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トヨタ、北米苦戦 人気車の生産力不足が壁

2016/8/5 1:05
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 トヨタ自動車の今後の業績回復のカギは北米市場での巻き返しだ。人気車種の生産能力不足がネックとなってガソリン安・低金利の追い風に乗り損ね、2016年4~6月期は販売台数が落ち込んだ。北米は全社の利益の約4割を稼ぐとされる収益源で、そこでのテコ入れが将来の利益成長を左右する。

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 「RAV4の人気は本当にすごい。在庫を見れば分かると思うよ」。米サンフランシスコ郊外にあるトヨタ販売店の担当者が説明する。米国で最も人気が高いセダン「カムリ」の在庫は、この店で97台。これに対し多目的スポーツ車(SUV)のRAV4は23台しかなく、同車の引き合いの強さがうかがえる。

 米国の新車販売は15年に過去最高を更新し、「今年も前年並みの1750万台になる」(トヨタの大竹哲也常務役員)。なのにトヨタの4~6月期の北米販売台数は前年同期比2%減の71万5000台にとどまった。SUV「ローグ(日本名エクストレイル)」が好調の日産自動車が9%増、ホンダが3%増になったのとは対照的だ。

決算発表するトヨタ自動車の大竹常務役員(4日、東京都文京区) 
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決算発表するトヨタ自動車の大竹常務役員(4日、東京都文京区) 

 通勤で日常的に自動車を使うことが多い米国では、ガソリン価格と売れ筋の車種が密接に連動する。ガソリンが安くなるとSUVやピックアップトラックなどの販売が伸び、トヨタでも米国販売に占めるSUV・ピックアップトラックの比率が昨年11月に5割を突破した。今年7月もRAV4などが2ケタ増だ。

 大型車は利幅が大きく、自動車会社の利益を押し上げる。例えば米ゼネラル・モーターズ(GM)は4~6月期の連結純利益が前年同期比2.6倍の28億6600万ドル(約2895億円)に拡大した。

 だがトヨタはこうした車種の生産能力が逼迫し、需要の強さに供給が追い付かない。消費者の目がSUVなどに向いたあおりもあって、モデル末期が近いカムリ、全面改良したハイブリッド車(HV)「プリウス」が販売減に苦しんでいる。

 トヨタはピックアップトラックを生産するテキサス工場で土曜日の操業を始め、メキシコの工場でも年数万台規模を増産するため設備の一部を増強した。日本からの輸出増にも取り組み、RAV4などの16年の国内生産を当初計画より積み増す方針を部品メーカーに伝達した。

 だが対策に限界もある。ここ数年、生産能力増強のための投資を抑え、既存工場の稼働率向上を優先した。前期までの連続増益の一因になったが、ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹氏は「売れ筋の増産余地が乏しく、シェア低下を招きかねない」と指摘する。北米の生産体制の本格見直しは、19年のメキシコ新工場の稼働まで待たなければならない。

 10年から拡大を続けてきた米新車市場には変調の兆しが出ている。7月の米新車販売は前年同月比0.7%増と急減速。業界ではシェア維持のために販売奨励金を積み増す傾向が強まり、「トヨタでも若干増加している」(大竹常務役員)。生産・販売の維持と採算性の確保という難しいかじ取りを迫られている。

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