2015-07-22(Wed)
悪女 Vanity Fair/原作と違うレベッカ
2004年 イギリス
1810年代の小説家「ウィリアム・メイクピース・サッカレー」の出世作、「虚栄の市」が原作となっている。同時代のイギリスが舞台で、フランスでは「ナポレオン」が衰退をはじめる頃です。邦題の「悪女」とされるこの作品の「レベッカ(ベッキー)・シャープ」は、社交的でチャーミング。強くて前向きで友人思いです。恵まれずに育った彼女は持ち前の才気で上流社会に入り込もうとしますが、それを阻もうとする上流階級者、爵位に固執する者達など、中身のない上流社会の滑稽さと、ベッキーとは対照的な親友、アミーリアにもスポットをあてて描いている作品です。
[あらすじ]
オペラ歌手であった母と画家であった父を幼い頃に亡くし、孤児となったベッキーは、女学校に引き取られ住み込みで働きながら成長した。一人で生きていける年齢になると女学生の中で、唯一彼女に優しかった友人、上流階級育ちのアミーリア・セドリーが卒業するときに、彼女と一緒に学園を後にします。ベッキーは男爵クローリー家の家庭教師として働くことが決まっていたが、その前にアミーリアの実家セドリー家に少しの間だけ滞在することに。ベッキーはここで、アミーリアのフィアンセのジョージと兄のジョスを紹介された。アミーリアは兄のジョスとベッキーが恋仲になって「結婚して欲しい」と期待したが、ジョージは家庭教師などと親戚になりたくないとジョスに横槍を入れた。ジョージは商人として成功した父を持ち裕福ではあったが、爵位が欲しかったので家庭教師が義理の姉になるなど真っ平だったのです。そそのかされたジェスはベッキーを置いてその場から消えてしまいます。振られたベッキーでしたが、決して悲観などしません、常に明るく前向きです。 今までのお礼にと、アミーリアに、大切な父の形見の小さな絵画をプレゼントして、仕事先のクローリー家に向かいます。

クローリー家は爵位はあったが、さほど裕福ではなかった。クローリー氏の姉(叔母)のほうが資産家だった為、一家は、彼女の遺産を当てにしていたのです。ある日、その叔母がやってきたのですが、話術に長けたベッキーは直ぐに気に入られた。さらに、クローリー家の次男のロードンと密かに結婚。しかし爵位も財産もないベッキーとの結婚が公になると、一族から反発され、ロードンを相続人から廃除してしまう。ベッキーは追い出され、ロードンも屋敷を出て、二人は一緒に暮らし始めます。けれど無一文で毎日の暮らしにも事欠く始末。運がないというだけの夫の傍でベッキーはこの窮地を乗り切るためと、社交界へ乗り出すことを決める。
一方、アミーリアは、家が破産。セドリー家の家財が競売されているその場所には、ジョージの親友のドビンがいた。彼はアミーリアのピアノを落札します。ベッキーがアミーリアにプレゼントした、父の形見の絵画も競売品となっていた。ベッキーはそれを買い戻そうとしたが、父が生きていた頃から父の絵を買い集めていたスタイン侯爵が高値をつけたため手に入れることができなかった。ドビンが落札したピアノは、アミーリアのところに届けられたが、アミーリアはそれがジョージからのプレゼントだと泣いて喜ぶ姿を見てドビンは何も言えなくなってしまう。そしてその頃、ジョージの父は無一文になったアミーリアは用なしと、二人の婚約を解消しようとしていた。そしてジョージもアミーリアに興味はなく、父から妹の友人を紹介されると、乗り気で会ってみるも、相手は裕福ではあるがアジア人だったことから、爵位に拘るジョージは、父親と決別し家を出て行く。そして父親に反発して、アミーリアと結婚してしまうのです。彼女に対する愛情などこれぽっちもないままに。

いつもジョージの保護者のようにくっついているドビン、 アミーリア放置でベッキーを口説くジョージ。夫の頭上で恋文まで渡しちゃいます。
