6人全員の賠償認定 鹿児島県警捜査「違法」
2003年の鹿児島県議選を巡り被告全員の無罪が確定した公職選挙法違反事件(志布志<しぶし>事件)で違法な取り調べを受けたとして、起訴されなかった住民が県に損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁宮崎支部(西川知一郎裁判長)は5日、控訴した6人全員の訴えの一部を認め、県に計595万円の賠償を命じる判決を言い渡した。
西川裁判長は県警の取り調べについて「大声で怒鳴りながら机をたたき乱暴な口調で非難して厳しく詰問したりするなど、社会通念上相当と認められる限度を逸脱している」と違法性を認定。1審で訴えの一部が認められた女性2人の賠償額を約3倍の各115万円に増額し、1審で訴えを退けられた4人についても105万〜60万円の支払いを県に命じた。
1審では、任意捜査や逮捕の末、起訴されなかった住民7人が、長時間にわたるなど県警の強引な取り調べで心身に苦痛を受けたとして、県に計2310万円の損害賠償を請求。鹿児島地裁は昨年5月、うち3人について「容疑が十分でない逮捕や限度を超えた取り調べがあった」として訴えの一部を認め、県に計184万円の支払いを命じた。だが、他の4人については、取り調べ状況について「証言が変わったり、不自然だったりする」などとして訴えを退けた。
この4人を含む6人が1審判決を不服として控訴。「1審判決は任意捜査の限界を超えた違法な自白強要を是認した」と主張し、県側は「捜査は適正に行われた」と反論していた。
志布志事件で起訴された13人全員(うち2人は死亡)については本人や遺族の賠償請求に対し、鹿児島地裁が総額5980万円の支払いを命じた判決が確定している。【田中韻、宮原健太】