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第23~26話 ギルドマスターと『女楼蜘蛛』の伝説
第話
エルクとコンビを組んで、ノエルさんがノエル姉さんだと発覚してからしばらく。
このところの僕の1日は、エルクとの『朝練』から始まる。
これは、ノエル姉さんとの面会の後、エルクが僕に『稽古を付けてほしい』って言い出したことに端を発する。
いわく、僕とコンビを組めたことは嬉しいし、自分を信頼してくれたのも光栄だけど、今のままじゃ僕と自分があまりに釣り合わなすぎる。
そんな仲間とは名ばかりの、完全におんぶに抱っこの関係になるのは嫌だ、と。
コンビとして方々の危険区域に行ったり、様々な依頼を共にこなしていく以上は、最悪でも僕の足手まといにならないくらいの実力はつけたい、と。
まあ、彼女の向上心はいいことだと思うし、その気持ちを無駄にするのはやはりはばかられると思ったので、僕もそれを承諾することにした。
事前に、そんなに上手く教えられるわけじゃないけど、と断った上で、彼女との訓練を始めたわけだ。
この訓練の中で、エルクは一回一回、確実に腕を上げているように思える。
手合わせしてる僕の感覚では、だけどね。
その訓練が終わると、エルクが整理体操とクールダウン、それに自主的なおさらいをしてる間に、今度は、僕自身のトレーニングに入る。
と言っても、ただの筋トレとシャドー程度だけど。
あの洋館にいた時からの日課だ。一応、なるべく毎日やることにしている。
ただ、筋力とか自体は、もう十分に足りてるし、簡単に衰えたりしないように、ちょっとした工夫もしてあるから……正直、あまり効率的な訓練とは言えないんだけど。
実際最近は――というか、洋館から出る前からなんだけど――腕立て伏せや腹筋程度、別に苦でもなんでもなくなってきた。
現状維持ならともかく、今以上に鍛えるなら、もっとキツめのトレーニングを考えなきゃいけないんだけど、回数増やすと時間かかるし、かといって他にやりようも無いし……
「その、考えてることが途中から口に出る癖、何とかならないの?」
「うん?」
と、いきなり後ろから声がかかる。
そこには、相変わらず素敵なジト目を送ってくるエルクが。いかんいかん、また声に出てたみたいだ。
そして、その彼女が纏っている服は、いつもと、というか今までと違うそれだ。
「……? どうかしたの?」
「いや、やっぱ似合うなーと思って、その服」
「そ、そう? まあ、うん、ありがと」
今、エルクが着ている、というか、装備しているのは、僕と出会った時に使っていた、母親のお下がり+安物の既製品を組み合わせた装備ではなく……最近新調した、ほぼ全てがオーダーメードの新品の装備である。
今まではただの麻布の、年季が入った感じだった服は、清潔感漂う、丈夫な布地のそれに変わった。肌触りからして違いそうだ。
腰には、これまた新品の丈夫そうな革のベルト。
そしてそこには、お母さんの形見のあの『ダガー』が。
そして最大の目玉は、見た目一発で上質かつ高級な品だとわかる、鎧だ。
鎧って言っても、そんなに重厚なやつじゃない。
軽鎧ってやつだろうか。必要最低限の部分だけを覆った、動きやすそうなそれだ。
前世のRPGとかだったら、シーフとかが装備してそうな感じのそれだ。
鮮やかな緑色をしているこの鎧は、そう、ノエル姉さんの商会を頼って、信頼できる防具屋に発注していたもの。先日仕留めたあの大蛇――あの後『ナーガ』という呼び名がついた――の鱗や革なんかを素材として作ってもらった鎧である。
やはりというか、魔物素材で防具やら何やらを作るのは冒険者にはポピュラーらしく、持ち込んだ素材のレベルに感心しつつ、快く引き受けてくれた。
そのついでに、他にも色々注文して作ってもらったんだけど、それはまた後で。
そして、加工業者と仲介してくれたノエル姉さんの話だと、同型の市販の鎧とは比べ物にならないくらい高性能であるとのこと。重さは革製のものとほぼ変わらないにもかかわらず、硬度・強度ともに純鉄をしのぐらしいし。すごいな、魔物素材。
ついでに、鱗以外の皮なんかも使って、インナーとかの服も作ってもらった。
どれもこれも、一見して、駆け出しレベルの冒険者なんかには縁が無い、ベテランの冒険者でもなければ手が届きそうに無い存在感を放つ、一級品の装備品たちだ。
うん、やっぱ似合う似合う。
ただ、その『ナーガ』、皮も鱗も全部緑色だった。加工後は、それがより色鮮やかに。
必然、エルクの服も鎧もそのまま緑色。
そこに、エルク自身の髪も瞳も緑色だから、僕の『全身真っ黒』に続いて、今度はエルクが『全身緑色』になりつつあるんだけど……あえて気にするまい。
まあ、服は緑色、鱗ベースの鎧は、黒に近い深緑色……って感じで、色合いとかだいぶ違うから、気にならない程度だし、いいだろう、多分。
ちなみに、これらの装備を新調するにあたって必要な資金は、僕の方で立て替えさせてもらった。
エルクは、僕に『ナーガ』の素材を提供してもらって装備を新調すること自体遠慮してたんだけど、そこは僕がわがままを通させてもらった。
