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島に暮らすオオカミの集団、主食はシーフードだった

ナショナル ジオグラフィック日本版 8月8日(月)7時30分配信

カナダ・バンクーバー島の海岸で暮らすオオカミの意外な生態

 カナダ西部に位置するバンクーバー島の海辺を、幽霊のように歩き回る動物がいる。彼らは海沿いの苔むした森でひっそりと暮らし、人々にその姿を見せることはめったにない。2011年、英国の映画製作者バーティー・グレゴリー氏は幸運にもその動物を目撃した。海辺のオオカミたちだ。「海岸に暮らすオオカミは特別な存在です。不思議な魅力とオーラを漂わせています」

【写真】島に暮らすオオカミは泳ぎも得意

 グレゴリー氏は帰国すると、ドキュメンタリーの製作を開始した。ナショナル ジオグラフィック初のYouTubeシリーズ「ワイルドライフwithバーティー・グレゴリー」として、8月3日から公開されている。

「海辺のオオカミはユニークな捕食者と言えます。この素晴らしい景色の中で狩りをしているのです」。米国メリーランド州ほどの面積を持つバンクーバー島とその西に浮かぶ島々は、太平洋岸北西部の自然を今も残す辺境の地だ。

 レインコースト自然保護基金の科学ディレクター、クリス・ダリモント氏は20年近く前から、海辺に生息するオオカミの生態を研究している。めったに目撃されることのない海辺のオオカミについて、興味深い事実をいくつか教えてくれた。

2タイプいる海辺のオオカミ

 海辺のオオカミには二つの個体群がいる。本土の海岸に生息するものと島の海岸にすむものだ。グレゴリー氏が注目したのは後者だ。「本土の海岸に住むオオカミはあらゆる点で“海岸性”と言えます。ただし、島のオオカミに比べると、シーフードをあまり食べません」とダリモント氏は話す。

海を頼りに生きる

 島のオオカミは内陸のオオカミと異なり、文字通り、海だけを頼りに生きている。遺伝子がそれを証明している。2014年に生態学専門ジャーナル「BMCエコロジー」に発表された研究論文によれば、島の海辺に生息するオオカミたちは内陸のオオカミと全く異なるDNAをもつという。

 オオカミの場合、こうした遺伝的な差異は決して珍しくない。ただし、2014年の研究に参加したカナダ、カルガリー大学の研究助成金担当者エリン・ネイビッド氏は、バンクーバー島の西岸という狭い範囲で独自のDNAが見つかることは珍しいと述べている。

「オオカミは広い範囲を移動する動物です。行動圏は数百キロに及び、小さな水域くらいは難なく越えてしまいます」

「遺伝的な分化について考える場合、長い距離によって隔てられた個体群が遺伝的な差異をもつようになるという状況を思い浮かべるのが一般的でしょう」

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最終更新:8月8日(月)7時30分

ナショナル ジオグラフィック日本版

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