映画「クボ・ザ・トゥー・ストリングス」の前にパペットアーティストのお仕事を徹底解説

クボ・ザ・トゥー・ストリングス パペットアーティスト

知れば知るほど奥が深い!

今回は知られざるパペットアーティストのお仕事についてお勉強。公開が待ち遠しいストップ・モーション映画「クボ・ザ・トゥー・ストリングス」の製作元であるライカでパペット・デパートメントを統括する女性クリエーターに迫った動画をお届けします。

こちらは映像業界の裏側を特集するYouTubeチャンネルAcademy Originalsの「Credited As:」シリーズからの動画。

「パペット・デパートメントのスタッフは家族同然」と語るのはクリエイティブ・スーパーバイザー・オブ・パペット・ファブリケイションのジョージアナ・ヘインズさん。1体のパペットを作るために約30人が携わり、プロジェクトが終われば次の仕事を求めてジプシーのように世界各国を飛び回るため、パペット・アーティストの結束は非常に強いと言います。

落ちこぼれで授業中に落書きばかりしていたというヘインズさんは、アートスクールに進学し、ビンテージドールを収集し始めました。そして幼少期に英国で見ていたアニメが全てストップモーション・アニメーションだったことを思い出し、自分の歩むべき道がパペットアーティストだと気づいたそうです。

最初の頃は全てを手がけるジェネラリストとして、撮影中に取れた頭を直したり、急遽何かを作ったり、ペイントしたりする日々を送っていましたが、ある日ライカから電話が入り「「コラライン」のパペット・デパートメントの立ち上げをしないか」とオファーをもらい当時走り始めたばかりのストップモーション・アニメーション・スタジオ、ライカに籍を置くことに。

現在、パペット・デパートメントには65人のアーティストが在籍しています。ライカでは、彫刻を作るスカルプト・デパートメント、出来上がった彫刻を個別パーツ毎に型作りをするモールドメイキング・デパートメント、パペットの骨を作るアーマチュア・デパートメント肉付けするカスティング・デパートメントといった風に分業化されています。

また、本スタジオでは表情毎に顔パーツを変えるため、相当数のフェイシャルパーツが必要になります。これらのパーツをペイントし、ヘアを作り、コスチュームを着せて、小さな俳優が完成するのです。

デパートメント統括者であるヘインズさんの仕事は、全ての工程をロスなく円滑にすすませること。ひとつでもミスがあると、数カ月を無駄にすることになってしまうので責任は重大です。そのため、作業に入る前の綿密な準備が欠かせません。

コンセプトアートの色を決め、硬いパーツ、柔かいパーツをそれぞれどの素材で鋳造するかといった風に明確な指示を加えていきます。

こういったことに加え、ミスなく作業を円滑に進めるために、監督やアニメーションの責任者と方向性とビジョンのすり合わせをし、寡黙で作業に没頭しやすいアーティストたちに頻繁にコミュニケーションをとるようにと促します。

最初の一体の制作期間は大体3~6カ月。映画のスケジュールは左から右に流れるように進むべきであり、1本のラインから始まった工程が、500本に膨れ上がり、最終的にまた1本になってひとつのパペットが完成します。

アニメのパペットなので全てのパーツが本物の人間よりデフォルメされています。スケルトンにしても、完成したパペットをゴージャスに見せるにしても、それは常にチャレンジの連続です。「パペット・デパートメントの仕事は人形が完成したから終わりというわけではない」というヘインズさん。ショット毎にパペットを微調整したり、新たな問題が発生して改良を加えなければならないのだそうです。

新たなストーリー、新たなキャラクターができるたびに「さて、これはどうやって再現すればいいのかしら」とチャレンジ精神を刺激される日々。最新作「クボ・ザ・トゥー・ストリングス」でも驚きのディテールが見れることでしょう。

source: YouTube

中川真知子