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原爆の日 被爆地の発信強めよう

 広島はきょう、長崎は9日に「原爆の日」を迎える。原爆を投下した米国の現職大統領が初めて被爆地を訪問した節目の年である。広島、長崎からの発信を強め、「核なき世界」の国際世論を形づくる新たな出発点としたい。

     オバマ米大統領は5月、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)出席後に広島入りし「核保有国は核兵器のない世界を追求する勇気を持たなければならない」と演説した。広島平和宣言はこの文言を引用する。「ノーモア・ヒバクシャ」の思いを受け止めたメッセージと評価したからだ。長崎平和宣言も広島訪問の意義に触れ、広島の宣言と同様、各国首脳に被爆地訪問を呼びかける。

     被爆者の願う「核なき世界」への道のりは、被爆の実相を知ることから始まる。世界の政治指導者は、被爆地を訪れてメッセージを発信してほしい。それによって、核廃絶に向かう政治の流れを生み出したい。

     オバマ氏の訪問を歓迎しつつも、原爆使用の責任を認める発言や謝罪の言葉を聞きたかった被爆者もいる。直接面会した日本原水爆被害者団体協議会代表委員の坪井直(すなお)さんは「米国を憎む気持ちはあるが、理性で乗り越えなければ」と話した。

     オバマ氏の訪問を真に意義あるものにするため、被爆地の実情や思いを海外に積極的に発信する努力が一層必要だ。日本政府も外交の場を通じて各国に働きかけてほしい。

     原爆投下から71年がたち、被爆者の平均年齢は80歳を超えた。NHKの昨年の世論調査で、広島、長崎の原爆投下の日付を正しく答えられた人は全国で約3割しかいなかった。被爆体験を継承できるよう被爆2世や原爆を知らない世代と連携した取り組みが急がれる。

     オバマ氏は2009年のプラハ演説で「核兵器のない世界」を掲げたが、米露の関係悪化で核軍縮は停滞し、北朝鮮の核実験は4回を数える。残り任期が短くなる中でオバマ氏は、来月にも核実験全面禁止を求める決議案を国連安全保障理事会に提出する可能性があるという。

     しかし、米国は30年間に1兆ドルを投じて核兵器を更新する予定で、大統領選では共和党候補のトランプ氏は日韓の核武装を認める発言をした。「オバマ後」の核を巡る国際情勢は混迷を深めるかもしれない。

     一方で、非核保有国を中心に核兵器禁止条約制定の動きが出てきた。国連の作業部会に参加している日本は、不参加の核保有国との橋渡し役を務めるべきだ。

     日本は唯一の被爆国である。米国の「核の傘」の下にあるとはいえ、国際世論を核廃絶に近づける努力がこれまで以上に求められる。

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