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 いきさつは忘れたが、あなたは何のために記事を書いているの? と問われたことがある。静岡県の沼津支局で働いていた20代後半。相手はひとつ先輩の女性記者だった。

 何を今さらと思い、「世の中を変えるためじゃないですか」と答えると、いきなり「それは違う」とはねつけられた。「それはあなたの思い上がりなの。あなたは傲慢(ごうまん)なの」

 彼女は遠くのフリースクールまで通い、そこに集う若者たちに寄り添って連載をするような記者だった。かたや私はといえば、身近な政治や行政のありようなど、どちらかといえば硬めのテーマに関心があった。

 そのとき、2人とも酔っていた。だが、彼女の言葉は、酒の勢いばかりではないように聞こえ、思わずあなたはどうなんですかと問い返した。

 「書いたら、祈るの」。胸の前で両手を組み合わせ、彼女は続けた。「世の中を『変える』じゃないの。『変わってくれたらいいな』と、祈るの」

 「どっちも同じじゃないですか…

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