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1話
お前と会えなくなって、もう1年が経つ。
時間の流れは、こんなにも早く感じるものだったか。
俺はいまだに恋ができないよ。
お前がいないことがこんなにも苦しくなるなんて、思ってなかった。
―――――――……
「御影。明日、絶対来いよ。あいつのデビュー祝いなんだからさ」
「分かってる。行く。海人が主役だから行くんであってお前らの為に行くんじゃないからな」
「へーへー。御影は本当に海人が好きな?」
別に。
海人が好きなんじゃない。あいつは少し、他と違うって思ったから。
「俺、帰る」
「海人と帰んねーの?」
「会えば帰る」
嘘。
行く所は決まってる。
屋上。
「…海人」
「みぃくん」
俺はフェンスに凭れる海人に近づく。
「また、ここなのか」
「うん。俺、ここ好きなんだ。一つになれた気分がする」
……たまに、海人は怖いと思う。
いつか、消えてなくなってしまうんじゃないかって。
その柵を越えて、姿が見えなくなってしまうんじゃないかって。
「……海人」
俺は海人の手を掴んだ。
つなぎ止めて、いたかったのかも知れない。
「なに、みぃくん」
「何でもない。黙ってろよ」
海人の手はほんのり、温かかった。
側に、ちゃんといる。
抜けていかないように、キツく握った。
「痛いよ、みぃくん」
「我慢しろ」
何で握るのかを海人は聞いてこない。
肝心なところは触れてこない。
触れてしまうことを恐れているのか。
俺が海人を壊してしまいたい。
消えてなくなるなら、俺の手で。
「冷えてきたね」
「そうだな」
「今日の夕飯、なんだと思う?」
「さぁな」
「今日、みぃくん体育、カッコ良かったよ」
「あっそ」
「女の子がね、クッキーくれたんだ。みぃくんも食べるでしょ?」
「くれんなら貰う」
「みぃくん」
「何だ」
「みぃくん」
「何だ」
「みぃくん」
「……海人」
「みぃくん、俺のこと好き?」
「……あぁ」
「そっか。俺も好き」
「海人、お前、何か変だぞ?」
「そんな事ないよ。いつもと同じ。でも、少しだけ…憂鬱、かな」
なにが。
本当のことが、知りたい。
でも、聞きたくない。
「みぃくんの家、言ってもいい?」
「…あぁ」
「手、繋いで帰ろう?」
「恥ずかしいからダメだ」
「お願い」
「……一度きりだからな」
「ありがとう」
いつもと違う帰り道に見えた。
手を繋いで帰るのは、悪くないかもしれない。
「親いないから騒いでも大丈夫だ」
「騒がないよ…みぃくん、えっちしよ」
「は?」
「えっち、しよ」
「いや、だ…いみわかんね…」
なに、動揺してんだ。
こんなの、冷静になれば拒否できるだろ。
「お願い。みぃくんとえっちしたい」
「いっ、い…1回だけ、なら………」
いつから、そうだったか。
こいつの「お願い」は、どうしても逆らえない。
「ありがとう。触るね」
抱きしめられた腕が小刻みに、震えてた。
泣いてるのか?
「みぃくん…やっと、触れた…」
涙を流しながら、キスしてきた。
涙のしょっぱい味が口に入ってきた。
こいつは、いつから俺を見てたんだろうか。
「ぬるい。もっと絡めてこい」
「っ!みぃくん…いいの?」
「許してやる」
「ありがとうっ!」
クチュと水音がするようなキスに変えてきた。素直な奴。応えてやるのも、悪くない。
「ンっ…」
容赦のない手の動き。
上も下もとろけるほどに気持ちいい。
下を包み込んでくれる手は快楽に導く。
「アァっ……!!」
その後は、我慢出来ないとナカに挿入してきた。
初めてシたセックスは男だった。
でも、嫌じゃ、なかった。
「みっちゃん!!!」
母親の叫び声に朝、飛び起きた。
「なにっ、母さん!!」
慌てて、駆け寄る。
母さんと、海人の母さん…。
……まさか。
「みっちゃん…落ち着いて、聞いてね」
「え」
「海人くん、昨日の夜、亡くなったの…」
「うそだ」
「みっちゃん」
「うそだろ?うそだっ!」
だって、昨日、俺はあいつとっ!
いるんだろ!?
部屋にさっ!?
「部屋見てくる」
「…みっちゃん」
あいつの部屋に行けば、わかる。
だって、ありえない。
昨日の今日で、そんな…。
でも、信じられないわけじゃ、ない。
昨日のあいつの態度。
変だったじゃないか。
ガチャ…
「誰も、いない…?」
そんなっ!
本当に!?
俺、何も伝えられてないじゃん!!
俺も好きって…!
「俺も好きってっ言ってないだろ!?…聞けよっ!!
勝手にいなくなってんじゃねーよ…
俺を、一人にするなよ…
どうやって生きたらいんだよっ
デビュー祝い、すんじゃなかったのか?
なんでっ…!
くそっ……海人……お前なんか、嫌いだっ!!!」
「……ごめんね、みぃくん」
はぁ?
「だれ」
「俺だよ?みぃくん、俺のこと、好きって、言ってくれたね?ありがとう」
「幻覚?」
「幻覚なんかじゃないよ。幽霊になっちゃったけどね」
ゆうれい?
「海人?」
「うん、俺だよ」
「うっ、うわぁぁぁ〜〜〜っ…!」
この歳に、この瞬間に、15年ぶりに声を上げて泣いた―――
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