こんなの百貨店じゃない
神戸大学大学院経営学研究科准教授の保田隆明氏がこう分析する。
「百貨店にしてみれば、これまで日本人向けに売ろうと努力をしてきたけれど、ずっと売り上げが伸びなかった。しかし、中国人が買ってくれるようになったので、中国人向けにシフトしただけのこと。それ自体は経営として間違っていません。
ただ、日本人にしてみれば、昔から百貨店は特別感のあるところで、『ハレの日』に楽しい時間を過ごすというイメージがありました。特別な場所が中国人向けの接客で溢れると、自分の来る場所ではないという感情を持つ人もいるでしょう」
横山毅さん(仮名、42歳・会社員)は実際にそう感じたひとりだ。ある休日の午後、銀座の百貨店内にある高級ブランドショップを訪れた時だった。長年使っているバッグの修理がしたくて店員に声をかけたところ、中国語訛りの日本語で、
「2階で、聞いてくださーい」
と軽くあしらわれてしまったのだ。自分で勝手に担当を探しにいけ、ということか。これまでには考えられない対応だった。横山さんが不快感を露にする。
「以前であれば、ちゃんと修理を担当する店員のところへ連れて行ってくれたはずです。それが当然だと思っていたのですが、中国人観光客が大量に出入りするようになってから、どうもサービスの質が落ちたようです。
店員に『大切にされる』感覚が好きで、その店を愛用してきましたが、愛着が一気に冷めました。わざわざ銀座まで出かけようとは思わなくなりましたね」
百貨店と並んで、「爆買い」の対象だった家電量販店も苦境に喘ぐ。ヤマダ電機が新橋駅前に出店した免税店「LABI アメニティー&TAX FREE」は5月にひっそりと閉店し、コンピュータ専門店にリニューアルされた。
「家電量販店での爆買いといえば、高級炊飯器と温水洗浄便座でしたが、後者はまったく売れなくなりました。ヤマダ電機が新橋の免税店を1年で閉店したのも、まさにインバウンドの鈍化が予想以上に大きいことを表しています。
ヤマダ電機の山田昇会長が『インバウンドは経営の核にならない』と言っていますが、これは多くの経営者に共通する危機感でしょう」(家電量販店関係者)
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