ウェールズが舞台になっている映画と言えば「ウェールズの山」。
英語タイトルは、THE ENGLISHMAN WHO WENT UP A HILL BUT CAME DOWN A MOUNTAINで「丘に登ったけれど山を下りたイングランド人」で、主人公アニソンはヒュー・グランドが演じています。
ウェールズについては日本では殆ど紹介されておらず、日本人はウェールズについて知っている人は少ないです。
ウェールズの山は、ウェールズの自然が多い環境、人間味あふれる人々の暮らしや考え方が良く分かり、映画はとても楽しめますし、ウェールズを知る意味でも良い映画です。
ウェールズの山、の場所
ウェールズの山、の場所はウェールズの首都であるカーディフの郊外に、コッホ城というメルヘンチックな美しいお城があり、そのお城の近くにGwaelod-y-Garthという村とガース・ヒル(ガース・マウンテン)と呼ばれる山があります。
そこがウェールズの山の舞台となります。
参考:Garth Hill - Wikipedia, the free encyclopedia
ウェールズ南部は鉄鉱石がとれ16世紀に採掘が始まり、19世紀から多くの鉄鋼産業が発達しました。(現在は閉山されて、博物館になっているところもあります)
ウェールズの山、の概要
ネタバレしない程度に書きます。上記の社会背景の中で、映画のウェールズの山は、1917年にイングランド人が地図作成のため、ファノン・ガルーの山の高さを測るために村を訪れた時の話です。
地図上で山として305メートル必要で、それ以下であると丘になってしまうということです。ファノン・ガルーの山の高さを巡り、ウェールズの人々が一致団結をしていく姿が描かれておりウェールズの人々の人間味がとても伝わってくる映画です。
ウェールズの山、ここがポイント
前述しましたようにウェールズの山を鑑賞すると、ウェールズについて多くの事を知ることが出来ます。ここにそのポイントを3つご紹介します。
①自然が多い
ウェールズは日本の四国と同じくらいの面積で山岳地帯が多く、緑あふれる自然が多く残されています。北部にはスノードニア、南部にはと呼ばれる大きな国立公園があり主要な観光地となっています。
過去には鉄鋼業が発達しましたが基本的には農業や軽工業を中心としており、現在でも映画に出てくる様な、周りを自然に囲まれのんびりとした田舎町が多くあります。
②ウェールズ人の誇り
イギリスは、大まかにはイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの国々で構成され、イギリスの正式名は、グレートブリテン及び、北アイルランド連合王国、United Kingdom of Great Britain and Northern Irelandです。
ウェールズ人の祖先はケルト系のブリトン人で、紀元前数世紀に大陸からグレートブリテン島に移住してきた民族で、お隣のイングランドに住むゲルマン系のアングロサクソン人とは民族が異なります。
5世紀以前はグレートブリテン島にはブリトン人が広く住んでいましたが、現在のドイツ付近からやって来たアングロサクソン人に国土の大部分を占領されて、ブリトン人は西のウェールズと南のコーンウォール、北のスコットランドに一部に住むようになりました。
古代から中世にかけてウェールズはイングランドの侵略に対して戦いを続けてきた歴史的な背景があり、自分たちのウェールズの国や文化に誇りを持ち、自分たちの手で守っていこうという強い団結心があります。映画を通して、みんなで協力して助け合いながら生きていこう、という人間性が強く感じられます。
中世では敵対心が強かったと思いますが、現代でもその精神は残っているようでイングランド人(イングリッシュ)に対しては国家としては同じですが民族が違うので、ちょっとよそ者的な意識が働いているようです。
ただ面白い点は、たとえよそ者のイングリッシュだとしても心を開いて打ち解け合えば仲間になってしまう、というユーモアと人懐っこさもある点です。
※イングランドでは1066年以前は主にアングロサクソン人がイングランド王(一時期ヴァイキングのデーン人)、1066年以降はノルマン人がイングランド王になっていました
◎ウェールズの古代から中世の歴史について
※映画でこんな場面もありました。
ウェールズは山によって助けられてきた
山によってローマの侵略、ヴァイキングの侵略、アングロサクソンの侵略からも守られてきた。山は我々を守って来た神聖な神である。
③ウェールズの言葉
ウェールズでは公用語は英語ですが、ウェールズ固有の言語であるウェールズ語も話されています。ウェールズの山を見ていても、たまにウェールズ語が話されている場面があり、全く何を話しているのか分からないと思います。それもそのはずで、ウェールズ語はケルト系の言語で、英語とは全く異なることばだからです。
イングランドの支配下に700年以上も置かれているため現在は20%程度の人しか話せません(最近はウェールズ語を話せるようにしようと、ウェールズ語の教育に力を入れ始めています)。ウェールズの人々が話す英語はそのウェールズ語の発音の影響を受け、とても訛りの強い英語になっています。
アンソン役のヒュー・グランドが話す英語はいわゆるブリティッシュイングリッシュでやや早口で分かりにくいですが、ウェールズ人のモーガンやベティが話す英語はウェールズ訛りが強く、多くの人は殆ど聞き取れなかったのではと思います。
同じネイティブスピーカーが話す英語でも、特にアメリカ英語と比べてみても大きく発音が異なり驚きますね。
※ウェールズの英語に関する記事
最後に
映画を通しても、他の国の人々の暮らしや考え方など文化に触れることができると思います。
ウェールズの山を観て、ウェールズについて興味を持つきっかけになれば幸いと思います。最後まで読んでくださり有難うございました。