ぼくは、以前「32才のおっさんが経験から説く、20代を過ごす上で大切にしたい8つのこと」という記事の中で、『貯金をすることを目標にしない』ことの重要性を書きました。
こちらの記事では、その理由を貯金は保守的なマインドにしてしまい、現状満足な錯覚に陥りやすく、自分の可能性を狭めるから。というマインドセット的な視点の理由として書きました。
今回は、おそらく意識している人が少ないであろう『お金の概念』と『お金の購買力』をキーワードとした経済の基礎知識をできる限り分かりやすく解説しながら、それでも保守的に貯金をするべきか?というお金の話をしていきたいと思います。
経済とか金融の話は苦手だよ〜っていう人でも、「絶対に理解できる!」くらい噛み砕いて説明するので、知っておきたい基礎知識ですし、ぜひ苦手意識をもっている方にこそ読んでみてほしい記事です。
- 「GDP」について分かりやすく説明してみる
- ただし、GDPが上がる=経済成長ではない
- お金を蓄える・守るのではなくて、増やすことを考える重要性
- 同じ100円でも価値が変わるという事実
- まずは経済動向からお金の価値、位置づけを見極めること
「GDP」について分かりやすく説明してみる
まず経済やお金の話をする上で、外せないのが「GDP」について。
この「GDP」、単語は聞いたことあるけど、意味はよく知らないっていう人が多いんじゃないでしょうか。
国内総生産(こくないそうせいさん、英:Gross Domestic Product、GDP)は、一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額のことである。
分かりにくいですよね。なんでこんな分かりにくい説明なのかと思うんですが、実はGDPはとても単純です。
例えば、漁師のAさんと魚屋のBさん、惣菜屋のCさん、床屋のDさん。合計4人しか住んでしない国があるとします。
- 漁師のAさん→釣った魚を1匹あたり50円で、年に100匹を魚屋のBさんに販売して生活をしています。コストは0円。要は5,000円がAさんの利益になります。
- 魚屋のBさん→Aさんから1匹50円で仕入れた魚を、惣菜屋のCさんへ1匹100円で販売して生活をしています。従って売上は100匹×100円=10,000円。コストは仕入れ値である100匹×50円=5,000円。Bさんの利益は5,000円となります。
- 惣菜屋のCさん→Bさんから1匹100円で仕入れた魚を調理して、1匹150円で販売して生活をしています。従って売上は15,000円、コストが10,000円。Cさんの利益は5,000円となります。
- 床屋のDさん→1回500円で年間10回の散髪をして生活をしています。コストは0円。そのまま売上の5,000円が利益となります。
この4人が暮らす国の1年間の稼ぎは、それぞれ5,000円×4人=20,000円ですね。
簡単に言うと、この20,000円=国のGDPを指しています。GDP(国内総生産)とは、国が生み出している利益のことなんです。
ある年のGDPを前年のGDPと比べることで、「その国が生み出す利益が前の年と比べてどのくらい増えたか」を測ることができます。ニュースなどでよく耳にする「経済成長」というのは、このGDPが増えることを指しています。
例えば、「経済が10%成長した」という場合、20,000円のGDPが10%増えて22,000円になっていることを意味するわけなんですね。
ただし、GDPが上がる=経済成長ではない
どうすればGDPが増えるか。答えはとてもシンプルです。
一番簡単な方法は、人口が増えることです。論理的にみて人口が増えればGDPは増すんですね。
日本は戦後からバブル経済と呼ばれるまでの期間に、大きな経済成長をしましたよね。「経済が成長し、経済規模が大きくなって日本は経済大国になった。人々の所得も増えて人々の生活が豊かになった」というのは、人口が増加してGDPが増えたという話です。
「GDP」と「インフレ」の無視できない関係
ただ、GDPだけが上がればいいってもんじゃないんです。という理由が、"モノの全体的に上がってしまう現象"。すなわち「インフレーション(インフレ)」です。
インフレによって国全体のGDPが増えても、ただ単に全体の値段が上がって経済が膨らんだだけで、みんなが豊かになったわけではないんですよね。
ここ意味分かりますか?結果的には、GDPは上がって一人一人の所得が増えても、インフレによって物価も上がっているので比例して支出も増えているっていうことなので、相対的に見ると、個人の生活の豊かさはプラマイゼロということです。
そのため、名目的な経済成長率からインフレ率を引いたものを「実質的な経済成長率」と呼んで区別します。ここを政治家はよく濁すので、ニュースを見ててもヤキモキするわけですよね。
あくまでも「GDP(経済が大きくなった分)」-「インフレ(単にモノの値段が上がって経済が膨らんだだけの分)」=「本当に儲けが大きくなった分(本当に豊かになった分)」と考えるべきなんですね。
ここが経済の難しいところであり、真に理解するべき点であったりします。
戦後→高度経済成長→少子高齢化の低成長時代のイマ
戦後当時の日本は非常に貧しい国です。