僕とコンビ組むんだから、それ相応の、僕が安心できるくらいの装備をきちんと持っていて欲しい、ということで。
僕という存在におんぶに抱っこになるのをよく思っていない彼女は、当然いい顔はしなかったけど、僕の主張に間違っている部分は無い。
命を預ける仲間なんだから、その生存率を少しでも上げておく方がお互いに利益になる、というのは、当然の考え方だ。たとえ、過保護だと言われようとも。
それに、いざ作ってみると、
「~~~♪」
……すごく嬉しそうだし。
腕や肩に装備された、緑色の鎧の煌きや、肌を心地よく覆ってくれる、新品の服。
やっぱり、冒険者としては、こういう装備に大なり小なり憧れを持ってたんだろう。
そんな、ほほえましいものを見るような僕の視線に気付いたエルクは、ちょっとドキッとしてたけど、何か言い訳するでもなく、向き直った。
「ま、まあ、分不相応だとは正直思うけど……やっぱり嬉しいわね。素材の高級さとかそれ以前に、きっちり生き残る確率が上がるもの」
「そうそう、そう思っとけばいいって」
そのまましばらく、エルクは、汗の始末なんかをしながら、今しがた褒められた新品の装備にチラチラと目が行っていた。やっぱり、気に入ってるんだろう。
多分、整理体操とかストレッチの一環なんだろうけど、僕にはその動きが、ポーズとってるみたいに見える。
美少女、といっていいエルクが、色合い的にもデザイン的にもぴったりのコスチュームで、いろんなポーズをとってるこの光景は、毎度毎度、真面目な彼女に対してちょっと不謹慎かもしれないけど、僕的には、ちょっとしたファッションショー気分になる。
異世界に来て16年と数ヶ月、未だに根強く僕の中に残っている前世の価値観というものは、冒険者の服装をどうしてもコスプレ的な意味合いをこめて見てしまうようだ。
やはり不謹慎と言わざるを得ないが、あえて言おう! 眼福であると!
とか何とか思ってたら、いつの間にかエルクがまたジト目になってた。あれ、また口に出てたかな?
「人のことじろじろ見て満足げにガッツポーズなんかされたら、誰でも気になるわよ」
……僕には現状、どうにかしなきゃいけない悪癖がいくつかあるようだ。
☆☆☆
ギルドにやってきた僕らは、受付のリィンさん――なんかこの人のお世話になること多いな――に、依頼を受ける申し込みをしたところ、なんか断られた。
理由は……なんと、このギルドの長、すなわち『ギルドマスター』が僕らに会いたがっていて、まずはそっちの要件を先に済ませてもらう必要があるからだそうだ。
理由もわからない突然の呼び出し。やや不安ではあるものの……無視するわけにもいかないので、大人しく呼ばれることにした。
リィンさんは、受付業務を離れるわけにはいかないらしいので、代わりに案内役として紹介された、職員らしい女の子に案内され、僕とエルクは、ギルドの奥へと通された。
にしても、何で僕ら、いきなりギルドマスターなんてすごい人に呼び出されたんだろう? そこ、考えても全然わからない。
一瞬、この前の『ナーガ』の一件で何かあったか、とも思ったんだけど、その可能性は少ないだろうとすぐわかった。
仮にそのことで呼び出されるなら、裏づけ調査も事情聴取も終わり、『ナーガ』が正式に魔物として登録され、報奨金まで支払われたこのタイミングは遅すぎる。
エルクにも聞いてみたけど、やはり彼女にも心当たりは皆無。
というか、『ギルドマスターに呼び出された』っていう状況に、さっきからガチガチに緊張している。
前にさらっと聞いた話だと、ギルドマスターっていうのは、ギルドにおける最高権力者であり、同時に、若い頃は凄腕の冒険者だった、として知られているらしく、全ての冒険者にとって、憧れの的であるらしい。それ考えれば、当然な反応なのか。
「でも、すごいですねぇお2人とも、まだお若いのに、ギルドマスターから直々にお呼び出しを受けるなんて」
と、
前を歩いている案内役の女の子が、唐突にそんなことを言ってきた。
ギルドの制服に、くすんだ茶色のショートヘア、そしてかわいらしい顔つきが特徴的な娘だ。体型はけっこう、出るとこ出て魅力的な……なんでもないです。
「何か、すごい功績でも立てられたんですか? それとも、個人的に親交がおありになるとか?」
「いや、それがわかれば苦労は無いんですけどね……」
「私達も寝耳に水なのよ。いきなり呼び出されて、戸惑ってる所」
いやホント。呼び出しはまあいいとして、理由くらい事前にきかせて欲しい。心の準備とか色々あるから。
リィンさんに聞いても『詳しくは聞かされておりませんので』って言ってたし。
そしたら、
「そうですかー。てっきり私、最近噂になってる黒ずくめの冒険者の方だって言うから、まるで御伽噺の英雄みたいに、どこか危険な樹海の奥深くとかで人知れず生きてきて、そこで途轍もない強さを持つまでに育て上げられて、つい最近世に解き放たれた、金の卵どころじゃない超新星的な身の上か何かあるのかと思ってわくわくしちゃいましたよ」
何ですかその不自然すぎるほどに具体的かつほとんど全部当たってる推測!?