リッチモンド公爵夫人の舞踏会でナポレオン軍来襲の急報が届き、軍人たちにいよいよ出兵が発令される。

ジョージはアミーリアに何も言わずに戦地に行ってしまう。 ロードンはベッキーに出来るだけのものを置いていきます。
ある日、戦いは不利で町に敵がなだれ込んでくると噂になった。町中の人たちが逃げ出しているときに、町を歩く兵士の行列の中に、アミーリアが、ジョージを探して彷徨っていた。他の貴族の馬車に乗って逃げ出せたベッキーだったが、アミーリアを見捨てることができずに、彼女と一緒に町に残ることを決めるのだった。二人はこの時、夫々身重の体で恐怖を押し殺しながら過ごす。幸いにも戦いはイギリスが勝利し二人とも何事もなく無事に乗り切った。勝利を喜んだのもつかの間、ドビンとロードンは帰還したが、ジョージは戦死。深い悲しみにくれるアミーリア。そして息子の死を悲しむ父親の元には、生前のジョージからの手紙が渡された。けれどアミーリアの元には、一言の伝言さえありませんでした。 それでも、アミーリアの、ジョージへの想いは、この先十数年も続くのです。
ベッキーとアミーリアは男の子を出産。アミーリアはわが子に父親の名前をつけて、その子だけを生きがいとして暮らします。母子を見守るドビンは、インドへ派遣された事を彼女に伝えます。アミーリアに想いを寄せているドビンは、僅かな望みをかけて彼女に「あなたが、行くなと止めてくれれば。」と。けれど無駄に終わります。そして彼はインドへ。数年後、成長していくジョージは父親によく似てきます。けれど満足な教育も、生活もさせてあげられない孫を、アミーリアの母は不憫だと言うのです。アミーリアは、以前からのジョージの父親オズボーンからの提案を、泣く泣く呑んでジョージを手放しました。こうして離れ離れになった親子。アミーリアはドビンに手紙を書きます。「ジョージは元気です・・・・・。」

週に1度は会えるのですが、アミーリアは寂しそう。そんな母の気持ちを知るはずもなく、ジョージは寂しがるどころか、こにくら可愛い、このセリフ
インドにて、アミーリアとジョージを想いながら手紙を書くドビン。彼は現実を見据えて、他の女性と婚約をしていたのですが、ドビンの婚約の話を知ったアミーリアは「ショックを受けた」とドビンへの手紙に書いたため、ドビンは婚約を破棄しアミーリアの元に戻ってきてしまう。けれどその後も、二人の間は進展はしません。お嬢様なので、ちっともわかっちゃいないのか、気がつかないフリをしているのか・・気の毒なドビン。
クローリー家では叔母が長男に財産を残し、次いで父親も長男に財産を譲り亡くなります。ベッキーを妻にしたロードンには、僅かな財産も与えられません。ベッキーは父の絵を買い集めていた、スタイン侯爵とひょんなことから知り合うと、彼の後押しで、上流階級の仲間入りを果そうとします。そして、時の国王ジョージ4世との謁見まで果すのでした。夫のロードンはこの様子を複雑な面持ちで見つめます。その後もベッキーとスタイン侯爵とのやり取りを聞いて、ロードンは不安気です。この日、ロードンはベッキーより先に帰るのですが、その途中で借金取りに捕まり投獄。ベッキーに手紙を書いたが、迎えに来たのは兄嫁のジェーンでした。

ベッキーは、スタイン侯爵に自宅に送ってもらったが、届いた手紙から夫が帰宅できないことを知ったスケベ侯爵に求められ拒否するも、そこに夫が帰ってくるというお決まりの展開。ロードンは、スタイン侯爵に暴力を振るい追い出します。そして自宅に大金がある事に腹を立て、ベッキーを信じることができなくなり、出て行ってしまいます。数日後、侯爵の陰謀により、ロードンは島流し。後に、彼はその土地で病気により亡くなります。
