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イギリス、景気後退阻止へ「例外的」緩和策
EU離脱の影響考慮、政策総動員

2016/8/4 23:19
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 【ロンドン=小滝麻理子】英中央銀行イングランド銀行は7年5カ月ぶりの利下げや量的緩和の再開など大規模な金融緩和を決め、金融政策を総動員して欧州連合(EU)からの離脱決定に伴う景気後退を阻止する姿勢を鮮明にした。カーニー総裁は4日、金融政策で「経済を下支えする」と強調したが、先行きの不透明感を拭うため、英政府が「離脱後」の姿を明示することが重要だとの認識を示した。

4日、利下げについて説明するイングランド銀行のカーニー総裁(ロンドン)=AP
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4日、利下げについて説明するイングランド銀行のカーニー総裁(ロンドン)=AP

 記者会見したカーニー総裁は一連の緩和策を「例外的」と語り、EU離脱決定を受けた特別な措置だと強調した。ハモンド財務相は決定を受けて「英経済の調整局面を金融政策が支えるのは正しい判断だ」と歓迎した。

 前回7月の政策委員会では投票権を持つ9人の委員のうち利下げを支持したのは1人だけ。その後、英国内で景況感の悪化を示す統計が相次いで発表され、今回は全会一致で利下げを決めた。カーニー総裁は状況に応じて今後、一段の利下げもあり得ると明言した。

 英中銀が「パッケージ」と表現するように、利下げだけでなく、あらゆる緩和策を盛った。2012年以降、新規購入をやめていた国債の買い入れを再開。今後6カ月かけて市場で国債600億ポンドを購入する。このほか英経済への貢献が大きい企業を中心にポンド建ての社債を100億ポンドまで購入することも決めた。

 銀行への資金供給も拡大する。中央銀行から約4年間、低利で資金供給を受けられる新たな制度で、最大1000億ポンドを供給する見通し。銀行の融資拡大を促し、利下げの恩恵が企業や個人にも行き渡るようにする。

 マイナス金利の導入の可能性について、カーニー総裁は「あまり好きではない」と話し、改めて慎重な姿勢を示した。

 同日発表した四半期の経済見通しでは、16年の景気後退は避けられるものの、17年の成長率を従来予想の2.3%から0.8%へと大きく下げた。国債購入の再開の判断を巡っては、3人の委員が反対するなど意見も割れたが、カーニー総裁は「一連の緩和策を導入しなければ、英経済の成長率はさらに下がるはずだ」と話し、金融政策の下支え効果を強調した。

 経済見通しでは失業率の上昇や住宅投資の冷え込みなどが生じる可能性も指摘。経済が停滞するなかで、ポンド安とともに物価上昇率が高まるリスクにも言及した。

 一方で、カーニー総裁は「EU離脱に伴う全ての悪影響を金融政策だけで吸収することはできない」とくぎを刺した。EUとの離脱交渉に向けて不確実性が一定期間続くことは避けられないとしつつも「生産性の向上を含め、英経済の長期の成長プランを政府が示すことが重要だ」と語った。

 ノルデア銀行のエコノミスト、ヤコブセン氏は「英経済の不透明感はなお強く、英中銀が早晩、一段の利下げを迫られる可能性は高い」と指摘する。金融政策で時間を稼ぐ間に、離脱交渉の開始時期や離脱後のEUとの関係について、政府が早急に具体像を示すべきだとの声が高まっている。

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