西村博之氏、2ch.netドメインの奪還に失敗

WIPO本部(出典:Wikipedia)

今年の5月の記事「2chの商標権に基づいて2ch.netドメインの使用を差止められるのか」において、2ちゃんねる創設者の西村博之氏が、取得した"2ch"の文字商標に基づいて2ch.netドメインの使用を差止められるのかという点を検討しました。

その後の5月25日、実際に、西村氏はWIPO仲裁調停センターに2ch.netの登録取消を請求したのですが、その結果が先日出ました。結論は、請求棄却です(WIPO仲裁調停センター決定文(英文))。

大きく言うと、WIPO仲裁調停センターの判断基準は、1) 登録商標がドメイン名と同一・類似であること、2) 被告がドメイン名の正当な権利を有していないこと、3) 被告はドメイン名を不正の目的で登録・使用していること、の3点が立証できればドメインの取消が認められるということになります。

上記の1)については、商標"2ch"とドメイン2ch.netは同一とされました(トップレベルドメインは比較に含めないのが通常であるため)

2)については、西村氏側の「2ch.netの正当な所有者は西村氏であり、被告(ワトキンス氏)による使用は不正である」という主張、さらには、「2ch.netのドメインをワトキンス氏側に移転したのは、ワトキンス氏を信用して業務を肩代わりしてもらっていただけ」という主張には証拠がないとされました。予想通りですが、別に契約書があるわけではなく、口約束だったんですね。ワトキンス氏が「change this to what you want, after this ordeal is over」(「この混乱が終わった後は好きにしていいよ」の意?)と言ったメールが証拠として提出されたようですが、これでは証拠にならないとWIPO審査員に一蹴されています。ということで、3)について検討するまでもなく、西村氏側の請求は棄却です。

最後に、WIPO審査員は、ごていねいにも「WIPOの仲裁ポリシーはサイバースクワッティングの解決を意図したものなので、このようなビジネス上の争いは裁判でやった方がよいのではないか」とコメントしています。

西村氏が、この後、不正競争防止法等を元に裁判に持ち込むことは可能です。しかし、もし2ちゃんねるの事業移転に関して証拠がまったく残っていないのだとすると、西村氏側は依然として厳しいのではないかと思います。