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不明者賠償、東電拒否…双葉病院の認知症女性

東京地裁10日判決

 東京電力福島第1原発に近い双葉病院(福島県大熊町)に入院中に原発事故に遭い、行方不明になった認知症の女性の親族から損害賠償を請求された東電が、東京地裁の裁判で賠償責任を否定して争っている。患者が死亡したケースでは大筋で責任を認めているが、女性については「事故と行方不明の因果関係は認められない」と主張。今も女性が見つからないことに胸を痛める親族は「事故がなければ行方不明にならなかった」と訴える。判決は10日。【伊藤直孝】

     訴状などによると、行方不明になっているのは福島県小高町(現南相馬市)出身で事故当時88歳だった女性。認知症と診断され2006年に双葉病院に入院した。11年3月11日の事故後、入院患者は16日までに避難、救助されたが、女性の姿はなかった。4月に一時立ち入りができるようになり、院内で4人が死亡しているのが確認されたが、女性は見つからなかった。

     親族の申し立てを受けた福島家裁相馬支部は13年9月、「震災後に一人で病院の外に出てほぼ無人状態になった地域を歩き回り、死亡の原因となる危難に遭遇した」と認定して失踪を宣告。法律上は死亡したとみなされた。親族は14年2月に東電に4400万円の賠償を求めて提訴した。

     裁判で東電側は、震災後の停電で女性がいた病棟の電子錠が開いたとし、「女性は震災が原因で病院の外に出たとみられる」と主張、事故との因果関係を否定している。これに対し原告代理人の新開文雄弁護士は「事故のために大熊町は無人になり捜索できない状態が続いた。事故と行方不明は関係ないとは言えない」と反論する。

     新開弁護士は事故後に亡くなった同病院の患者の遺族らが東電を訴えた裁判を他にも6件担当しているが、東電はこの6件では賠償額を争っているものの、因果関係は大筋で認めているという。

     原告の一人で埼玉県に住むめい(71)によると、女性は若い頃に上京して東京・西新井で洋裁業を営み、20年ほど前に帰郷した。認知症の症状が進んで入院したが、事故当時も体調は良かったという。めいは「今も見つからないのはかわいそう。東電の主張は納得できない」と話している。

    双葉病院の避難問題

     政府は福島第1原発事故翌日の2011年3月12日早朝、原発半径10キロ圏内に避難指示を出した。南西約4・5キロにある双葉病院の入院患者約340人と、隣接する系列の老人保健施設「ドーヴィル双葉」の98人は12〜16日に3ルートに分かれ、いわき市などに避難したが、長時間の移動で体調を崩す人が続出し、3月末までに50人が死亡した。避難や救助が遅れた原因について、政府の事故調査委員会は12年の最終報告で関係機関の連携不足、情報共有不足を挙げた。

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