ロードンと別れてから12年後。ベッキーはドイツの賭博場にいます。そこに、まだ幼さの残る一人の軍人がやってきます。一言二言、言葉を交わすと、その後ろにはドビンが。この軍人はアミーリアの子ジョージだった。アミーリアは今では亡くなったジョージの父親から遺産を譲り受け、貧しい生活から抜け出していた。そして、今はアミーリアとドビンとジョージの三人で旅行中だという。未だ二人が「お友達」と知るベッキー。ジョージは、宿泊先のホテルにいる母に会いに来てくださいと伝えます。ホテルに戻ったドビンは、ベッキーの事とこの状態に限界だったのか、再びアミーリアの元を去ろうとします。アミーリアは彼を止めません。未だ、彼女の恋人は亡きジョージなのです。翌日ベッキーはアミーリアと久しぶりの再開。ベッキーは自分と同じ過ちをして欲しくないと、あの日のジョージの恋文を読み上げるのです。傷つきながらも、やっと目が覚めたアミーリア。

やっぱりジョージの保護者みたいにくっついているドビン。ドビンはもう荷物を馬車に乗せて出発の準備中。 良かったねぇドビン。

揉み上げ長めの前流しレイヤー。この時代の多くの肖像画に描かれている人物の髪型ってこんな感じが多い。流行だったんですね。
[あとがき]
最初にこの作品を見たとき、何故、映画の邦題が「悪女」なのか理解ができませんでした。なぜなら、主役のベッキーは、悪女とは程遠い女性として描かれているからです。どうもしっくりこないので原作の内容を調べたら、納得。原作では裏の顔を持つとんでもない悪女でした。彼女を悪女とは印象付けない脚色をしているにも関わらず、それにあわせたストーリ組みをしていないため、多くのシーンで、お話がかみ合っていない印象を受けます。ジョージがアミーリアをなんとも思っていないのに、突然結婚したことが不自然でしたが、これはアミーリアを想うドビンの説得によるものだという、肝心なことをすっ飛ばしているし、原作では、ベッキーは実はアミーリアを裏切り、ジョージと浮気をしていて、それを知っているドビンは、彼女を当然に嫌うわけですが、映画ではそんな事をしていないベッキーを、何の理由もなく嫌っていることにしているのも変ですし、財産を相続できなかったロードンは、映画中では、一切援助がなく、貧乏暮らしをしているとなっているのが、実は優しい兄夫婦から援助してもらっていて、そこそこ贅沢な生活をし、ベッキーが家庭を顧みず舞踏会に足を運び贅沢をしているから貧乏ということらしいです。スタイン侯爵にも自分から近づいていっているようですしね。映画の人格に、原作の結果をそのままくっつけているような訳の判らない出来です。邦題にしても、原作に「悪女」は正解だと思うけど、映画のほうで悪女なんて、「作品を観ないで邦題決めてるのかしら?」と思ってしまいました。とはいえ、悪女のベッキーは、一癖も二癖もありながら、憎みきれないキャラの女性のようで、きっと原作どおりに作ったほうが、面白い作品になったのではないだろうかと思いました。ちなみに、ベッキーの性格で、原作と映画で共通していたのは、子供に興味がないという点ぐらいでした。映画は最後は明るいシーンで終わりますが、原作には続きがあって、ベッキーはジョスさんと一緒になって、彼の財産を食いつぶしたのち、彼の死亡保険金を手にするという内容のようです。小説にもあまり興味がわきませんけど、ただひとつ、この映画のいいところは、男性陣の魅力的な軍服ファッションスタイルです。これだけ綺麗に撮られているのって、実はありそうで、あまり無いのではないでしょうか。(3人とも細身でスタイルがいいのでそう見えるのかもしれませんが)
悪女 Vanity Fair (字幕版)
[監督]
ミーラー・ナーイル
[出演]
[検索用]リース・ウィザースプーン/ガブリエル・バーン/リス・エヴァンス/ジョナサン・リースマイヤーズ/ジム・ブロードベント/ロモーラ・ガライ/ボブ・ホスキンス/アイリーン・アトキンス/ジェラルディン・マクイーワン/ トム・スターリッジ

