(水田)あの…やっぱり僕でないと駄目ですか?料理はからきし…。
(花山)いいから原稿どおりに作業を続けなさい。
はい。
「次に泡立てた卵の白身を牛乳と卵黄の入ったボウルに入れ混ぜ合わせます」。
こうかな?
(鞠子)あ〜そうじゃなくて…。
口を出さない!はい。
「そこに小麦粉とふくらし粉を加えて固くなるまでかき混ぜます」。
うわぁ…。
(花山)かき混ぜて早く。
繊細にね繊細に。
・「普段から」・「メイクしない君が」・「薄化粧した朝」・「始まりと終わりの狭間で」・「忘れぬ約束した」・「花束を君に贈ろう」・「愛しい人愛しい人」・「どんな言葉並べても」・「真実にはならないから」・「今日は贈ろう」・「涙色の花束を君に」・「涙色の花束を君に」
(一同)あぁ…。
いや…だから料理は得意じゃないと…。
まあいい。
まずは食べて感想を言おう。
(美子)じゃあ私が切ります。
(常子)お願いします。
固いですね。
すみません。
生焼けじゃないですか?
(水田)すみません。
あぁ…う〜んこれは…。
お世辞にもおいしいとは…。
僕は言われたとおりに作っただけです。
(宗吉)だからよ小麦粉は一度に入れちゃ駄目なんだって。
いやそんな事言われなかったし…。
それに…何だよこりゃ。
カチンカチンじゃねえかよ。
だって固くなるまでかき混ぜるっていうから…。
(宗吉)固すぎなんだよ。
(花山)鞠子さん。
もう分かったね?書いてあるものの受け取り方が人によって違う。
ご名答!「固くなるまで」と書かれていてもその判断は人によって違う。
だが料理記事を読んで100人いたら100人が同じように作れなきゃいけないと思わないか?そうですね。
でもそれは難しいですよね。
今世の中にある雑誌ではどれも料理の作り方は文章だけで表現されている。
しかしそれでは限界がある。
そこで必要となるのが…。
写真ですか?そうか。
最初と最後の写真があれば調理の変化が見えますね。
フフフ惜しかったな。
えっ?写真は2枚では足りない。
何枚も使って調理工程をそのつど見せるんだ。
粉を混ぜる段階。
フライパンに入れる段階。
ひっくり返す段階。
そのつど見せれば読者は分かりやすいじゃないか。
つまり料理の分解写真だ!分解写真…。
なるほど!そんな記事今まで見た事ないです。
ええ。
革命的な記事になりそうね。
そうね。
よし。
早速撮影を始めよう。
(一同)はい。
(シャッター音)よしタネ入れて。
はい。
いきますね。
(シャッター音)
(花山)いいか?
(花山常子)せ〜の。
よし。
焼き加減を見るから指先で真ん中を押さえて。
分かりました。
(シャッター音)よし。
はいいい具合です。
宗吉さん手が止まってますよ。
うん?ああ…。
それにしても何だかすごいな。
花山っていう人。
そうなんです。
ええ。
(君子)じゃあお店で撮影を?
(照代)そうなの。
それはご迷惑おかけしてすみません。
いいのよ。
うちのも楽しんでやってるみたいだし。
私もお店にいるとつい考えちゃうから。
もう一度宗吉さんと話し合ってみてはいかがですか?さんざん話したんだけどうちのは「洋食の店を出す」私は「深川でやっていた仕出し屋にしよう」で譲らないんでね…。
片仮名で「キッチンモリタ」って店にしたいらしいんだけど私はどうしても納得できないのよ。
照代さんの気持ちも分かります。
やっぱり亡くなったお母さんに申し訳なくて…。
でもうちのは「今は洋食がもうかる」の一点張りだから。
数日後写真入りの記事は出来上がり早速試作が行われました
分からない事があったら何でも聞いて下さいね。
(艶子)記事と写真で大体分かるから平気さ。
(弓子)本当とっても分かりやすいわ。
(梢)かき混ぜた小麦粉の固さってこれぐらいかな。
(綾)泡立て器を持ち上げてみて下さい。
あっこの写真みたいになるまで粉を足すみたいです。
じゃあもう少し足した方がよさそうだね。
はい。
(さくら)さあこっちはそろそろ焼き上がるわ。
(弓子)指で押して弾力が出てくるまで焼くみたいよ。
もう少しかしら。
簡単にできるもんだねえ!
(お蝶)本当だねえ。
ちょっと食べようよ。
端っこね。
うん!ふっくらしておいしいです。
(一同)うん!うまく出来るもんだねえ。
うん本当!