1950年の日本は、人口約8,300万人、一人当たりの稼ぎは年間4万6千円、国全体のGDPは約3兆8千億円、こんな構図でした。一人当たり年に5万円弱しか稼げていないわけでなので、食卓に肉が並ぶことは少なく、もちろん各家庭にテレビや電話もない。自動車や洗濯機やエアコンなどは夢のまた夢、という生活は想像に難しくないと思います。
それが、30〜40年あまりで急激な経済成長を見せたわけですよ。1990年代半ばまでに、日本の国全体のGDPは500兆円にまで増えました。さらに、国のGDPを人口で割った一人当たりのGDPは400万円にもなったんです。戦後は一人当たり年間5万円弱しか稼げなかった日本人は、年間400万円を稼ぐようになったということですね。
国の大きな経済成長に伴い、生活は劇的に豊かになりました。家庭で肉を食べることが珍しくなくなり、各家庭にテレビや電話、洗濯機が備えられ、町中を自動車が走り回るようになりました。
前置きが長くなりましたが、このGDPの概念を踏まえた上で本題を書きたかったです。そして、ここからが本題ですw
現在は、少子高齢化と人口減少が進み、一人当たりのGDPもあまり増やせないまま、日本は低成長時代に入っています。そして日本の経済規模(GDP)は、あっという間に中国に抜かれてしまいましたよね。
これからの日本は人口が減少し、高齢化が進んで働き手が少なくなります。つまり、これだけで国のGDPは減り、成長率はマイナスになることは間違いありません。
そうです。ぼくがここで言いたい本題というのは、経済成長率が低いということは「給料が増えない」「貯めたお金が増えない」ということなんです。
お金を蓄える・守るのではなくて、増やすことを考える重要性
昔は銀行の預金金利が「8%」なんていう時代がありました(現在は0.02~0.04%程度です)。お給料を銀行に預ければ、年に8%もの利息がつく時代です。
そりゃ貯金思考になりますよね。ぼくたちの親世代は「無駄遣いせず預金」さえすれば、利息だけでお金が増え続けるんですもん。今考えたら8%の利息ってヤバいですよね。
だから、いまだにこの世代の人たちは「貯金が大事」という誤った文化の余韻が残っているんだと思います。
ぼくたちの親や、祖父母世代が子育てをしてきた1950~1980年代というのは、日本が「奇跡」と言われるようなペースで経済を成長させていた時期です。投資の勉強などせずとも、何も考えず銀行にお金を預けておくだけで、『利息』だけでお金がどんどん増えていったわけです。なにせ、「人並み」にしていれば収入がどんどん増えて、銀行に預けるだけでお金がさらに増えていくのですから、資産運用など考えなくて当然ってことになりますね。
そんな時代の人たちの凝り固まった考え方は、今は通用しません。なので親世代以上の方の話はあまり聞く耳を持つ気にならない。
これからの日本では、収入が増えにくく、貯めたお金は増えるどころか目減りし、税金などの負担ばかりが増え、貯めているだけではお金のことで苦労する人が多くなっていきます、間違いなく。
国の財政悪化で税金が増え、高齢化が進んで働く世代の社会保障負担が増えるため、実質的に使えるお金はさらに減ります。
1950年は日本の人口のうち、60歳以上の割合はわずか7.7%にしか過ぎず、現在は60歳以上の人の割合は30%を超え、「3人に1人が60歳以上」という社会へと突入しました。恐ろしい。
だから貯金をしておく必要がある?いいえ、逆だと思いますよ。
同じ100円でも価値が変わるという事実
例えば、明治時代の「100円」は大きな価値を持っていましたが、その時代に大切にタンス預金をしていた100円を今から取り出しても、缶ジュースの1本も買えませんよね。これがお金の価値の変動です。
大切なのはお金の額面ではなく、お金の購買力。ここ大事なのでもう一度言います。お金の購買力です。だから額面ばかりに目がいって、自力でお金を創る力を失っていては変化に対応できないと思います。
昔は1,000円あれば家を買えました。ということは、昔は1,000円が今でいう1億円くらいの価値を持っていたということです。「お金の価値」は変わります。
何が言いたいかというと、貯めている1,000万円は利息で増えることも期待できないし、1,000万円の価値を保てている保障がないよ?ということなんですね。
元手の1,000万円をそのまま守るのではなく、どう増やすか。お金を増やす力=稼ぐ力、知識が絶対必要。
だから、その時々の「稼ぐ力」をつけることに自分の優先順位を置いておくこと、保守的な考えは捨てるべきだと訴えたい。今は(特に若い人)絶対的な「守備力」より「攻撃力」を身につけることが先決だと思います。
お金を貯めることは大事だけど、もっと大事なのはお金でモノを買う力を貯めることなんですよ。そのためには、モノの値段が上がるのと同じか、それ以上のペースでお金を増やさないといけないんです。
まずは経済動向からお金の価値、位置づけを見極めること
上述の通り、日本の経済が好転することは今後しばらくないでしょう。
経済の回り方を見ているだけでも、単純に"蓄えるだけ"という考えは間違いであると言えると思います。
お金の話は、本当は外国為替なども絡めて、より詳しくしたいんですが、かなり文字数が多くなってしまった関係で、いったん経済指標とこれまでの日本の経済の変化から見た私見を述べるにとどめました。
ぼくは貯金思考がなかったからこそ、今があるとさえ思っています。
またいずれ、外国為替(マーケット)の観点から、同様の結論を導く記事も書きたいと思います。