ワーテルローの会戦/Jan Willem Pieneman, 1824
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[あらすじ]
オペラ歌手であった母と画家であった父を幼い頃に亡くし、孤児となったベッキーは、女学校に引き取られ住み込みで働きながら成長した。一人で生きていける年齢になると女学生の中で、唯一彼女に優しかった友人、上流階級育ちのアミーリア・セドリーが卒業するときに、彼女と一緒に学園を後にします。ベッキーは男爵クローリー家の家庭教師として働くことが決まっていたが、その前にアミーリアの実家セドリー家に少しの間だけ滞在することに。ベッキーはここで、アミーリアのフィアンセのジョージと兄のジョスを紹介された。アミーリアは兄のジョスとベッキーが恋仲になって「結婚して欲しい」と期待したが、ジョージは家庭教師などと親戚になりたくないとジョスに横槍を入れた。ジョージは商人として成功した父を持ち裕福ではあったが、爵位が欲しかったので家庭教師が義理の姉になるなど真っ平だったのです。そそのかされたジェスはベッキーを置いてその場から消えてしまいます。振られたベッキーでしたが、決して悲観などしません、常に明るく前向きです。 今までのお礼にと、アミーリアに、大切な父の形見の小さな絵画をプレゼントして、仕事先のクローリー家に向かいます。
クローリー家は爵位はあったが、さほど裕福ではなかった。クローリー氏の姉(叔母)のほうが資産家だった為、一家は、彼女の遺産を当てにしていたのです。ある日、その叔母がやってきたのですが、話術に長けたベッキーは直ぐに気に入られた。さらに、クローリー家の次男のロードンと密かに結婚。しかし爵位も財産もないベッキーとの結婚が公になると、一族から反発され、ロードンを相続人から廃除してしまう。ベッキーは追い出され、ロードンも屋敷を出て、二人は一緒に暮らし始めます。けれど無一文で毎日の暮らしにも事欠く始末。運がないというだけの夫の傍でベッキーはこの窮地を乗り切るためと、社交界へ乗り出すことを決める。
一方、アミーリアは、家が破産。セドリー家の家財が競売されているその場所には、ジョージの親友のドビンがいた。彼はアミーリアのピアノを落札します。ベッキーがアミーリアにプレゼントした、父の形見の絵画も競売品となっていた。ベッキーはそれを買い戻そうとしたが、父が生きていた頃から父の絵を買い集めていたスタイン侯爵が高値をつけたため手に入れることができなかった。ドビンが落札したピアノは、アミーリアのところに届けられたが、アミーリアはそれがジョージからのプレゼントだと泣いて喜ぶ姿を見てドビンは何も言えなくなってしまう。そしてその頃、ジョージの父は無一文になったアミーリアは用なしと、二人の婚約を解消しようとしていた。そしてジョージもアミーリアに興味はなく、父から妹の友人を紹介されると、乗り気で会ってみるも、相手は裕福ではあるがアジア人だったことから、爵位に拘るジョージは、父親と決別し家を出て行く。そして父親に反発して、アミーリアと結婚してしまうのです。彼女に対する愛情などこれぽっちもないままに。
いつもジョージの保護者のようにくっついているドビン、 アミーリア放置でベッキーを口説くジョージ。夫の頭上で恋文まで渡しちゃいます。
リッチモンド公爵夫人の舞踏会でナポレオン軍来襲の急報が届き、軍人たちにいよいよ出兵が発令される。
ジョージはアミーリアに何も言わずに戦地に行ってしまう。 ロードンはベッキーに出来るだけのものを置いていきます。
