THAADのレーダーは人体に何の影響もなく完全に無害だ。実際にグアムのTHAAD基地で測定された電磁波の強さは、世界保健機関(WHO)が人体に有害と定める基準の0.01%にも満たず、この程度であれば完全な自然状態であると言っても過言ではない。ところがこの明確な事実が星州郡住民には全く通用しない。住民らは住宅価格や特産のまくわうり価格の暴落を恐れている。また星州THAAD配備撤回闘争委員会は朴大統領が配備地の移動に言及した後も「撤回以外は受け入れられない」として一歩も引かない構えだ。星州住民のスローガンは少し前までは「星州でのTHAAD配備反対」だったのが、最近は「韓半島(朝鮮半島)でのTHAAD配備反対」に変わってしまった。
港湾や空港など、韓国軍や米軍が使用する軍事施設を標的とする北朝鮮の中距離弾道ミサイル「ノドン」を防げるのは、今のところTHAADしかない。ところが何の根拠もない電磁波デマのせいで、国の安全保障政策における決定自体が揺らぐのはあってはならないことだ。政府はこれまでの決定を予定通り進めなければならないが、一方でデマの内容が完全に虚偽であることも根気強く伝えていかねばならない。
ただしこの問題をめぐる無用な対立を避けるために、朴大統領がやるべきことがある。今星州では住民の中でも強硬派のグループが反対運動の中心に立っているが、その一方で現状を懸念する住民の声も決して小さくなく、そのため現地の世論は配備反対へと完全に固まっているわけではない。朴大統領は一日でも早く自ら星州に出向き、THAADレーダーに関する真実はもちろん、導入が避けられない国の事情などについて直接説明すれば、現地の世論は少しずつ変わるかもしれない。いずれにしても朴大統領は外から状況を眺めるだけといった印象を持たれてはならない。関係する部処(省庁)も星州住民が恐れる住宅価格や農産物価格の暴落が杞憂(きゆう)にすぎないことを伝え、同時に実質的な効果が見込める支援策を提示すべきだろう。国が直面する安全保障面での厳しい現実から顔を背け、地域住民の利己的な主張に迎合してきた地元選出の議員らがその先頭に立たねばならない。