丸川五輪相の深い意味
8月3日に第3次安倍再改造内閣が発足した。安倍晋三首相は自民党執行部の要である谷垣禎一幹事長の続投に固執したが、最後は次善の後継幹事長に二階俊博前総務会長を選択した。
それにしても、である。新内閣と自民党執行部の新しい陣立てを俯瞰してみると、なかなか狡猾な人事だったと思う。
具体例を挙げたい。先ずは、丸川珠代前環境相の東京五輪相起用である。元首相の森喜朗東京五輪組織委員会会長が遠藤利明東京五輪相の留任を求めたにも拘らず、安倍首相は直系の丸川氏を据えた。最大派閥清和会(細田派)の大先輩の森元首相を袖にしたのだ。今後、安倍、森両氏の関係に亀裂が生じかねない。
では、なぜ丸川五輪相だったのか?安倍首相は4日午前、官邸で小池百合子東京都知事と会談、東京五輪成功のために政府と東京都が連携することで一致したという。要は、二階幹事長の言葉を借りるならば「撃ち方止め」によって、両者は和解したというのである。
だが事は、そう簡単ではない。安倍首相はかつて2回も自分を裏切った小池新知事を許すはずがなく、初の女性東京都知事に女性五輪担当相をぶつける“当てこすり”の意味もあるだろう。
しかし、何よりも丸川東京五輪相を2020年のオリンピック本番まで続投させることで、政府(五輪担当相)・東京都(知事)・東京五輪組織委員会(会長)連合を自分が取り仕切るという意思表示でもあるのだ。
換言すれば、東京五輪開催を首相(総裁)として迎えるということである。まさに今、二階幹事長が内閣改造前に火を付けて、就任記者会見で改めて言及した自民党総裁の任期延長問題を年内に片を付けて来年1月開催の党大会で実現しようとしている。
仮に任期延長がクリアできれば、安倍首相は、総裁任期切れを迎える2018年9月から1期3年延長して21年9月までの超長期政権を掌中にすることになる。同任期を全うすれば、首相在任記録7年8カ月の佐藤栄作元首相を抜いて戦後最長の“大宰相”になる。
次は、女性2人目の防衛相となる稲田朋美大臣である。最初の女性防衛相は、やはり第1次安倍内閣の小池氏である。因縁というよりも、これは敢えて稲田前政調会長を据えたということだ。早くから入閣を打診され、ご本人だけでなく周辺、メディア関係者も「稲田経済産業相」と確信していた。
ところが、改造前日の夕方、稲田氏は安倍首相から「防衛相で」と告げられ、同時に、留任と思っていた世耕弘成官房副長官も経済産業相起用を伝えられた。今回人事の中でも所謂「サプライズ」である。稲田氏には防衛相を長期間務めさせて安全保障政策だけでなく外交政策にも通暁した「ポスト安倍」候補の1人に育てるということだ。
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