怖っ!? 気持ち悪っ!? え、何今の!?
ニコニコ笑いながらそんなことを言ってくる目の前の職員さんに戦慄する僕。後ろから感じるエルクの『何だそれ』的なジト目が、この時ばかりは萌えなかった。
すると今度はその娘、
「それで、そちらの女性の方は、あ、もしかして彼女さんですか?」
――ずこっ
今度はエルクが動揺する番だった。
何の前触れもなく(ってわけでもないか)自分に向いた矛先に、何もない所で躓くという、かわいらしいけど結構大変そうなリアクションが見れた。
「な、ばっ、い、いきなり何っ!? わ、私はこいつのパートナーよっ!」
「あれ、そうだったんですか? てっきりもうやることやっちゃってる仲だと思ってたんですけど……あ、もしかしてそういう意味での『パートナー』ですか?」
「なぁっ!? あ、あんた何てこと……か、からかってるのっ!?」
「あれ、気付きませんでした? すいません」
「…………っ!!」
「あー、エルク、どうどう」
収穫期のリンゴみたく真っ赤になってるエルクをどうにかなだめつつ。
怒りと羞恥心とでもう理性トんじゃいそうになってるよ。一部当たってるだけに。
それにしても、何なんださっきからこの子?
お茶目とか、フランクとか通り越して、いくらなんでも失礼だと思う。一体何考えてるんだろう。ギルドの職員がこれでいいのか?
もしかして、何かの思惑で、わざとこういう嫌がらせ的な職員を差し向けられてるとか? 理由全然思い当たらないけど。
ともかく、さすがに文句言ってやろうかと思って、歩みを止めてその娘を呼び止めようとしたら、先にその娘が止まった。
そして、
「どうぞ、ここがギルドマス(がちゃり)ターの執務室になります」
言ってる最中で、ノックも無しにあっさりドアを開けて、入るように促した。
……ホントに大丈夫か、ギルドの職員の教育は。
組織の一員として、しかもこれから上司の部屋を客人を引率して訪ねるにあたって、あまりにも礼儀作法に欠けている行動の数々に、しばし唖然とする僕らだったけど、もうこうなったらどうにでもなれだ。
すでにドアが開いてるのに、不自然に待たせても悪いし、叱責はどうせこの人に行くだろうし、ってことで、さっさと部屋に入ることにいした。
無論『失礼します』と一言添えるのを忘れない。
その部屋にいたのは、1人の老人だった。
ただし、ただの老人じゃない。
というか、老人と言っていいのかすら、すこぶる悩む。
2mほどにもなろうかという長身に、色黒で筋骨たくましい肉体。
メガネの奥から飛んでくる眼光は刃のように鋭く、視線だけでそこらへんのチャラ男を失神させるくらいなら余裕で出来てしまいそうな感じ。
多くもなく少なくもなく、といった感じに整えられ、切りそろえられたあご髭が、その威圧感をより一層重厚で、もっと正直にいうと、凶悪なものにしていた。
いや、まあ、ギルドマスターって言うくらいだから、壮年の、それなりに貫禄のある男性を想像してはいたんだけど……コレはさすがに予想外だった。うん。
若い頃も何も、現役で冒険者やって若者を引っ張っていけるんじゃないかってくらいにすごい。もう、ただひたすらに、すごい。
一応、礼服と思しきそれを着てるけども、黒を基調としたその服は、ただの偉い人に収まらず、マフィアのゴッドファーザー的な貫禄を撒き散らしている。
……これ、案内役の女の子、殺されないだろうか。無礼打ちとかで。
ちらっと横を見ると、エルクもまた、驚いているような、唖然としているような、戸惑っているような。うん、表情はともかく、その心の内は察する。
そして、効果音がつくならまちがいなく『ぎろり』であろうその視線をこっちに向けると、この部屋の主――
「お待ちしておりました、ミナト殿、エルク殿。私は当ギルドにて、ギルドマスターの補佐官を勤めさせていただいております、バラックスと申します。どうぞお見知りおきを」
――と思ったら違った補佐さんが、腰を90度に曲げて丁寧に挨拶してくれた。
いや、あんたじゃないのか、ギルドマスター!?
