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「リオ」契機に活気再び 群馬・大泉のブラジル人街

 

2016/7/30付 日本経済新聞 地域経済

大泉まつりにはサンバダンサーが登場し、盛り上がった(7月24日)

 5日開幕のリオデジャネイロ五輪を控え、日本有数の日系ブラジル人コミュニティーがある群馬県大泉町が注目を集めている。さまざまな応援イベントが行われるほか、大泉を訪れるツアーも人気だ。そんな中、外国人の子どもの学習支援など、多文化共生に向けた取り組みも広がっている。

 5日開幕のリオデジャネイロ五輪を控え、日本有数の日系ブラジル人コミュニティーがある群馬県大泉町が注目を集めている。さまざまな応援イベントが行われるほか、大泉を訪れるツアーも人気だ。そんな中、外国人の子どもの学習支援など、多文化共生に向けた取り組みも広がっている。

 「本当にブラジルに行くには30時間。でもここなら東京から日帰りできる」。大泉町でブラジル料理店「ロデイオグリル」を経営する宮崎マルコアントニオさんは話す。

 地元でも人気の店だがリオ五輪を機に増えているのは、手軽にブラジルの雰囲気を楽しみたいという都内からのツアー客だ。東武鉄道系の東武トップツアーズは近く、この店でのシュラスコ食べ放題や、南米系の食品や雑貨がそろう「スーパータカラ」での買い物を盛り込んだ東京発の日帰りツアーを実施。このほか、秋にかけて別の大手バス会社によるツアーも予定されている。

 地域活性化を目指す任意団体の「CoCoRoGaKuEnプロジェクト」は開会式直後の8月6日、東武鉄道西小泉駅近くで「ブラジル・ジャパンぐるめフェスティバル」を開く。

 地元に冷凍食品工場を持つ味の素グループが500食分のギョーザを無料提供するほか、日系ブラジル人と日本人で構成するご当地アイドル「BJハート」などのステージも実施する。「五輪を機に大泉を元気にしたい」(プロジェクト代表の山口将さん)

 7月23~24日に大泉町中心部で開いた毎年恒例の「大泉まつり」では、特設会場にサンバチームが登場。ダンサーと記念写真を撮ったり、一緒にサンバを踊ったりする人も出た。

 「大泉まつり」はおみこしや山車も登場する夏祭り。1990年代は日系ブラジル人らによるサンバパレードを行っていたこともあるが騒音問題などを理由に中止になっており、大規模に行われるのは久しぶりという。

■多文化共生へNPO法人などの取り組み広がる

 料理店を経営する宮崎マルコアントニオさんは、外国人の子どもたちを支援するNPO法人「NO BORDERS」の代表という顔も持つ。「周囲とコミュニケーションが取れなかったり勉強がわからなくなったりして引きこもってしまう例もある」(宮崎さん)現状を変えようと、今年春に活動を開始した。

  • 放課後の子どもたちの居場所にもなる(大泉町のNPO法人、NO BORDERS)
 日本語とポルトガル語ができるスタッフが、合計30人の子どもたちの宿題の手助けをする。働く母親の負担を減らそうと、夕食も提供する。

 隣接する太田市でデザイン事務所を経営する平野勇パウロさんは、妻のルシエネさんとポルトガル語教室を開いている。

 個人レッスンが中心で、生徒数は現在約50人。「顧客からポルトガル語を習えるところはないかと聞かれた」(パウロさん)のがきっかけだ。生徒には医療関係者や商店主など、仕事を通じポルトガル語の必要性を感じた人が多いという。

 群馬県東部では、ポルトガル語の表示を併記した施設も多い。多文化共生のモデルケースへ、模索は続く。

■入管法緩和で街の人口1割ブラジル人に

 電機メーカーや自動車メーカーが工場を構える大泉町など群馬県東部に日系ブラジル人が多いのは、不足する労働力を補おうと1990年に入国管理法が緩和され、労働ビザが取得しやすくなったのがきっかけだ。

 4万人あまりの大泉町民のうち、ブラジル人は6月末現在で4032人。およそ10人に1人がブラジル人だ。リーマン・ショックや東日本大震災後の不景気で一時は減少したものの、最近再び増加傾向にある。

 日系ブラジル人が経営する店が多い「ブラジルタウン」は東武鉄道西小泉駅周辺に広がる。衣料品店には鮮やかな色合いの水着が飾られ、スーパーの食品売り場では牛肉がブロックで売られている。休日になると、埼玉や栃木からも日系ブラジル人が集まるという。

 大泉町に観光協会ができたのは10年ほど前。「企業城下町として栄えた大泉町だが、製造業の不振を受け『ブラジルの街』を観光資源にできないかと考えた」(大泉町商工会の宮地克徳理事)のがきっかけだ。

 「生活習慣の違いなどから、ブラジル人と日本人のあつれきもあった」(宮地さん)が、ブラジル人の店舗経営者も日本人客獲得の必要性を認識するようになり、受け入れ体制が整いつつある。一方で「回転すし」や「焼肉店」に行くブラジル人も増えたという。

(前橋支局長 塚本直樹)

[日本経済新聞朝刊2016年7月30日付]

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