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変化の違い兆候確認 宇宙形成解明へ道

ニュートリノの粒子と反粒子の違いを調べる実験の概念図

 高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)など11カ国61機関の国際研究チームは6日、物体をすり抜けて飛び交う素粒子「ニュートリノ」の「粒子」と「反粒子」の変化に違いがある「CP対称性の破れ」の兆候をとらえたと、米シカゴで開催中の国際学会で発表した。宇宙誕生直後には同数があったとされる両粒子のうち、現在は粒子が残って星や銀河を形成し、反粒子がほとんど存在しないのはこの変化の違いに起因する可能性が高く、実験結果は宇宙の物質存在の謎を解く重要な鍵となる。さらに実験を重ね、確定すればノーベル賞級の成果だ。

     ニュートリノの粒子と反粒子にはそれぞれ「電子型」「ミュー型」「タウ型」の3種類の変化型があり、空間を飛ぶ間に別の型へと変化する「ニュートリノ振動」が起きる。

     チームは振動現象に粒子と反粒子で違いがあるかを調べた。同県東海村の加速器施設「J−PARC」で両粒子を作り、295キロ離れた岐阜県飛騨市にある東大の観測施設「スーパーカミオカンデ」へ発射。地下1キロにある大型水槽で検出し、ミュー型から電子型への変化を測定した。2010年から粒子、14年から反粒子で同じ実験を繰り返した結果、粒子の方が頻繁に変化が起き、変化に違いがあることが分かった。

     変化の違いは、ニュートリノのCP対称性が保たれず破れていることの証明になる。138億年前、「ビッグバン」と呼ばれる宇宙誕生の巨大なエネルギーで両粒子は同数が生まれたとされるが、対称性が保たれていれば両粒子は出合うと光になって消滅するため、宇宙は存続しえない。しかし、対称性が破れていることでバランスが崩れ、消えずに残った粒子が宇宙を形成したという。

     同機構の小林隆教授は「宇宙の根源的な謎を解き明かす第一歩。10年以内に『発見』と言えるように実験を進めたい」と話している。【阿部周一】

     【ことば】CP対称性の破れ

     物質を構成するどの粒子にも、質量は同じで電荷などが反対の「反粒子」(反物質のもと)がある。鏡に映すように、両粒子を入れ替えても同じ物理現象が起きることをCP対称性が「保たれている」、逆に両粒子が異なる性質を示すことを「破れている」と言う。Cは電荷、Pは「パリティー」という物理量の頭文字。別の素粒子「クォーク」では破れが証明され、理論的に予言した小林誠、益川敏英両氏のノーベル物理学賞(2008年)につながった。しかし、宇宙にある物質の総量を説明するには足りず、ニュートリノにも破れがあるはずだと考えられてきた。

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