(一同)おいしいね。
大成功。
うん。
これで記事は完成ですね。
これで誰が作ってもおいしいホットケーキが作れるだろう。
まだ不安かね?これが最後の「あなたの暮し」になるかもしれませんから…。
(照代)ああ…。
なるほど。
これなら分かりやすいわね。
ああ。
常子たちはすごいもんを作ってると思うぞ。
ええ。
なあ…。
はい。
この店の事なんだがな…。
あいつら見てて気付いたんだ。
そもそも親から受け継いで料理作ってきたのは客にうまいもんを届けたかったからだ。
うまけりゃ洋食和食にこだわる必要はねえと思ってな…。
両方出そうじゃねえか。
両方?うん。
和食洋食何でもござれの「キッチン森田屋」だ。
キッチンモリタヤ?「キッチン」が片仮名で漢字で「森田屋」だ。
どうだ?いいじゃない。
そうか…。
そしていよいよ発売日
常子の不安をよそに分解写真による調理解説は大きな話題となり…
・失礼します!どうぞ。
売れました。
売れてます!昨日までで1万5,000部を超えました。
このままの調子だと次号の制作費も捻出できる計算になります!会社が潰れなくて済むんです!そうか。
次も続けられるんです!花山さんうれしくはないんですか?そんな事で一喜一憂してもなあ…。
ひとまず次号の構想が無駄にならずに済みそうだから喜んではおくか。
(三枝子)はいどうぞ。
(茜)頂きます。
おいしい。
(三枝子)じゃあお母さんも一口。
うん本当においしい。
お父さんありがとう。
ホットケーキ考えてくれて。
フフフ…ああまあな。
うそはいけません。
思いついたのはあなたじゃないでしょ。
う〜ん…。
常子さんによろしく言っておくよ。
茜。
へっ?食べなさい。
(水田)お待たせしました。
いえ…こちらこそお呼び立てしてしまって。
おでん屋…ですか?よっちゃんに教えてもらったんです。
「最後の晩餐」ですね。
えっ?いいんです。
僕なんかに気を遣って頂かなくても。
おっしゃってる事がよく…。
僕と話す事などもうないでしょう。
先日交際を迫った事で2人の関係は壊れてしまいました。
それ以来ずっと…。
先日のその申し出の事ですが正式にお受けしたいと思って…。
はぁ…ですよね。
え〜っ!?そ…それって…おつきあいして頂けるという事でしょうか?何度も言わせないで下さい。
だって…もう嫌われてしまったのかと。
お断りした時言いましたよね?「今は社内がこんな時ですから」って。
それは建て前で本音は嫌っているのだと…。
どこまで悲観的な方なんですか。
あの告白以来鞠子さんは僕を避けてしゃべらないようになっていきました。
それはだって…。
意識してしまって…。
私器用じゃないんです。
では…本当に僕と?あぁ…。
アハハハハハハ!おやっさん!おでん山盛りで!はいよ!じゃああの…か…乾杯。
乾杯。
どうですか?うんうん。
おいしい。
こうして大きな苦難を乗り越えた「あなたの暮し」は新たな読者の獲得に成功し主婦の強い味方として受け入れられていきました
もう一枚食べたい。
2016/08/05(金) 12:45〜13:00
NHK総合1・神戸
連続テレビ小説 とと姉ちゃん(107)「常子、ホットケーキをつくる」[解][字][デ][再]
花山(唐沢寿明)が再び『あなたの暮し出版』に戻ってきた。書きかけの原稿を見て、花山は誰もが同じものを作れるように、写真を使って説明する画期的な方法を提案する。
詳細情報
番組内容
谷(山口智充)と美子(杉咲花)の尽力もあって、花山(唐沢寿明)が再び『あなたの暮し出版』に戻ってきた。常子(高畑充希)たちの書きかけの原稿を見て、花山は料理の経験のない水田(伊藤淳史)に原稿通りにホットケーキを作るように指示する。すると、細かいニュアンスが伝わらず、失敗してしまう。誰でも同じものが作れるように、花山は写真を使うことを提案する。それは料理の作業を分解して説明する画期的な方法だった…。
出演者
【出演】高畑充希,相楽樹,杉咲花,木村多江,ピエール瀧,平岩紙,奥貫薫,佐藤仁美,阿部純子,伊藤淳史,唐沢寿明,【語り】檀ふみ
原作・脚本
【作】西田征史
音楽
【音楽】遠藤浩二
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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日本語(解説)
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