なんかもう存在感とか威圧感とか色々圧倒的だったから、てっきりそうだと思ってすごい身構えちゃったのに、すごい肩透かし食らった気分だ……。
……ちょっとホッとしたのは内緒。
でもあれ? そうすると、ギルドマスターさんがいなくない?
この部屋にいるのは、僕とエルク、それに、今名乗ってくれたバラックスさん。
……そしてたった今、ドアを足でゴスッと蹴って閉めた、案内役の女の子の4人だ。
素行不良についてはもう突っ込まないのでよろしく。
もしかして、ギルドマスターさん、まだ来てないとか?
するとバラックスさん、ちょっと申し訳無さそうな表情になり、
「いえ、ギルドマスターは、きちんとこの部屋にいらっしゃっております……」
とのこと。どこに?
再度周りを見渡してみるけども、今挙げた4人の他に人なんていないし、気配も無い。
「……その前にまず、お二方には、ご来訪いただいて早々、ギルドマスターの悪ふざけにつきあわせて不快な思いをさせてしまいましたこと、お詫びいたします」
「「はい?」」
悪ふざけ? 何それ、どういうこと? いつ?
いやまさか、呼び出し自体冗談だったなんてことないだろうし。っていうか、だからそもそもそのギルドマスターがいないんですけど……
すると、バラックスさんはため息交じりに、
「……ギルドマスター、悪ふざけはそのあたりにして、そろそろきちんとお客様に対して、礼節を整えてはいただけませんでしょうか?」
と、
そんなセリフに、ますます頭の上に『?』を浮かべる僕ら2人の、その後ろから、突如としてこんな声が聞こえた。
「あっはっはっ、ごめんごめん。いや、見ていて案外面白いもんだから、つい楽しんじゃったよ。ご苦労様、バラックス」
そんな声と共に、
先ほどから、散々僕らに対してギルドの職員教育に疑問を抱かせた、案内役の女の子が、突如、大股で前に進み出た。
そのまま、当然のようにバラックスさんの前を横切り、僕らの正面に立つ。
え、何コレ、どういうこと、と僕らが疑問を抱くよりも先に、その彼女の姿が、陽炎のようにゆらりと揺らいだ。
そして次の瞬間、そこには、驚くべき光景が。
先ほどまで、ごく普通のギルド職員にしか見えなかった容姿の彼女は、何もかもが一瞬前と全く違う姿へと変貌を遂げていたのだ。
紺色を基調とし、ドレスと言うほど派手ではなく、法衣に近いデザインの、七分袖の服。そこに、ストールのような柔らかそうな布を羽織っている。
くすんだ茶髪のショートヘアは、こげ茶色の腰まで届く長髪に変わっていた。
さっきまでと同じなのは、僕らと同い年か、それより少し上にしか見えない背格好と、幼さの残るかわいらしい顔つきのみ。
その顔にすら――いや、正確にはその視線にか?――さっきまでとは違って、何か不思議な、威厳のようなものが感じられた。
そしてその彼女は、こちらへ向き直り、にっこりと笑って、
「からかって悪かったね、お2人さん。ってなわけで、ボクがこの冒険者ギルドのギルドマスターのアイリーンだ。よろしくね♪」
そう、飄々と言ってのけた。
☆☆☆
『アイリーン・ジェミーナ』
かつての昔、その名を大陸に轟かせた凄腕の冒険者であり、引退後、数えきれないほどの圧倒的多数からの推薦を受けて、冒険者ギルドのギルドマスターに就任し、その地位にいる。
噂では、今なおその実力は健在とされ、冒険者達の間では、生ける伝説としてその名を知られている存在。
その『生ける伝説』が今……僕の目の前で、ものすごくくつろげる姿勢でソファに腰掛け、にっこりと柔和な笑みを浮かべている。
どう見ても僕らと年が変わらなそうに見える彼女だが、人間のように見えて微妙に違うらしく、御年実に400歳を超えているのだというから驚きである。
