8月6日、尖閣諸島周辺の水域に中国漁船240隻が進入し緊張が高まりました。
そこで「なぜこんなに多くの中国漁船が、統一行動をとっているの?」という素朴な疑問が湧くわけです。
中国漁船の活用に関しては、以前に米国の地政学サイト、ストラトフォア(Stratfor)が長尺記事を書いています。以下はその要点をかいつまんだものです:
そこで「なぜこんなに多くの中国漁船が、統一行動をとっているの?」という素朴な疑問が湧くわけです。
中国漁船の活用に関しては、以前に米国の地政学サイト、ストラトフォア(Stratfor)が長尺記事を書いています。以下はその要点をかいつまんだものです:
中国の沿海には数十万にものぼる民間漁船が操業している。中国はその一部を民兵(militia=武装民間人)化している。民兵化された漁船には軽兵器や簡単な監視装置が持ち込まれ、号令が掛けられたら、それに応じられる準備がある。
民兵化漁船には、沿岸警備隊より目立たないという利点がある。それらを活用することで、取り巻きの支配(ambient control)を確立することができる。民兵化漁船の正確な数は把握できない。
民兵の活用は、古来より行われてきた手法である。その存在により、正規軍が効果的に動ける、諜報活動ができる、などの利点がある。また中国本土では、かつて「骨までしゃぶる(bleed an invader dry)」作戦のために民兵が活用された歴史がある。
現在、中国の軍事予算の3%程度が、そのような民兵組織の育成・維持に割かれている。
もともと中国の民兵化漁船は、中国の沿岸を台湾の国民党の攻撃から守る目的で、1950年代に登場した。
中国が南シナ海の領土主張をはじめたのは1970年代だが、その際、民兵化漁船も参加、バラセル諸島を南ベトナムから奪取した。
漁師たちからすれば、自分たちの安全や生活権の「自衛」のため行動しているわけだ。
民兵化漁船は、これまでにスプラトリー諸島、パラセル諸島、スカーボロー礁で衝突事件を起こしている。
海軍の艦船を芯として、その周りに何層もの民兵漁船団や民間の漁船で護り、効率的な監視、諜報網を構築する手法を中国では「キャベツ戦略」と呼んでいる。
中国の沿海は、乱獲のため近年、魚が取れなくなっている。同様にマレーシア、ブルネイ、タイランド、インドネシア、フィリピン沖でも過剰な漁のせいで海産物のストックが危険に晒されている。各国の漁師たちがピリピリしている一因は、漁場と生活を守る必要性にある。
民兵化漁船は正規軍ではないため政府の管理下ではない。統率のとれた行動が取れるとは限らない。勝手にいざこざを起こすかもしれない。日々の指揮に関してはそれぞれの地域のリーダーに一任されている。現場では漁師たちが勝手に判断を下し、行動を起こしてしまう場合もある。
なお民兵化漁船は、中国だけではない。ベトナムも中国に対抗するために民兵化漁船を組織している。