ある日、戦いは不利で町に敵がなだれ込んでくると噂になった。町中の人たちが逃げ出しているときに、町を歩く兵士の行列の中に、アミーリアが、ジョージを探して彷徨っていた。他の貴族の馬車に乗って逃げ出せたベッキーだったが、アミーリアを見捨てることができずに、彼女と一緒に町に残ることを決めるのだった。二人はこの時、夫々身重の体で恐怖を押し殺しながら過ごす。幸いにも戦いはイギリスが勝利し二人とも何事もなく無事に乗り切った。勝利を喜んだのもつかの間、ドビンとロードンは帰還したが、ジョージは戦死。深い悲しみにくれるアミーリア。そして息子の死を悲しむ父親の元には、生前のジョージからの手紙が渡された。けれどアミーリアの元には、一言の伝言さえありませんでした。 それでも、アミーリアの、ジョージへの想いは、この先十数年も続くのです。
ベッキーとアミーリアは男の子を出産。アミーリアはわが子に父親の名前をつけて、その子だけを生きがいとして暮らします。母子を見守るドビンは、インドへ派遣された事を彼女に伝えます。アミーリアに想いを寄せているドビンは、僅かな望みをかけて彼女に「あなたが、行くなと止めてくれれば。」と。けれど無駄に終わります。そして彼はインドへ。数年後、成長していくジョージは父親によく似てきます。けれど満足な教育も、生活もさせてあげられない孫を、アミーリアの母は不憫だと言うのです。アミーリアは、以前からのジョージの父親オズボーンからの提案を、泣く泣く呑んでジョージを手放しました。こうして離れ離れになった親子。アミーリアはドビンに手紙を書きます。「ジョージは元気です・・・・・。」
週に1度は会えるのですが、アミーリアは寂しそう。そんな母の気持ちを知るはずもなく、ジョージは寂しがるどころか、こにくら可愛い、このセリフ
インドにて、アミーリアとジョージを想いながら手紙を書くドビン。彼は現実を見据えて、他の女性と婚約をしていたのですが、ドビンの婚約の話を知ったアミーリアは「ショックを受けた」とドビンへの手紙に書いたため、ドビンは婚約を破棄しアミーリアの元に戻ってきてしまう。けれどその後も、二人の間は進展はしません。お嬢様なので、ちっともわかっちゃいないのか、気がつかないフリをしているのか・・気の毒なドビン。
クローリー家では叔母が長男に財産を残し、次いで父親も長男に財産を譲り亡くなります。ベッキーを妻にしたロードンには、僅かな財産も与えられません。ベッキーは父の絵を買い集めていた、スタイン侯爵とひょんなことから知り合うと、彼の後押しで、上流階級の仲間入りを果そうとします。そして、時の国王ジョージ4世との謁見まで果すのでした。夫のロードンはこの様子を複雑な面持ちで見つめます。その後もベッキーとスタイン侯爵とのやり取りを聞いて、ロードンは不安気です。この日、ロードンはベッキーより先に帰るのですが、その途中で借金取りに捕まり投獄。ベッキーに手紙を書いたが、迎えに来たのは兄嫁のジェーンでした。
ベッキーは、スタイン侯爵に自宅に送ってもらったが、届いた手紙から夫が帰宅できないことを知ったスケベ侯爵に求められ拒否するも、そこに夫が帰ってくるというお決まりの展開。ロードンは、スタイン侯爵に暴力を振るい追い出します。そして自宅に大金がある事に腹を立て、ベッキーを信じることができなくなり、出て行ってしまいます。数日後、侯爵の陰謀により、ロードンは島流し。後に、彼はその土地で病気により亡くなります。
ロードンと別れてから12年後。ベッキーはドイツの賭博場にいます。そこに、まだ幼さの残る一人の軍人がやってきます。一言二言、言葉を交わすと、その後ろにはドビンが。この軍人はアミーリアの子ジョージだった。アミーリアは今では亡くなったジョージの父親から遺産を譲り受け、貧しい生活から抜け出していた。そして、今はアミーリアとドビンとジョージの三人で旅行中だという。未だ二人が「お友達」と知るベッキー。ジョージは、宿泊先のホテルにいる母に会いに来てくださいと伝えます。ホテルに戻ったドビンは、ベッキーの事とこの状態に限界だったのか、再びアミーリアの元を去ろうとします。アミーリアは彼を止めません。未だ、彼女の恋人は亡きジョージなのです。翌日ベッキーはアミーリアと久しぶりの再開。ベッキーは自分と同じ過ちをして欲しくないと、あの日のジョージの恋文を読み上げるのです。傷つきながらも、やっと目が覚めたアミーリア。
