ジブリ鈴木敏夫が語る『シン・ゴジラ』〜あれから五年、庵野秀明の3.11.

2016.08.05 17:45

2016年7月29日、映画『シン・ゴジラ』 が上映開始された。脚本・編集・総監督は『エヴァンゲリオン』の庵野秀明だ。公開から一週間も立たずに映画館に二度見に行くリピーターが現れるなど『シン・ゴジラ』の評価は高い。ジブリの鈴木敏夫氏も絶賛する一人だ。鈴木氏にその魅力を伺った。

-- 鈴木敏夫さんは『シン・ゴジラ』の何処に魅力を感じていらっしゃいますか?

鈴木:
それは映画を見れば一目瞭然で。

「あれから五年、庵野秀明の3.11.」この一言に尽きます。

庵野秀明が3.11.以降のこの五年間に勉強したことを、全部つぎ込んでいるのが、『シン・ゴジラ』だと僕は受け止めています。

映画の構造もエヴァと基本同じなんですよね。ゴジラが"使徒"で、政府が"ネルフ"で。石原さとみの役は葛城ミサトで、主人公が瓦礫の前で祈っているシーンなどはまさに、です。

そしてこの映画の魅力は、ゴジラを題材に"現在"を描いているところにもあります。ゴジラの口に凝固剤を入れるところなどは、露骨に原発を想起させられました。

僕は彼の作品を全部見ているとは言えないけど、この映画は庵野秀明の最高傑作だと思います。

-- 庵野監督が『シン・ゴジラ』を作り上げる上でベースとなったものは何でしょうか?

鈴木:
我々の仲間で数回、被災地に行ったことがあるんです。宮崎(駿)も行ったし、庵野も一緒に行きました。 その際に、庵野は瓦礫の山を写真やビデオで全部撮っていたんですよね。

その時の僕は、それら写真やビデオはエヴァのための資料映像で、いつか映画という形で世の中に出すんだろうなぁ、と思っていたのですが、それが実は、エヴァではなく、今回の『シン・ゴジラ』に活かされていて。そう来たか、と。

なので、最初に言った通り、この映画は
「あれから五年、庵野秀明の3.11.」なんですよ。

みんながこの映画をどのように受け止めているのかも気になりますが、僕にはそれ以上でもそれ以下でも無いんです。
見ていただくとおわかりの通り、ゴジラを原発の事故や津波の象徴として扱っているでしょう?そして、3.11.の津波が首都を襲ったらどうなるか?というストーリーなんです。

これは、庵野が現代と真剣に向き合って作り上げた映画です。

-- 『シン・ゴジラ』に関するエピソードがあれば教えてください。

鈴木:
ひとつだけエピソードをお話しましょう。

今回の登場人物の名前(ファーストネーム)は全部庵野さんの奥さん(安野モヨコ氏)のマンガの登場人物から取っているんですよ。主人公の長谷川博己が演じた"矢口蘭堂"のファーストネーム"らんどう"も奥さんのマンガに登場する名前なのですが、漢字がマンガとは違うんですよね。で、なんでかなぁ、と思っていたら、僕の孫の名前を使ってくれていたんですよね。2回ほど劇中にも出てくるので、僕も「あっ」と思って。それで映画を見終わった後に庵野に聞いてみたら、「鈴木さんが喜んでくれると思って」ってね。

以上でエピソードは終わりです。

-- 素敵なエピソードまで披露してくださり、ありがとうございました。

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一人の男が真剣に現在の日本に向き合い、そして映画作品として世の中に問いている『シン・ゴジラ』。その真剣さを我々一人一人が劇場に足を運び、受け止めるべきではないか?鈴木氏の言葉の端々からからそのような強く熱い想いが伝わった。筆者が受け取った熱い想いを読者にも伝えられれば幸いである。

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ライター:西村真里子

SENSORS.jp 編集長
国際基督教大学(ICU)卒。IBMでエンジニア、Adobeにてマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブカンパニー(株)バスキュールにてプロデューサー従事後、2014年に株式会社HEART CATCH設立。 テクノロジー×クリエイティブ×マーケティングを強みにプロデュース業や執筆活動を行う。スタートアップ向けのデザイン&マーケティングアクセラレーションプログラム「HEART CATCH 2015」総合プロデューサー。 http://events.heartcatch.me/

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