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iPhone 7と同時公開の「完全ワイヤレス」イヤホン アップルが独自開発

Forbes JAPAN 8月8日(月)12時30分配信

アップルが数年前からワイヤレスイヤホン向けのBluetooth無線チップを開発していたことが、関係者の話で明らかになった。



イヤホンジャックのない初めてのiPhone(名称はiPhone 7になるとみられる)と共に9月に発売される可能性が高いが、詳細は明らかにされていない。この無線チップは省電力であり、Bluetoothヘッドフォンのバッテリー寿命の短さを解決できるかもしれない。

このチップに使用されている技術は、アップルが2013年に買収した無線チップメーカーPassif Semiconductorのものだ。関係者によると、アップルは当初2015年に発表する予定だったが、パフォーマンスの問題で延期になった。「アップルでは100%の製品でなければ売らない」のだという。アップルのワイヤレスイヤホンに自社のBluetoothチップが使われるか、ブロードコムのようなサードパーティーのチップが使われるかは分からない。

この件についてアップルに問い合わせたが、返答はなかった。

アップルはこれまで無線技術に関してはサードパーティーのチップを使用してきた。セルラーモデムはクアルコム、BluetoothとWiFiのチップはブロードコムから提供を受けている。しかし、アップルは自社製のコンポーネントを増やし、外部ベンダーへの依存を減らそうとしている。

2010年に発売された第1世代のiPadに搭載されたA4プロセッサはアップルが初めて開発したプロセッサであり、同社はそれ以降チップ産業をけん引してきた。2013年にiPhone 5sに搭載されたA7プロセッサは、スマホとしては初めての64ビットプロセッサだった。しかし、アップルはまだ無線チップの開発には成功していない。

必要な技術を買収によって手に入れるのもアップルの方針の一部だ。アップル製品のニュースサイト9to5Macのマーク・ガーマン(Mark Gurman)が2016年1月に報道したところによると、アップルは2014年に買収したヘッドフォンメーカーBeats Electronicsのリソースを利用してBluetoothヘッドフォンの試作品を開発していたという。

Beatsは独自のBluetoothヘッドフォンを販売しているが、アップルのものは右と左のイヤホンをつなぐコードもない完全なるワイヤレスだ。イヤホンは予備の充電式バッテリーと共に収納ケースに梱包されるだろうと9to5Macは報じている。
--{米ヘッドフォン売上の5割以上がBluetooth}--
米ヘッドフォン売上の5割以上がBluetooth

またウォールストリートジャーナルは、iPhone 7とされる新機種にはヘッドフォンジャックがないとみられ、そのおかげで厚みが1ミリ薄くなり、防水性も高まると報じている。ヘッドフォンはBluetoothでつなぐかLightningコネクタに接続することになりそうだ。

2013年に行われたアップルによるPassifの買収は目立たないものだった。買収額は公表されていないが、Passifは2008年の投資ラウンドでコースラ・ベンチャーズ(Khosla Ventures)から調達した額が160万ドル(約1億6,000万円)と少額だったため、買収額もさほど高くなかったとみられる。Passifはあまり知られていないスタートアップだったが、「省電力で環境に優しいスイッチベースのワイヤレストランシーバー」を製造していると自ら説明していた。

LinkedInの情報によると、Passifの共同創業者であるベン・クック(Ben Cook)とアクセル・バーニー(Axel Berny)はともにカリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得しており、現在はアップルの社員となっている。オーディオから無線で情報を受け取ることができるスピーカーシステムに関する技術など興味深い特許を、アップル社員となった今でも自らの名前で取得している。

アップルが参入しなくてもBluetoothヘッドフォンの人気は上昇中だ。調査会社NPDによると、アメリカにおける2016年上半期のヘッドフォンの売上のうち54%を占めていた。それでもパフォーマンスとバッテリーの寿命に問題があり、アップルはこれを解決しようとしている。

NPDのアナリストであるベン・アーノルド(Ben Arnold)は「ヘッドフォン市場においてBluetoothヘッドフォンは大きな割合を占めるようになっています。今後も初心者向けの製品は増えると考えますが、注目はやはり秋に発表されるiPhone 7です。ヘッドフォンジャックがなければBluetoothヘッドフォンへのシフトが加速すると考えます」と語る。

アップルのスマホにおける最大のライバルであるサムスンは、最近BluetoothイヤホンのGear IconXを発表した。スマホで音楽を聴いている場合の電池の持ちはわずか90分だが、充電ケースがついてくるという。しかも音楽を聴けるだけでなく、光学センサーで心拍数を測り、加速度計で歩数もカウントしてくれる。

Aaron Tilley

最終更新:8月8日(月)12時30分

Forbes JAPAN

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