『ギルドマスター』の役職自体、もう150年近くも続けてるらしいし、いや、そりゃ確かに伝説だわ。人は見かけによらないな。
さっき、僕らの目を『ギルド職員の制服を着た少女』だとごまかしていたアレは、アイリーンさんの幻覚魔法だ。
母さんに、幻覚を見破る訓練もそれなりに手ほどきされた僕だけど、さっきのアレは見破るどころか、違和感すら感じ取ることが出来なかった。
ほころびの一つもない、途轍もない完成度と技術だと言わざるを得ない。それを実感した僕の本能が、その経歴に対する疑念を根本から消し去っていた。
何より、彼女が身にまとっているこの空気。
飄々としているだけのようで、その実堂々として落ち着いていて、確かな自信に満ちている感じ。言うなればそう、ある種の『達人』が醸し出すような雰囲気があった。
こういう空気を纏っている人を僕は、他に1人しか知らない。
多分、間違いない。この人、母さんと同列だ。
「呼んでおいて何も話さないってのも変だし、とりあえず最初に、ボクの方からお礼でも言わせてもらっとこうかな? 今回の件に関して」
「今回の件、ですか?」
「わからないわけじゃないだろ? 『ナーガ』の件だよ。君らのお陰で、初心者用ダンジョン利用者への被害を未然に防げたからね」
「いや、それはその、まあ、お褒めいただけるのはありがたいんですが、報告させてもらったとおり、運に助けられた部分も大きいですから」
と、口裏合わせの通りに、ここでも無難に返したつもりだったんだけど、
アイリーンさんはその返答に、なぜかニヤリと口のはたを釣り上げた。
「ふふっ、こんな所に来てまで取り繕わなくていいよ。アレを倒したのは100%君の力だってことはわかってるからさ」
「えっ!?」
突然の、予想外の切り返し。
思わず、僕も、さっきから緊張で口が開かなかったエルクも、ドキッとしてわずかに身を震わせたのがわかった。
「ま、あまりいきなり目立つってのも考え物ではあるしね。正しい判断だと思うよ? 実際、見る目の無い連中は、外面にばかり目を向けてキレイに騙されてるようだし」
「えっと、いや、あの……」
「けどさ、報告書見たけど、あれはちょっと無理があるよ? 亡骸の検分には立ち会ったけど、あの蛇の鱗は松明の炎なんかじゃこげないし、致命傷になったあの大傷や、その他いくつかの打撲痕だって、落盤にしては力のかかった面積がピンポイントすぎる。明らかに、鈍器もしくはそれに準ずる何かによって衝撃を加えられた痕跡だった」
……ばれてる。完全にばれてる。
口調からして、それを何か責めようとしてる感じじゃ無さそうだけど、一方ではっきりと『わかってるんだからごまかしてもムダだよ』って言われてるのもわかった。
絶対ハッタリじゃない、その、飄々としていても力強い口調と、全てを見透かされるような、柔和だが力のこもった視線は、新米冒険者なんかが言い逃れできるような相手じゃない、と認識するには十分すぎた。
「まあでも、安心していいよ。ああは言ったけど、検分班の連中、最近忙しいみたいであんまり精査しなかったからね。表向きは、きちんと君達の言い訳で通ってたからさ」
「え、そうなんですか?」
そりゃよかった。てっきり、ウソの報告したことがギルドの上層部にばれてて、問題にされちゃうんじゃないかとか思ってた所だから。
まあ、そうなったらそれこそ、ギルドから正式に呼び出し食らうんだろうけど。
「っていうか……検分より前にボクもう、知ってたんだけどね。君の実力なら、あんな図体がでかいだけの蛇1匹程度、物の数じゃないだろうなってことはね」
「はい? そういうことですか、それ……?」
「別に何も難しいこっちゃないさ。事前に聞いてたんだよ。彼女に」
「……彼女? 聞いた?」
「君の母親……リリンにだよ」
……はい!?
