先日、第3次安倍内閣が発足し、世耕弘成氏(経済産業大臣)や山本幸三氏(地方創生大臣)など、経済に強い人物が新たに入閣しました。
この人選は、安倍総理が課題とする財政健全化へ向けた「経済内閣」としての強い意識が改めて感じられます。
そして、この内閣改造を受けて、メディアでは「プライマリーバランスの黒字化」という課題が再度取りざたされました。
本記事では、「プライマリーバランス」とは一体何か?というところから、何が問題となっているのか、について、わかりやすい言葉で解説していきたいと思います。
プライマリーバランスとは何か?
プライマリーバランスとは、簡単に言ってしまえば、日本の収支バランスです。入ってくるお金と、出ていくお金のバランスのことです。
少し具体的に言うと、基礎的財政収支と言って、国の歳入から国債収入を除いたものと、国の歳出から国債の利払いと国債償還費を除いたものの差額です。国の借金関連を除いたときの収支ということですね。
国の収入というのは、言うまでもなく「税収」です。所得税・法人税・消費税を中心に、たばこ税や相続税など、国税による収入のことです。
国の支出というのは、年金や医療費などの社会保障費、地方に分配する地方交付税交付金、それから、公共事業・教育・防衛費などがあります。
つまり、この国の収入が国の支出を上回れば、「プライマリーバランスは黒字」となり、国の収入が国の支出を下回れば「プライマリーバランスは赤字」となるわけです。
現在の日本政府のプライマリーバランスはどうなっているのか?
それでは、現在の日本のプライマリーバランスはどうなっているのでしょうか。
2015年度の日本政府の予算を見ていくと、国の税収が約54.5兆円となっています。
支出の方はというと、社会保障費が約31.5兆円、地方交付税交付金が約15.5兆円、公共事業・教育費・防衛費が約16.4兆円、その他が9.5兆円となっており、合計で約72.8兆円です。
収入が54.5兆円に対して、支出が72.8兆円です。
あれ?とてつもない赤字ですね?そうなんです。日本のプライマリーバランスは、先進国の中でも最も深刻と言われるほどの赤字なんです。
足りない部分の収入については、当然ながら国債を発行することで、つまり借金をすることで賄っています。
(ちなみに、国債の元本返済は約13.3兆円、国債利払いは約10兆円です。ひえー)
プライマリーバランスが赤字だと何がいけないのか?
「プライマリーバランスが赤字だと何がいけないの?」と思った方はなかなか鋭いです。
前述のように日本財政は大赤字ですが、今のところ我々の生活は脅かされているわけではありません。
それはなぜか?日銀が国債を買い取ってくれているからです。つまり、日本銀行という優しい足長おじさんが、お金をどんどん貸してくれるのです。
常識的に考えてみてください。今の日本は、毎年の収支が赤字で、さらに借金を返すために借金をしているような状態です。こんな人に「よし、お金を貸してあげよう」という銀行があると思いますか?普通の人だったら、お金なんて借りられないわけです。
借金を返さなければいけないけれど、もう返すお金がない。そうなると、残る道は「破産」しかありません。国の規模で言えば「デフォルト」です。
少し前にギリシャがデフォルト危機に陥っていましたね。あれはなぜ回避できたかと言うと、IMFという国際機関がお金を貸してあげたからです。
日本も「日本銀行」というお金を貸してくれる機関があるから、今のところデフォルトする気配はありません。「日本銀行」は日本の機関なので、現在の状態を例えて、「子供が親に借金をしているようなもの」と評する人もいます。だから、親への借金なんてあってないようなものだから、日本はいくら日銀に借金をしても問題ない、という人までいます。
しかしながら、こんな状態を続けていれば、国際的な信用力が低下していくことは避けられないでしょう。
日本の現在の公債残高は800兆円を超えると言われています。プライマリーバランスが赤字のままだと、債務残高は増える一方です。希望の光が見えません。
だからこそ、日本政府は必死になって「財政健全化」「プライマリーバランスの黒字化」と言っているわけです。
どうして日本のプライマリーバランスは赤字なのか?
そもそも、なぜ日本の財政はこんなにも赤字になってしまっているのでしょうか。
それは、「社会保障費の増大」という一言に尽きます。
下の図をご覧ください。1990年度に比べて、税収やその他の支出はさほど変わっていないのに、社会保障費だけ3倍近くに膨れ上がっていることがわかります。
なぜ社会保障費が増大しているかというと、少子化・高齢化社会となった現在の日本において、年々と年金の支払いや医療費支払い、あるいは介護費用が増大していったからです。これはもう色んなところで報道され、議論されている問題ですね。
どうすれば日本の財政は健全になるのか?
日本政府は「2020年度までに日本のプライマリーバランスを黒字にする」という目標を掲げています。
しかしながら、内閣府の試算によると、このまま日本が毎年実質GDP2.0%の成長を続けても、5.5兆円の赤字になる、という試算を出しており、2020年の黒字化達成はなかなか厳しい状況となっています。
収支のバランスを保つには、「収入を増やす」か「支出を減らす」の二択しかないわけですが、「収入を増やす」のはなかなか厳しいでしょう。増税と言うのは逆に景気にブレーキがかかり、税収が落ち込む可能性さえあります。
そうすると、「支出を減らす」しかないわけですが、いったいどの支出を減らせばいいのでしょうか。正直私には、どこを削ればいいのか明確な答えは見つかりませんし、政府から出ている具体案にも「なるほど!」と思わせるようなものは出ていないように思います。
この問題点については、今後必ず解決していかなければならないことだと思いますし、国民一人一人が頭の片隅に置いておかなければいけない問題だと、個人的には思っています。
「黒字化目標はいいけど、具体的にどうするの?」
この問いに明快に回答できるような安倍政権を期待しています。