型複合施設を完成させる予定で、池袋東口の街並みはより広域化し、賑やかになるとみられます。
心配なのは区の財政。先々の存続さえ危ぶまれているのに、こんな大盤振る舞いをして大丈夫なのでしょうか。
豊島区の新庁舎は「日本初のマンション一体型本庁舎」とされますが、実はこの庁舎、税金は一切使わずに実質ゼロ円で建てたとして昨年大きな話題になりました。1年以上経過した現在も国内外からの視察が連日、相次いでいるそうです。
庁舎改築の動きは1988年からありました。460億円をかけて区庁舎と豊島公会堂を新しくする構想が持ち上がったものの、バブル崩壊により豊島区の財政も悪化し構想は棚上げされました。1999年には872億円の負債を抱えます。区はリストラを敢行。少子化に合わせ学校や児童館などを統廃合し、区職員の数も総計で1000人以上削減しました。
耐震強化や手狭な旧庁舎での区民の行列をなくすために、2004年9月から新たに新庁舎整備の計画が動き出します。どうすれば財政を悪化させずに建設できるか。豊島区は、手持ちの“駒”をフル活用します。
木造家屋が密集したエリア一帯が再開発事業地区に指定され、事業費は約434億円。このうち国からの補助金は約106億円でした。
新庁舎の土地にかかる経費は約220億円と積算されました。少子化による統廃合で廃校となった旧日出小学校と旧児童館の敷地を再開発事業地の一部とすることで、経費をできるだけ絞り込みました。再開発以前の区の土地の資産評価は約35億円でしたが、分譲マンションを上部に乗せて高度利用することにより資産評価は約85億円になり、新庁舎の必要な床面積約2万5500平方メートルの4割はこの権利の変換分として無償で取得したのです。
残りの6割の分の約136億円については、老朽化により建て壊す旧庁舎跡地と豊島公会堂などの区有地を76年間の定期借地権で民間に貸与して約191億円を捻出しました。
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