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【社説】

北ミサイル発射 制裁の包囲網より強く

 北朝鮮が発射したミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。事前に発射の動きを察知できず、脅威はさらに高まった。日本政府は米韓とともに、監視体制を見直す必要がある。

 日本のほぼ全域を射程に入れる中距離弾道ミサイル「ノドン」と推定され、弾頭部分が秋田県・男鹿半島西の日本海に落下した。付近には漁場もあり、予告なしの発射は危険極まりない。

 移動式発射台を使ったとみられ、事前の察知が難しく、政府は自衛隊による迎撃を可能にする「破壊措置命令」を出さなかった。六月下旬の中距離弾道ミサイル「ムスダン」発射では、日米韓が兆候をつかみ前日には追尾、迎撃態勢を整えたが、今回は苦い教訓を残したと言えよう。

 金正恩体制下の約四年間で、飛距離や軌道、発射方式が異なる計三十三発のミサイルを発射した。核実験も二度強行した。七月末にラオスで開かれたASEAN地域フォーラム(ARF)に出席した李容浩外相は、自国の主張を正当化し、対話に向けて譲歩する姿勢を見せなかった。

 米韓両国も対話より圧力を重視しており、いまは外交による解決の展望が開けない。各国は国連安全保障理事会の決議に従い、北朝鮮への制裁を着実に実行することが当面の課題である。

 最大の輸出産品である石炭について中国が輸入を制限するなど、中朝貿易は減少している。北朝鮮は外貨獲得のため海外に労働力を派遣しているが、東南アジアや中東の一部の国が労働者受け入れ条件を厳しくしたり、不正送金の監視を強めている。

 国際社会は制裁による包囲網を一層強めて、北朝鮮に対して軍拡路線を続ける限り経済発展は望めず、むしろ体制が不安定になると警告すべきだ。

 北朝鮮が強硬姿勢を崩さない背景には、東アジアの安全保障をめぐる米韓と中国との確執がある。

 米韓は北朝鮮に対抗し、高高度防衛ミサイル(THAAD)を韓国南部に配備すると決めた。だがTHAADが持つレーダーが中国の一部まで探知するため、中国は軍事情報が漏れると反発し、配備見直しを求めている。

 関係国の利害対立が深まれば、政策の足並みが乱れる。いま東アジアの最大の危機は、北朝鮮の核・ミサイル開発だ。日米韓は中国、さらにロシアに対しても、北朝鮮の暴走を止めるよう働きかけたい。

 

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