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昨今、情報科学において重要な技術のうちの1つとして、いわゆる「人工知能(AI)」が多くの場で議論されている。過去3回分の連載では、そもそも、人工知能というものが一体何で、ビジネスや社会とどう関わっていくのかについて、コンピュータの歴史をひもとくことによってお伝えしてきた。
特に、人工知能の持つ「学習」という機能について掘り下げて説明した前回は人間の脳の動作原理に基づく「ニューラルネットワーク」というものが一体どんなものかということについて、理解が深まったという多くの感想をいただいた。
本連載を執筆する中、米フロリダ州で、自動車メーカーであるTesla Motorsが販売する自動運転機能を搭載している自動車「モデルS」による死亡事故が発生した。この事故に関する詳細は他稿に譲りたいが、一方じんこの応用技術としての自動運転に関して、本連載も、無視するわけにはいかない。
人工知能の応用例として「自動運転」を始めとするハードウェアの制御へのIT利用は古くから検討されており、近年のドローンやIoT技術の普及にもつながっている。そうした自動運転をはじめとする、ロボットの制御技術の歴史をさかのぼることで、IT技術の応用先が広がっていくことが考えられる。
この記事では、自動運転に関する理解を深めることを目指し、ロボット研究の起源と歴史をひもとくことで、ロボットの自動運転や人工知能の未来について多面的に検討していく。
「ロボット」という言葉は1920年にチェコの作家Karel Čapekの戯曲「Rossum’s Universal Robots」の中で使われたのが初めてだと言われている。
しかしながら、ロボットの概念そのものは、実は非常に古くからあったという。紀元前8世紀に書かれたホメロスの叙事詩「イーリアス」に、人間そっくりな人造人間がすでに登場しており、それ以降にも、いろいろな文芸作品にロボット思われるものが出てきている。日本の文芸作品で、最初にロボットの記述が見られるのは、「今昔物語」で、桓武天皇の息子、高陽親王が作った機械人間がそれである。
それでは、実際に、人間のように自動で動く「ロボット的な」人工物は、一体、いつ最初に創られたのだろうか。その起源は、紀元前10世紀頃にまでさかのぼる。この時代に、アレクサンドリアのギリシャ人工学者ヘロン( Hero of Alexandria)が、人形を空気で動かしたという記録がある。
それ以降、記録上は空白の期間が続くが、13世紀にRoger Baconが、機械仕掛けの「話をする顔」を作ったという記録がある。また、16世紀の初めに、Leonardo da Vinciが、解剖学的見地から、ヒューマノイドを設計している。
1656年にChristiaan Huygensが発明した振り子時計の技術が精密機械に発展し、次第にロボットが身近に作られるようになっていった。最も有名なのは、フランスのJacques de Vaucansonが1738年に製作した「フルート吹き人形」「太鼓たたき人形」「機械仕掛けのアヒル」である。日本でもほぼ同じ頃、「からくり人形」が作られている。
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