やっぱりジョージの保護者みたいにくっついているドビン。ドビンはもう荷物を馬車に乗せて出発の準備中。 良かったねぇドビン。
揉み上げ長めの前流しレイヤー。この時代の多くの肖像画に描かれている人物の髪型ってこんな感じが多い。流行だったんですね。
[あとがき]
最初にこの作品を見たとき、何故、映画の邦題が「悪女」なのか理解ができませんでした。なぜなら、主役のベッキーは、悪女とは程遠い女性として描かれているからです。どうもしっくりこないので原作の内容を調べたら、納得。原作では裏の顔を持つとんでもない悪女でした。彼女を悪女とは印象付けない脚色をしているにも関わらず、それにあわせたストーリ組みをしていないため、多くのシーンで、お話がかみ合っていない印象を受けます。ジョージがアミーリアをなんとも思っていないのに、突然結婚したことが不自然でしたが、これはアミーリアを想うドビンの説得によるものだという、肝心なことをすっ飛ばしているし、原作では、ベッキーは実はアミーリアを裏切り、ジョージと浮気をしていて、それを知っているドビンは、彼女を当然に嫌うわけですが、映画ではそんな事をしていないベッキーを、何の理由もなく嫌っていることにしているのも変ですし、財産を相続できなかったロードンは、映画中では、一切援助がなく、貧乏暮らしをしているとなっているのが、実は優しい兄夫婦から援助してもらっていて、そこそこ贅沢な生活をし、ベッキーが家庭を顧みず舞踏会に足を運び贅沢をしているから貧乏ということらしいです。スタイン侯爵にも自分から近づいていっているようですしね。映画の人格に、原作の結果をそのままくっつけているような訳の判らない出来です。邦題にしても、原作に「悪女」は正解だと思うけど、映画のほうで悪女なんて、「作品を観ないで邦題決めてるのかしら?」と思ってしまいました。とはいえ、悪女のベッキーは、一癖も二癖もありながら、憎みきれないキャラの女性のようで、きっと原作どおりに作ったほうが、面白い作品になったのではないだろうかと思いました。ちなみに、ベッキーの性格で、原作と映画で共通していたのは、子供に興味がないという点ぐらいでした。映画は最後は明るいシーンで終わりますが、原作には続きがあって、ベッキーはジョスさんと一緒になって、彼の財産を食いつぶしたのち、彼の死亡保険金を手にするという内容のようです。小説にもあまり興味がわきませんけど、ただひとつ、この映画のいいところは、男性陣の魅力的な軍服ファッションスタイルです。これだけ綺麗に撮られているのって、実はありそうで、あまり無いのではないでしょうか。(3人とも細身でスタイルがいいのでそう見えるのかもしれませんが)
悪女 Vanity Fair (字幕版)
[監督]
ミーラー・ナーイル
[出演]
ベッキー・シャープ | リース・ウィザースプーン |
ステイン侯爵 | ガブリエル・バーン |
ウィリアム・ドビン | リス・エヴァンス |
ジョージ・オズボーン | ジョナサン・リースマイヤーズ |
オズボーン氏 | ジム・ブロードベント |
アミーリア・セドリ | ロモーラ・ガライ |
ピット・クローリー卿 | ボブ・ホスキンス |
マチルダ・クローリー | アイリーン・アトキンス |
ロードン・クローリー | ジェームズ・ピュアフォイ |
サウスダウン伯爵夫人 | ジェラルディン・マクイーワン |
ジョージー・オズボーン(ジョージの息子) | トム・スターリッジ |
ワーテルローの会戦/Jan Willem Pieneman, 1824
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