テレビの見られ方が急速に変わっている。視聴時間が短くなり、若い世代を中心にテレビを持たない世帯も増えた。

 一方、インターネットでの動画配信が活況だ。膨大な番組をスマートフォンやパソコン、タブレットなどで自由に見ることができ、利用者が広がる。

 視聴者にとって「テレビ=放送」と「ネット=通信」との区別は消えつつある。そうした現状を踏まえ、これからの放送について検討してきた総務省の有識者会議が第1次とりまとめ案を発表した。今月末までパブリックコメントを募っている。

 検討の柱の一つは、NHKの改革だ。これを機に、いまの時代にふさわしい公共放送についての議論を深めてゆきたい。

 放送法は、公共の福祉のために、豊かで良い放送番組を全国に届けることなどを、NHKの目的としている。この役割はネットが発達したいまも変わらない。必要な情報や文化を、地域や視聴者の経済力などに左右されないで伝える、自律した放送局は必要だからだ。

 並行して、ネットを活用し、よりよいサービスの提供を図るのも自然な方向だろう。

 だが、NHKの財源である受信料はテレビ受像器を持つ人だけが負担している。それを使って、どこまでネット事業を拡大してよいのか。年間6700億円を超える受信料収入の規模と使い方は適正なのか。時代の変化の中で、公共放送の使命と、その費用を誰がどう負担するか再検討が必要だ。

 議論の基礎として、NHKには、現在の業務とその意義、成果、それに必要な経費などを、視聴者に分かりやすく説明してもらいたい。公開されている予算や事業計画からは具体的なイメージがつかみにくいからだ。

 NHKはこれまで、番組内容から放送技術の開発まで幅広く放送界を先導する役割を果たしてきた。だが、時代の変化の中で、公共放送の必須業務は何か、削ってよいこと、新たに付け加えることを改めて精査しなければならない。それを踏まえて、公共放送を支える受信料制度のあり方を視聴者とともに考えるべきだ。

 とりまとめ案は、会長に権限が集中するNHKの統治システムを変えることも課題に挙げた。会長の補佐役である理事の権限と責任を広げ、外部からの登用も視野に入れることにも言及する。経営の透明化につながりそうな提案だ。前向きに検討してもらいたい。

 多様な議論を積み重ね、新しい公共放送の姿を描きたい。