【ユジノサハリンスク=田中孝幸】北方領土の択捉島で6日、ロシア政府主催の愛国集会「全ロシア青年教育フォーラム」が開幕した。期間は9月3日までの約1カ月間。同島での開催は2回目だが、ロシア政府は今回、開幕式への閣僚の派遣を見送った。9月初旬に極東ウラジオストクで予定する日ロ首脳会談を前に、日本に一定の配慮を示したとみられる。
極東の行政トップの大統領全権代表を兼務するトルトネフ副首相の報道官は日本経済新聞に「副首相が択捉に行く計画はない」と語った。集会の関係者によると期間中の閣僚級の出席は現時点で予定していない。
初回の昨年は開幕式にトルトネフ氏、期間中にメドベージェフ首相がそれぞれ参加し、日本政府が強く抗議した経緯がある。北方領土への閣僚の訪問はプーチン大統領の決裁事項とされ「今回は日本との経済関係の強化を目指すプーチン氏の意向が働いた」(日ロ外交筋)との見方が出ている。
半面、ロシア政府は昨年に比べて開催期間を2倍に延長。参加者も1.5倍の約300人に増やし、米国や中国、フランスなど第三国からの学生や研究者を初めて受け入れた。日本への領土返還に否定的な世論や9月の下院選をにらみ、ロシアとして北方領土の開発を進める姿勢を内外にアピールする狙いも透ける。