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アパレル大手の三陽商会は、7月29日、2016年12月期の業績予想を修正し、最終的なもうけである純損益を2月時点の3億円の黒字から95億円の赤字に引き下げた。また、業績不振のため、全社員の2割弱に当たる約250人の希望退職者を募り、不採算ブランドを休廃止すると発表した。同社の低迷は、1965年に輸入販売を開始して以来、50年間、蜜月関係にあったイギリス・バーバリー社とのライセンス契約を、15年6月に終了したことによる。
高級化路線を進めるバーバリー社の中枢は、三陽商会が本来のブランドの半値以下で展開するディフュージョンライン(普及版ブランド)「バーバリー・ブラックレーベル」と「バーバリー・ブルーレーベル」に否定的だった。また、ライセンスではなく直営展開に切り替えることで、さらなる収益アップを望んだことが契約終了の大きな理由だ。
そうした大局での動向はさておき、ブラックレーベルやブルーレーベルの商品を縫製していた工場や販売員など末端の現場にいた人々は、この結果を以前から予想していたという。
「『まずいな』と思ったのは、安室奈美恵が結婚会見(97年)でブルーレーベルのスカートをはいていたのをきっかけに爆発的に売れ始めた時期の、少し後からです」(縫製工場営業)
ブルーレーベルが売れた理由は、本家バーバリーよりもカジュアルでポップなデザインで、なおかつ安かったから。そのため、工賃もかなり抑えられていた。しかし、工賃以上のクオリティを求められ、三陽商会と手を切る工場が出始めたという。
「スカートを作るにしても、凝ったデザイン、仕様にすれば、その分、工賃も高くなります。例えば、バーバリー社が求めるクオリティに達するには8,000円の工賃がかかるとしますよね、でも、三陽商会は価格を抑えるために4,000円で作ってほしいという。そこでまず行き違いが生じるんです。それでもなんとかお付き合いしようとしていましたが、もし何か問題が生じたら、こちらが責任を負わなければいけない。これでは割に合いませんよ」(同)
それでもブランドに勢いがある時は、縫製工場や製造業者が次々と後釜になろうと手を挙げた。しかし、工賃は大衆向け商品程度なのにハイブランド並みのクオリティを要求されて疲弊し、次第に手を引いていった。
また、ライセンス契約を結んだブランドのオリジナルの製品を作る際は、当然ライセンス元の許可が必要になる。しかし、ブラックレーベルやブルーレーベルの中には、バーバリー社の許可を取らずに作られて店頭に並んだ商品もあるという。
「数カ月ごとに、バーバリー社の店頭チェックが入るんです。その時、会社から『〇〇と〇〇を店頭から外せ』と指示があって、その商品をストック(倉庫)の見えない場所に隠すんです。ライセンス契約を結んだ正式な店舗なのに、なんでこそこそしなきゃいけないんだと、みんなで話していました」(元販売員)
そんな状況の中、販売員の間では「この店、大丈夫なのか?」と不安の声が上がっていたという。
販売員と作り手側の意欲の低下、そして、低価格を望む消費者とラグジュアリー化を望むブランドとの意識の食い違い。一時の勢いを失ったブラックレーベル、ブルーレーベルは2000年前後から次第に売り上げを落としていったというが、そうしたちぐはぐな運営下にあるブランドが低迷し、大本の本社から見切りをつけられるのは当然だったのかもしれない。
「バーバリーが三陽商会を介さずに直接店舗を運営することになっても、協力したいという商社や百貨店は多いでしょうね。しかし、高級ブランドが望む『店舗での手厚い接客』を求めるのは、都心に住む一部の顧客だけです。地方に住む人たちは、わざわざ車に乗ってショッピングモールの店に行くより、スマホを使って通販サイトで買う方が、はるかに楽ですからね。また、東京に住む人と地方に住む人では、求めるものが違います。もちろん、ブランド力と昔からのファンのおかげで、一定の売り上げは得るでしょう。しかし、日本の事情を理解しないと、本国イギリスほどの人気は得られないでしょうね」(某ブランドスタッフ)
三陽商会は、バーバリーに代わり、同じイギリスの「マッキントッシュ」と組み、日本市場に特化した新ブランド「マッキントッシュロンドン」を15年秋冬から展開している。しかし同ブランドの認知度は低く、売り上げが計画を下回るなど苦戦が続いている。今後、巻き返しを図っていくようだが、少なくとも、末端の人々が不安に襲われない運営をしてほしいものだ。
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