中国が終末高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備をめぐり真っ二つに割れる韓国の政治家にインタビューを申し込み、発言の一部だけを抜き出し、世論工作に活用しようとしている。韓国野党の共に民主党、国民の党は中国メディアのインタビューに注意を呼びかけた。
■THAAD反対の野党にインタビュー攻勢
共に民主党の金映豪(キム・ヨンホ)国会議員は先月末、韓国国内の放送局の記者を通じ、中国中央テレビ(CCTV)のインタビューを受けないかという打診を受けた。金議員は同党でTHAAD対策委員会の幹事を務めており、これまでに「THAAD配備に対する中国の報復が現実となれば物価が高騰しかねない」などと発言していた。その後、8月1日にCCTVと人民日報の記者が金議員の事務所を訪れ、インタビューを行い、2日にCCTVが「両国国民の信頼が損ねられることを心配している」という金議員の発言を放送した。
しかし、金議員が本紙の電話取材で語ったところによれば、実際の発言は「両国がいずれも冷静に対応し、中国は反韓感情を起こすべきではない」と語ったものだったが、中国が都合の良い部分だけを放送したことに驚いたという。CCTVは金議員のインタビューと同時に丁世鉉(チョン・セヒョン)元統一部長官(統一相)が「THAAD配備は韓国ではなく、米国の需要と利益に基づいたものだ」と述べた新華社のインタビュー内容も伝えた。人民日報も野党で中国通とされる共に民主党の朴釘(パク・チョン)国会議員に「韓中関係全般に関する意見を聞きたい」とインタビューを申し込んだが、朴議員は応じていない。
国民の党の朱昇鎔(チュ・スンヨン)国会議員も先月末、CCTV記者から「THAADに関するインタビューをしたい」という提案を受けた。THAAD反対を党の統一路線として掲げる同党は7月21日、インターネット上で議員1人当たり30分ずつTHAAD配備に反対意見を述べるイベントを開いた。CCTVは朱議員に「このイベントに関する意見を聞きたい」とインタビューを求めたという。朱議員は4日、本紙の電話取材に対し、「映像というものはどう歪曲(わいきょく)され、編集されるか分からず、外交問題はデリケートだとして、インタビューを断った」と説明した。CCTVは国民の党の別の議員にもインタビューを申し込んだという。
一方、中国はTHAAD配備に賛成した与党セヌリ党にはインタビューを申し込まなかった。セヌリ党所属で国会国防委員長を務める金栄宇(キム・ヨンウ)議員は「韓国の政界がTHAAD反対一色のように報道しようという意図は明らかではないか」と指摘した。