[リオデジャネイロ 1日 ロイター] - 5日にブラジルのリオデジャネイロでオリンピックが開幕する。ブラジル政府は、オリンピック開催地に立候補した時、リオ市内の大気環境は世界保健機関(WHO)の基準値内で、問題はないとアピールしていた。だが、これは真実ではなかった。同国が開催地の権利を勝ち取った2009年も、そして今も、この基準値はまったく満たされていない。
リオ市内の大気汚染はかなり深刻で、競技選手のパフォーマンスに影響が及ぶとの研究結果も出ている。さらに、リオでは大気汚染が引き起こす呼吸器官系の疾病などで死亡する人の数が毎年数千人に達しているという推計値もある。
WHOは、粒子状物質「PM10」について、大気1立方メートル当たり年平均20マイクログラムの環境基準値を設けているが、ブラジル政府の環境保護局(INEA)データによると、2010年から2014年までの間、リオ市内のPM10の年間平均値は52マイクログラムだった。
サンパウロ大学の病理学者であるパウロ・サルディバ氏は、リオ市内の大気は「オリンピック開催に適した状態でないことは明らかだ」と述べ、PM10による大気汚染が健康に与える被害は、他の汚染物質よりも深刻だと指摘する。同氏は、WHOが2006年に大気環境基準値を厳格化した時、基準値設置委員会のメンバーの1人だった。
一方、ブラジルのオリンピック組織委員会のタニア・ブラガ氏は、大気の状態はPMのデータだけで判断できないと主張。リオ市内の大気中の二酸化窒素や二酸化硫黄など他の汚染物質は、WHOの基準値の範囲内にあると述べている。
サルディバ氏がWHOの手法で分析したところによると、リオ市内では2014年に大気汚染が原因で約5400人が死亡したと推計される。これは、犯罪が多いことで知られる同市の2015年殺人死亡件数(3117人)を上回っている。
また、マサチューセッツ大学アマースト校のジェイミー・ムリンズ資源経済学教授が約65万6000人のトラック競技選手を対象に8年にわたり行った調査では、PM10がWHO基準値を10ユニット上回るごとに競技選手の能力は0.2%低下するとの結果が出ている。