陛下の生前退位に対する「お気持ち」表明まで1週間を切りました。

多くの職場には定年退職という制度があります。そして企業の創業者がさらなる事業拡大を願って若い人に代表取締役社長を譲り、自らは名誉会長に退くことはよくあることです。実際に江戸時代までは天皇の生前退位は何度も行われていました。確かに現行の皇室典範には生前退位の規定がありませんが、なければ作ればいいのです。

では今日、生前退位がなぜこんなにも問題になっているのでしょうか。正直申し上げて問題になること自体がおかしい、それ自体問題だと私は感じています。この問題を解くにはまず歴史を振り返る必要があります。

江戸時代末期、ペリー来航に代表される欧米列強のアジアにおける軍事的・経済的進出が著しくなりました。日本はこれに対抗し国内を統一して近代化を急がねばなりませんでした。その方法として明治政府は幕府を廃止し天皇親政(天皇が政治を行うこと)を軸としました。多くの国民に「近代化とはこういうことだよ」と示すには天皇という絶対的な君主を一人たてるやり方が手っ取り早かったのだと思います。その結果出来上がったのが大日本帝国憲法と皇室典範です。大日本帝国憲法下では天皇は神聖な存在であり、天皇に対して誰も文句を言ってはいけなかったのです。さらに天皇は自ら法律を作ることができ、軍隊も天皇の所有物でした。

しかしそんな世の中は数十年しかもたず、1945年の敗戦で幕を閉じました。大日本帝国憲法と皇室典範はGHQにより廃止になり、日本国憲法と新しい皇室典範が制定されました。GHQは天皇の絶対的権力を排除するため、天皇を神聖な存在ではなく日本国の「象徴」とし、かなりの私有財産を没収し財閥も解体。天皇は国事行為のみを行う人になりました。そして同時に天皇は「日本国の」象徴と法律で定められたので、天皇にかかる費用は国費、つまり国民の税金で賄われるべしとなりました。その後一度も改正されず現在に至っています。

学校の教科書では日本国憲法は「平和憲法」とされています。確かに帝国主義から脱するために必要でしたが、見方を変えれば天皇を再び「特別扱い」にした法律なのです。これはもちろん皇室典範にもいえます。
 
大日本帝国憲法では天皇を神聖な存在として特別扱いしていましたが、日本国憲法では「象徴」として特別扱いしています。経済活動をせずとも生活に困らず、全額税金で賄われることが合法化されているので納税者はそれについて文句が言えない。この不景気にも関わらず多くの法学者、有識者は何も手入れされない日本国憲法、皇室典範を戦前・戦中の旧法と同じく「触れてはいけないもの」に仕立て上げ、これまで改正すべきタイミングは何度もあったのにこの不合理な状態を放置してきました。つまり、生前退位の何が問題かといえば「これまで放置してきたことが最大の問題である」ということです。

この状況をみて、このままではいけないと声をあげたのは他でもない天皇陛下ご自身です。

今回の「お気持ち」表明には以上のような背景があります。
心して耳を傾けてください。
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先日、「生前退位」を巡り、陛下が8月8日にも自身のお気持ちを表明される見通しとなったという報道がありました。テレビなどを通じて国民に直接語りかける方法になるかと思います。陛下が表明される具体的内容については、陛下ご本人、宮内庁、政府、そして私がおります皇室典範改正準備室の間ですでに調整できております。このまま特段の事情がない限り予定通り8月8日に行います。

この日は日本が大きく動く日になります。「一億総活躍社会」実現のために避けては通れない日なのです。

国民の皆様方はぜひ陛下のお気持ちをしっかり受け止めていただきたく思います。
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先週天皇陛下が生前退位のご意向を示されたという報道がありました。陛下は「憲法に定められた象徴としての務めを十分に果たせる者が天皇の位にあるべきだ」との考えをお持ちです。

 

陛下がこのような考えをこの時期に発表されたのには理由があります。それは昨今の不景気にあります。安倍政権が繰り返し主張している通り、日本の経済政策をとにかく急がねばならない状況にあるのです。「一億総活躍社会」の言葉通り、陛下ご自身も一億の構成員として、また日本の象徴というお立場からして自らが率先して何かしなければとお感じになりました。

 

「一億総活躍社会」というのは、日本国民全員、イメージとして乳児から老人、皇室に至るまで活躍していただこうということです。日本政府としても陛下自らがこのような考えをお持ちということは大変ありがたいことです。また昨今の経済の閉塞感を脱するにはイノベーションか必要です。イノベーションとは「新しい組み合わせ」のことです。これまで我々一般国民が頑張ってきたところへさらに皇室も組み合わせて経済の底上げを図ります。

 

例えばイギリス王室は自らビジネスをしています。エリザベス女王、ダイアナ元妃のはがきなど、多種多彩なロイヤルグッズは世界中からやってくる観光客に大変人気です。

 

一方日本の皇室はこのようなビジネスをすることができません。現行の日本国憲法や皇室典範、皇室経済法に制限されているからです。陛下は以前から時代にあった皇室の在り方を模索されておりました。生前退位がただご年齢と健康上の理由のみならば他の皇室が公務を代行すればよいのですが、陛下は今の時代における日本経済の停滞に強い危機感を感じておられます。若い世代にバトンタッチすることで今の時代に即した新しい皇室への生まれ変わりを期待しておられるのです。

 

以上のような事情から、私は陛下がご希望通り生前退位なさることに賛同しそのために必要な法改正を準備する所存です。当ブログでは法改正について国民の理解を得られるよう細かな説明をしていく予定です。

 

「一億総活躍社会」の実現に向けて、まずは陛下の生前退位について皆様方にご理解いただけるよう努力してまいります。

 

内閣官房皇室典範改正準備室 室長

田中宗子

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