そこで僕は、衝撃的な事実を聞かされた。
今言っていた通り、このギルドマスター・アイリーンさんが昔、冒険者として現役だった頃……母さんと知り合い、というか同じチームの仲間だったこと。
そのチームは名前を『女楼蜘蛛』といい……今なお冒険者達の間で伝説とまで称される冒険者パーティであるらしいこと……etc。
その功績は、上げ連ねればきりが無いもので、どれか一つでも、一国の国賓として最上の待遇を受けそうな武勲を、冗談みたいな数打ち立てているそうだ。
例えば、その時点ですでに、設立から数百年が経過していた『冒険者ギルド』だが、この剣と魔法の世界において、人間がまだ立ち入ったことがなく、その情報が把握されていない、いわゆる『未開』とでも言うべき地域が、随所にあった。
理由はもちろん、単純に危険すぎて探索できないから。
王国の軍隊丸ごとでも動かせば可能だったのかもしれないが、そんな金も、時間も、余裕も無い、というのが正直な所だったという。
『女楼蜘蛛』はその活動期間中に、その『未開』の実に半分以上を踏破してしまったらしい。その情報はギルドなどを介して各方面に提供(売却)され、それだけで国をいくつも買えるほどの金が動いたとか。
さらに、とある地域で魔物が異常発生し、その襲撃で国民1億人以上を抱える大国が1つ、冗談抜きで存亡の危機に立たされたことがあったらしいが、
その国の軍隊を総動員しても、防衛線を維持することすら困難だったその進撃を、颯爽と現れた『女楼蜘蛛』は真正面から受け止めて、あまつさえ押し返してしまった。
その後、軍と連携して戦った彼女達の活躍により、魔物の軍は駆逐され、国は守られた。
そんなことが各所で何度かあったらしく、今では多くの国で、彼女達は英雄としてたたえられているらしい。
武勲はまだまだあるのだが、その『女楼蜘蛛』、構成メンバーについての情報が、現ギルドマスターであるアイリーンさんのことを除き、謎に包まれている。
現時点で公にされていることは……以下のとおり。
構成メンバーは6人。全員が人間で、しかも女性ばかりであったこと。
その1人1人が、一騎当千の戦闘能力と、眩しいほどの正義感を誇っていたこと。
そして現在、アイリーンさんを除く全員が、すでに逝去していること。
伝説のパーティという割に、知られている情報は、たったこれだけなのだ。
それでも根強く語り継がれているあたり、その当事の彼女達の功績が、本当に世界に名を轟かせるそれだった、ということがわかる。
……実際はこれら3つとも、とんでもないデマだったんだけど。
『夢魔』の母さんがいるところからもわかるように、全員が人間なんかじゃない……ってかむしろ人間ってアイリーンさんだけだったらしいし。
吸血鬼とか、獣人とかもいたらしい。名前までは聞かなかったけど。
そしてそのアイリーンさんも、人間ではあるけど『先祖がえり』っていう特殊な種族で、人間の限界をぶっちぎった魔力やら寿命やら持ってるらしいし。
ちなみに今、ギルドマスター勤続150年くらいなんだとか。すごいなおい。
次に、メンバー皆基本的に自分勝手というか気ままな性格で、正義感とかで動いたことなんてほぼ無いらしい。
まあ、コレはある意味納得できる。
美談っていうのは、ある程度作られるものだし、正義感の塊とか、そういうのの方がかえって胡散臭い。……僕の見方がゆがんでるせいかもしれないけど。
けど、例の、魔物の侵攻から国を守った話の真相が、その国で買った宝くじが当選してて、今国を滅ぼされたら配当金が受け取れなくなるから、って理由だったって聞かされたときには、さすがにリアクションに困った。
そして最後、コレ一番大きいかもね。女楼蜘蛛の人達……1人も死んでないらしい。
公にその存在を知られてるのがアイリーンさんだけ、ってわけ。全員存命で、今はそれぞれ好き勝手にやってどこかで暮らしてるそうだ。
「で、その1人が……」
「ああ。君の母親、『夢魔族』のリリン。リリン・キャドリーユ。パーティ結成前からのボクの戦友であり……『女楼蜘蛛』のリーダーだった女だよ」
……マジですか。
いやあ、只者じゃないだろうなとは思ってたけど、そこまですごい人だったとは。
まあ、本人が話してくれなかったんだし、知りようもなかったけど。
「そのリリンが、2週間くらい前かな? 突然尋ねてきてね。『近々私の末の息子が冒険者デビューするから、よろしく』って言ってたんだ。その時、君の特徴なんかも聞いてたからね、『ナーガ』の件で噂になってる冒険者のことを聞いて、すぐにわかった」
「そうなんですか。母さんが、そんなことを……」
「ああ、夜中の3時に人が寝てるところに押しかけて、一方的に言いたいこと全部言って、リビングに用意してあったお茶菓子全部たいらげて、嵐のように去っていったぜ」
「本当にすいませんでした」
息子のために色々やってくれてたのかと湧き上がった尊敬の念が、一瞬で消し飛んだ。
いや、何をしてんだあの母親は。
しかしアイリーンさんは、そんなことは少しも気にした様子はなく、
