読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

毒のある絵画

f:id:artosouken:20160804102024j:plain

こんにちは、arto総研のToshiroです。いつもお読みいただきありがとうございます。今回は「毒のある絵画」というテーマで書いてみます。

 何を表現するか

絵画(絵画に関係なくあらゆる表現に言えることですが)が素晴らしいのは、絵画そのものに価値があるからではありません。「絵」という表現を通して伝えられる内容に価値があると思われるからです。

つまり、作品の前提には作者の信念や思想があり、それを形にしたものが作品であるということです(これを逆手にとって思想を排除し、形を追求する芸術もあります)。

技術はあっても思想がない、となると形式的に綺麗なものが出来上がります。そこに思想はありません。綺麗は綺麗なんだけど、まとまっているんだけど、どこか面白味にかける、そんな作品が出来上がります。

漫画家の手塚治虫先生が非常に良いことを言っているので引用しておきます。

君たち、漫画から漫画の勉強するのはやめなさい。一流の映画をみろ、一流の音楽を聞け、一流の芝居を見ろ、一流の本を読め。そして、それから自分の世界を作れ。

漫画から漫画を描くための勉強をすると、形式的に綺麗な漫画は描けますが、それが必ずしも面白いとは言えません。つまり漫画というのはあらゆる表現手段の1つに過ぎず、漫画という形式を通して何を伝えるのか、というのが重要となります。漫画そのものが面白いわけではありません。

作品ではわかりにくいので身近な例で考えてみましょう。友達の家に初めて行った時、その部屋がホテル並みに整っていると「綺麗な部屋だなぁ」と感心はしますが、どこか面白味に欠けませんか?ある程度の生活感があった方が、その人の個性という部分を見ることが出来て面白いと感じる人は多いと思います。

このように人間の考え方が現れるから面白いし、何か感じるものがあるのです。絵も同じです。絵そのものが崇高であるわけではありません。絵が何を伝えようとしているのかが重要です。

そしてその「伝えたいもの」がしばしば毒として表現されます。毒は汚く、見たくないものであることが多いのですが、その毒を直視した時、カタルシスという「救い」を得ることが出来るかもしれません。

作品紹介

『古靴』

f:id:artosouken:20160804113253j:plain

こちらは誰もが知る画家、ゴッホの作品です。描かれているのは非常に汚いボロボロになった靴です。この絵の解釈は様々な議論があるのですが、その1つをここでは紹介します。このボロボロの靴の持ち主はおそらく農民によるものです。この汚い靴を見ていると、農民が朝から晩まで汗を流して働いている姿が目に浮かびます。この汚さが、農民の生活の苦労を表現しているのです。そう思うと、何か共感する部分がありますね。綺麗なものが必ずしも美しいわけではありません。よく言われることですが、綺麗=美しいではないのです。綺麗と美しいは全くの別物なのです。

『刑務所の中庭』

f:id:artosouken:20160804113839j:plain

ゴッホからもう一つ。この作品が描かれたとき、ゴッホは精神がおかしくなり発作が起きるようになっていたため、精神病院に入院していました。この作品では刑務所の中をただひたすら歩き続ける囚人たちが描かれています。彼らは俯いており、その様はまさに絶望。しかしその中に1人こちらを見る男性(ゴッホ自身だとする説もあります)がおり、更によく見ると部屋の上方は明るい光で満ちています。絶望の中のゴッホに、わずかな希望が伺える作品です。

『シューマンを聞きながら』

f:id:artosouken:20160804114350j:plain

クノップフによる作品です。シューマンを聞く女性が描かれています。しかしその女性の様子を見るに、何か悩みを抱えているかのような、そんな印象を受けます。

『接吻』

f:id:artosouken:20160804115014j:plain

クリムトが残した傑作、『接吻』です。男女が口づけを交わす様子が描かれています。あまりに甘美な場面ですが、よく見ると2人は崖の上にいることが分かります。この後2人に起きる悲劇を暗示しているかのよう。当時このテーマはタブーとされていたのですが、あまりの素晴らしさに最終的には国家が買い上げるまでに至りました。

『我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか』

f:id:artosouken:20160804115549j:plain

後期印象派を代表する、ゴーギャンによる傑作中の傑作。解釈には諸説あるのですが、人間の一生を描いているというものが一般的です。ゴーギャンの死生観を感じることのできる作品です。

 

今回もお読みいただきありがとうございました。
Toshiroでした。それでは、また。