音声認識技術を手がける中国の新興企業が8月初旬、米国で自社製の腕時計型情報端末(スマートウオッチ)を近く発売し、アップルに挑むと発表した。低価格なだけでなく、アップルに引けを取らないすごいデザインの製品を提供すると出資者らは話す。
ここ数十年、米国は世界一の技術力を自負してきた。それが今、ドローン(小型無人機)から電気自動車(EV)、データマイニング(膨大なデータから有用な情報を取り出す技術)、スマートフォンに至る様々な分野で、中国が急速に追い上げているようだ。
米テスラモーターズのEVの需要と、同社の創業者で最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏の企業統治の仕方に関し疑問が持ち上がるなか、同社が米太陽光発電ベンチャー、ソーラーシティの買収で合意したというニュースを受け、上海では一部のファンドマネジャーがほくそ笑んでいる。中国のEVメーカー、比亜迪(BYD)が有利になるという見方からだ。
BYDの株価は割高で、株価収益率(PER)は40倍に達している。同社の利益は政府の補助金と、EVに対するナンバープレートの無料・優先配布などの特例措置でかさ上げされている面もある。それでも、ファンドマネジャーらはBYDに信頼を寄せる。
■米国勢よりも大量のデータにアクセス
「EV革命はまず中国で起こる」と上海の投資会社、元昊資本有限公司の創業者でBYD株を大量に保有している張幃氏は言う。「第1の理由は供給が需要を満たせていないことだ」。張氏は7月半ばに出した投資家向けのリポートで、強気の理由を説明した。「2番目の理由として先端技術がある。彼らは自前の電池を持っている(が、テスラは日本のパナソニックに頼っている)。彼らの電池の方が安くて性能が良い。3つ目の理由は経営の方向性が一貫していることだ」。さらに張氏は、BYDが市場価格の3割増しで買い取る従業員持ち株制度を導入したことも挙げている。
中国勢が食い込んでいる分野はEVだけにとどまらない。米カリフォルニア州パロアルトに本拠を置き、データマイニングを手がける非上場企業のパランティアテクノロジーズは昨冬、アジアでの資金調達に乗り出して歓迎された。同社の企業価値はやすやすと200億ドルを突破したのだ。
しかし、その一方、中国のベンチャーキャピタルはパランティアと似たビッグデータ解析の中国企業に投資している。