オフショア地域内での投資は、税金が著しく低い、または非課税というメリットがありますが、
日本人としてゆくゆくは日本に住み、日本に納税義務がある場合、税金面はどのようになるのか?という質問をよく受けます。
私は税理士ではないため、税金についてのコンサルティングは基本的にはできません。ファイナンシャルプランナーとしての一般的な知識から、私の知る範囲でこちらに書きます。
たとえば、オフショア地域の、イギリスのマン島にある銀行に、10,000ドル預金したとします。1年後に、預金の利子が、300ドル入金されたとします。日本国内の場合、預貯金の利子は利子所得として、20%(所得税15%、住民税5%)の税率による源泉分離課税となります。したがって、通帳を見ていただくとわかるように、20%の税金が差し引かれたあとの利子がみなさまの口座に入金されているはずです。
しかし、イギリスのマン島では利子に税金はかかりませんので、利子の300ドルがそっくりそのまま入金されます。でもこの場合は、海外で得た所得に該当するため、日本においては、利子を得た年の翌年の確定申告時に申告する義務があります。
また、みなさまがイギリスのマン島の、オフショア・ファンドに10,000ドル投資しているとします。運用が順調に進み、3年後に運用報告レポートを見ると、15,000ドルに増えていたとします。この場合はあくまで途中の結果なので、利益を確定しない限り、つまりファンドを売却しない限りは、納税義務は生じません。
それでは、ファンドを売却し、15,000ドルを、香港のHSBC銀行の自分の口座に送金したとします。香港もオフショア地域の1つです。この場合、売却して利益を確定したので(5,000ドル儲かりました)、お金がオフショア地域内の銀行にあろうと、どこの国の銀行にあろうと、儲かった部分に対して、日本での納税義務が生じます。
オフショア投資の場合、日本で税務署に申告する場合の課税区分は、
A. 外国株の売却益と同じく、20%の申告分離課税
B. 社債投信の売却益と同じく非課税
C. 雑所得・他の所得と合算する総合課税
のどれかに該当することになります。
ほとんどのオフショアファンドは、このA~Cのどれかに該当すると思われます。実際には所轄の税務所、さらには担当官次第でさまざまに判断が異なってくるようです。AB Cの中で一番税率が厳しそうなのが、C.の雑所得となった場合ですが、この場合は、超過累進税率方式で、そのときのみなさまの所得の金額によって、6段階に税率が別れています。下記の表を参照してください。
総合所得として、すべての所得と合算され、様々な控除(配偶者控除など)が適応される場合があります。
超過累進税率方式 | ||
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
~195万 | 5% |
0 |
195万円超 330万円以下 | 10% |
9万7,500円 |
330万円超 695万円以下 | 20% |
42万7,500円 |
695万円超 900万円以下 | 23% |
63万6,000円 |
900万円超 1800万円以下 | 33% |
153万6,000円 |
1,800万円超 | 40% |
279万6,000円 |
オフショア投資の非課税、または低い税率のメリットは、納税を将来まで繰り延べできるという点です。将来の年金として、若いうちからコツコツとオフショアで資産を増やし、退職後に満期を迎え、または利益を確定させ自分の口座に送金したとすれば、Cの雑所得として計算する場合、退職後なので、現役のときと比べると所得は低くなりますので、適応される税率も低く済みます。
基本的に日本に居住する人には納税義務があります。
日本国内の個人の納税義務者を以下の表にまとめてみました。
納税義務者の区分 |
課税対象となる所得 | |
居住者 国内に住所がある個人、または国内に引き続き1年以上居所がある個人 | 永住者 | 国内外すべての所得 |
非永住者以外の居住者 | ||
非永住者 | 国内源泉所得、国内で支払われた国外源泉所得または国内に送金された国外源泉所得 | |
日本国籍がなく、過去10年のうち住所、または居所を有している期間の合計が5年以下の個人 | ||
非居住者 | 居住者以外 国内に住所がなく、1年以上居所もない個人 | 国内源泉所得のみ課税対象 |
今後も引き続き外国に住む予定の方は、その国の税法が適応されますので、注意が必要です。
オフショア投資で利益を得ても、そのお金をオフショア内の銀行に置いておけば、日本に税金を納める義務がないとか、日本国内の銀行にお金を送金した場合のみ納税義務が生じると思っている方が非常に多くいらっしゃいますが、日本の税法では、海外で得た所得は、それを海外置いておこうと日本に持ち込もうと、申告し納税する義務があります。
日本に居住する限りは、日本への納税義務が発生するため、潔く納税し、まっとうな道を進むことをお勧めします。