日本の安倍晋三首相が3日断行した内閣改造は、旧日本軍の戦争責任や慰安婦の強制動員を否定する極右の人物を防衛相や文部科学相に起用するなど、右派色を一層強めるものとなった。
安倍首相はこの日、自らの側近中の側近で、「安倍首相の女性版」とも評される稲田朋美・前自民党政調会長(57)を防衛相に任命した。稲田氏は第2次大戦後、日本の戦犯を断罪した極東国際軍事裁判(東京裁判)の検証を主張するなど、日本の戦争責任について歴史修正主義的な考えを示してきた。また「南京大虐殺は虚構だ」「慰安婦は当時としては合法だった」などといった発言で論議を呼んできた。弁護士出身の稲田氏は、安倍首相にスカウトされて政界入りし、2005年の衆議院議員総選挙で初当選した後、これまで4回当選した。安倍首相は2012年末の第2次内閣発足時、稲田氏を行政改革担当相に任命し、14年には自民党政調会長に起用するなど、自らの後継候補、初の女性首相候補として重用してきた。
稲田氏は3日、首相官邸で記者たちの質問に応じ、今月15日の「終戦記念日」に靖国神社へ参拝するかどうかとの質問に対しては「この問題は心の問題であって、行くか行かないかとか、行くべきだとか行くべきでないとか、そういうことを言うべきではないと思っている」と即答を避けた。稲田氏は行政改革担当相時代を含め、国会議員になって以来、毎年靖国神社に参拝している。
文部科学相に起用された松野博一氏は「妄言製造機」とされる政治家だ。米国の新聞で、慰安婦の強制性を否定する広告に賛同したほか、教科書検定についても「日本帝国主義による侵略という部分についての記述を削減すべきだ」と主張してきた。旧日本軍による慰安婦制度の強制性を認めた「河野談話」や、日本の植民地支配、侵略戦争を反省し謝罪した「村山談話」についても「修正すべきだ」との考えを示してきた。
安倍首相が周辺国から最も強い批判を受けている安全保障や教育の分野を、右派の側近に任せたことで、今後自衛隊の役割や慰安婦問題、歴史認識問題について、日本政府が強硬な対応を取ることが予想される。
内閣の構成が、安倍首相の任期延長を念頭に置いたものだという見方も出ている。安倍首相は、自らの自民党総裁としての任期延長を支持してきた二階俊博前総務会長を、資金の配分の責任者となる幹事長に任命した。将来の首相候補に対する教育のためのポストである防衛相に、側近の稲田氏を起用したことも、党内の「ポスト安倍」候補者たちに防衛相を任せない意思の表れとの見方が出ている。安倍首相の任期は、自民党総裁の3選を禁じる党規により、2018年9月までとなっているが、内閣を自らの側近で埋めることにより党規の改正を実現すれば、21年まで9年連続で政権を担うことが可能になる。
憲法改正に向けた歩みも加速するとみられる。今回の内閣改造では、連立政権を組む公明党所属の石井啓一国土交通相を除く18人全員が憲法改正に賛成の立場の人物となった。その大部分が、憲法改正を求める右派の政治団体「日本会議」に所属している。