「事件を基地問題に絡めるな」「人権派が喜んでいる」。ナチスのカギ十字旗を掲げて「外国人追放」のデモを行うことで知られる極右団体の代表も、この事件では、あたかも女性の側に非があるかのような持論をブログに掲載した。ツイッターで「米軍基地絡みだと大騒ぎになる」「米軍が撤退したら何が起きるか自明だ」などと発信した元国会議員もいる。これら自称「愛国者」たちは、簡単に沖縄を見捨てる。外国の軍隊を守るべきロジックを必死で探す。なんと薄っぺらで底の浅い「愛国」か。
1年前には人気作家の沖縄蔑視発言が話題となったが、この手の話を拾い上げればきりがない。「沖縄は基地で食っている」「沖縄の新聞が県民を洗脳している」「沖縄は自分勝手」「ゆすりの名人」-。
不均衡で不平等な本土との力関係の中で「弾よけ」の役割を強いられてきた沖縄は、まだ足りないとばかりに、理不尽を押し付けられている。差別と偏見の弾を撃ち込まれている。しかも、そうした状況を肯定する素材としてのデマが次々と生み出されていく。
歴史を振り返ってみれば、外国籍住民へのヘイトスピーチ同様、沖縄差別も決して目新しいものではない。日本社会は沖縄を蔑み、時代に合わせて差別のリニューアルを重ねてきた。アパートの家主が掲げた「朝鮮人、琉球人お断り」の貼り紙が、いま、「日本から出ていけ」といった罵声や横断幕に取って代わっただけだ。
「沖縄は甘えるな」といった声もあるが、冗談じゃない。倒錯している。沖縄に甘えてきたのは本土の側だ。見下しているからこそ、力で押し切ればなんとかなるのだと思い込んでいる。実際、そうやって強引に歯車を動かすことで、沖縄の時間を支配してきた。辺野古で、高江で、沖縄の民意はことごとく無視されている。
私はこれまで、ヘイトスピーチの“主体”を取材することが多かった。だが、被害の実情を見続けているうちに、加害者分析に時間をかける必要を感じなくなった。差別する側のカタルシスや娯楽のためにマイノリティーや沖縄が存在するわけではない。
これ以上、社会を壊すな。そう言い続けていくしかない。差別や偏見の向こう側にあるのは戦争と殺りくだ。歴史がそれを証明しているではないか。(ジャーナリスト)
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