「いやいや、構わないさ別に。むしろ、何百年立っても全然変わらないな、って安心したくらいだよ」
……200年以上前からああだったのか。
すると、話題が途切れたのを見計らったようなタイミングで、バラックスさんが、お茶菓子の盛り合わせを運んできてくれた。ついでに、お茶のおかわりも。
「さて、空気がほぐれた所で、とりあえずお茶菓子でも食べながら、世間話でもしようじゃないか。せっかくだ、ここ十数年の、リリンの生活ぶりとか聞いてみたいな」
「あ、はい。じゃあ、お言葉に甘えて。あ、もしよかったら、当事の母さんのこととか聞かせていただけますか?」
「ああ、もちろん。恥ずかしいエピソードとかもいっぱい話してあげるよ」
と、アイリーンさんはにっこり笑う。
何だか、その肩書きと、あからさまにわかる存在感のせいで、緊張しちゃってたけど、母さんの親友だけあって(?)、やっぱり基本は話しやすい人みたいだ。
思わぬ所で有意義な時間を過ごせそうで、若干楽しみである。
☆☆☆
その後は、何というか、母さん関連の苦労話に花が咲いた。
母さんが200年前からあの性格で、色々と周りを振り回してたとか、それでアイリーンさんが困ってたとか、たまに一緒になって悪ノリしてたとか。
けどさすがに、『女楼蜘蛛』の解散の理由が母さんの妊娠だと聞いた時は、セルフででも穴を掘って入りたくなった。
まあ、前々から解散の話は挙がってたみたいだから、ちょうどいいきっかけだったらしいけど。
僕の方からは、僕が母さんにどこでどんな風に育てられてたとか、その時の母さんの様子とか、相変わらずメチャクチャだとか。
あとは、ちょっと恥ずかしかったけど、体が出来始めた頃、母さんに襲われて、図らずも大人の階段を上ってしまったこととか。
アイリーンさんは、そんな風に話し、そして聴くたびに、どこか懐かしがっているような雰囲気を交えてくすくすと笑っていた。
僕としても、僕の知らない母さんの一面を聞くことが出来て、大変に有意義な時間を過ごせたと思う。
……知りたくなかった現実も多かったけど。
唯一、『僕の』関係者でしかないエルクは、その話題に関しては蚊帳の外だったけど、エルクはエルクで、伝説といわれたパーティの冒険記の一部を聴くことが出来て、1人の冒険者として楽しそうにも見えたからいいだろう。
そんな会話の中で、僕が生まれ育った、天然の修行場とも言える森のことについて話がシフトし、そこでの鍛錬の日々を話すと、アイリーンさんはけらけらと笑っていた。
「あはははははっ、なるほどね。リリンは君を育てた場所を『樹海』としか言ってなかったから、どこだろうなと思ってたんだけど……よりにもよって『グラドエルの樹海』か。とんでもないところで育ったんだね、君は」
「? 名前あったんですか、あそこ」
「ああ。君が今話してくれたような魔物が出てくる樹海は、ボクの知る限りあそこだけだ。そうかそうか、まったくリリンのやつ、そんな所で」
僕が修行話の中で話した、その森……『グラドエルの樹海』にいた魔物の種類から推察したらしいな、どうやら。
まあ、母さんから、結構危険な森だってことは聞いてたし、実際に肌で感じてたから、普通の場所じゃないんだ、ってとこには驚かないけど。
ふと横を見ると、エルクが、信じられないものを見るような目で、『えー』とか言いたそうな視線を僕に向けていた。やだな、照れるじゃないか。
「ギルドマスター? あの、『グラドエルの樹海』って、たしか……」
「うん、何だい、エルクちゃん?」
「ええと、資料でしか読んだこと無いんですけど……この大陸の果てにある魔の森で、人が住めるような場所じゃないと記憶しているんですが?」
「ああ、そうだね。何せ一度迷うと出られないとされる迷いの森で、危険区域としての危険度は実にAA。生息する魔物の平均ランクからしてAっていう、ただの地獄だ。うかつに近づけば、訓練された軍隊だって簡単に全滅しかねない」
……今更だけど、ホントすごいとこで育ったんだな、僕。
「そして、君を一瞬であの『迷宮』に飛ばしたっていうその魔法陣は、おそらく魔法じゃなくてマジックアイテムの一種だね。『女楼蜘蛛』時代のメンバーの1人に、そういうの作るのが得意なやつがいたから、多分そいつに頼んだな、リリンの奴」
「へー……」
そんな感じで、僕らとアイリーンさんは、最初の緊張も忘れて、すっかり話し込んでしまった。
気がつけば、もう昼前。そろそろ仕事の時間だってことで『おっと』と立ち上がるアイリーンさん。
そのままこの場は終わるかと思いきや……アイリーンさんがふと思いついた、というか思い出したように僕に声をかけてきて、
「あ、ミナト君、もう3つだけいいかな?」
「はい?」
3つ? 微妙に多いな。
「まず1つ目だけど、ミナト君、君、何か目標はある?」
「目標、ですか?」
「そうそう。冒険者たるもの……いや、冒険者に限らないけど、何かこう具体的に目標を持っておいた方が、やる気が出るんじゃないかなと思うんだよね」
なるほど、それは僕もそう思う。
