【ワシントン=共同】広島への原爆投下時に撮影された有名な写真に写るきのこ雲が、爆発直後にできたものではなく、しばらく時間がたって地上の激しい火災によって発生した煙や雲とみられることが分かった。原爆を開発した米ロスアラモス国立研究所が、このほど明らかにした。
ニューヨーク・タイムズ紙は、オバマ大統領の広島訪問に先立つ5月、写真について「実は“きのこ雲”でなかった」と驚きを交え報じた。ただ日本の専門家の間では半ば常識とされるという。
一方で、きのこ雲という言葉に厳密な定義はない。写真を解析研究した広島市立大の馬場雅志講師は「爆発直後ではないが、原爆の雲であることは事実で、きのこ雲と呼んで差し支えない」と話している。
同研究所のロアーク報道官によると、爆発直後のきのこ雲は数分程度で消える。写真の規模の雲が直後にできたとすると広島の原爆とは比較にならない威力が必要で「火災による煙の柱」とした。
写真は1973年、米国が日本に提供した「返還資料」の中にあった。複製を展示する広島の原爆資料館は「米軍機より撮影したきのこ雲。松山市上空から撮影」と説明している。撮影者や時間は特定されていない。
撮影時間も諸説ある。ロアーク報道官は影の様子などを基に投下の「45分~1時間後」の可能性があると話す。米軍資料に詳しい徳山高専の工藤洋三元教授は「約4時間後」とする。
原爆を投下した爆撃機エノラ・ゲイの搭乗員が数分後にきのこ雲を撮影した別の写真も残っている。