何をするにせよ、達成すべき目標がある方がモチベーションは上がる。それを事前に設定しておくのは、効率云々的に考えて妥当なはずだ。
考えてみれば僕、外の世界に出て冒険することばっかり考えてて、そのへんに全然目向けてなかったな。うん、盲点だった。
「そこでミナト君、これはほんの老婆心なんだけどね……」
すると、アイリーンさんは、おもむろに法衣の中に手を入れて、内ポケットからだろうか、1枚の紙を取り出した。
「もしかしたら決まってないんじゃないかと思ってたからね。だったら、男の子らしく『強くなる』ってのが当面の目標ならどうかな、って、提案させてもらおうかな」
「何ですか、コレ?」
「うん、ちょっと『リスト』作ってみたんだ」
「リスト?」
「そう。そこに名前が書いてある魔物を倒せるくらい強くなれれば、リリンも君のことを、正真正銘、文句なしの一人前としてみてくれるだろう、って感じのね」
まあボクの偏見だけど、と付け加えるアイリーンさん。
なるほど、これはありがたい。
冒険者としては、他にも、伝説の秘宝を見つけるとか、未開の地を探検するとか、そういう目標もありかもしれないけど、こういう職について生きていくにあたって普遍的に必要になる、絶対必要な『強さ』に焦点を当てるのは、妥当だと思う。
しかも、アイリーンさんの目立てとあれば、それも確かなもんだろうし、自然とやる気も出るってもんだ。
ありがとうございます、とお礼を言ってそれを受け取る。さてさて、一体どんな魔物がそこに記されているのやら……(ぺらっ)
……
…………
………………えーと、何でしょうコレは。
多分、期待してた通りの反応、というか、表情を僕は浮かべてるんだろう。あと、横から覗き込んでるエルクも。
それは、アイリーンさんがこの上ないくらいにいい笑顔を浮かべてることからも想像がつく。
そして、おそらくコレは悪ふざけじゃなく、ホントにこのくらいがいいだろう、ってことで提示してくれてるんだろう。このリストを。
……でもコレ……
・エクシードホッパー亜種
・トロピカルタイラント
・インフェルノピーコック
・ギガワーム
・クラーケン
・デストロイヤー
・ゴールデンスフィンクス
・ミクトランデーモン
・ソレイユタイガー希少種
・ヤマタノオロチ
・サラマンダーアンデッド
・ア・バオア・クー
以上、全12種。
……ほぼ、見たことも聞いたこともない魔物のオンパレード。
なのに、明らかに『ナーガ』なんぞより数段ヤバそうなのが雰囲気でわかるラインナップなんですけど……。
一部、名前に『亜種』だの『希少種』だの、アレな単語ついてるし……
ていうか、『ヤマタノオロチ』とか『クラーケン』とか、前世でも聞き覚えある超有名な怪物なんだけど……あれ居んの? この世界に?
ま、まあ、名前の感じと強さは必ずしも一致するわけじゃないんだ。名前がすごいからって、実際にその魔物もすごいとは限らない……
けど、この場合きっと一致するんだろうなあ……。
……まあ『いつか』勝てるようになればいい、っていう目標だし、まあ、いいか。とりあえず、受け取っておくだけ……。
と、リストとにらめっこしてる僕の顔を、さっきから見てたアイリーンさんが、
「……2つ目だけどね……ミナト君、『樹海』から出たことないって言ってたけど、それ本当?」
「? 本当ですけど……何でですか?」
「いや、さっきから考えてたんだけどさ、ボク前に、君にどこかで会ったことあるような気がするんだよね……。全然思い出せないんだけど」
「……?」
それは……ないんじゃなかろうか?
だって僕、ホントにあの樹海から出たことない。母さんの修行での盗賊退治を除けば。
その辺でちらっと会った(そしてぶっ飛ばした)盗賊連中や、人攫いの被害者の女の人達だけ除けば、僕は旅立ちのあの日まで母さんしか知り合いはいなかったし、その後初めて出会ったのは、このエルクだし。
まあ、その時にちらっとだとしても、僕はまずアイリーンさんに見覚えは無い。
通りすがりのアイリーンさんが一方的に見ただけ、って可能性もなさそうだ。
アイリーンさんはここ数年、その地方には全然行ってないらしいし、そもそもそんな状況になったら、一緒にいる母さんにまず気付くだろう。200年来の親友なんだし。
なので、結局その謎は解けなかった。……勘違いか、他人の空似じゃないかな?
それで、残る1つは?
「……ああ、最後の1つだけどね、リリンから君に伝言を預かってるんだ」
少しまだ不思議そうに思い出そうとしてたアイリーンさんだけど、諦めたようだった。
「伝言?」
「ああ。これから冒険者としての道のりを歩んでいこうとしてる君への、激励だね」
ええと……と、思い出すような仕草を見せて、
「『もしいつか、私に並ぶくらい強くなれたら、母さんがあなたの子供産んであげてもいいわよ?』……だってさ」
「失礼しました」
脱出。
背中ごしに聞こえてくるけらけらとした笑い声を聞きながら、僕はエルクの手を引いて、全速力でその部屋を後にした。
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