【社説】5年にわたり劇毒物を海に放流してきた韓国の発電所

 韓国電力子会社の韓国東西発電蔚山火力本部が2011年から昨年7月までの5年間、有害物質のジメチルポリシロキサン500トンを冷却水に混ぜて海に放流していた疑いで、蔚山海洋警察が捜査を行っていることが分かった。ジメチルポリシロキサンは冷却水を海に放流する際に発生する泡を消す消泡剤だが、人体に入れば呼吸器に損傷を与え、胎児の生殖能力に害をもたらす毒物でもある。東西発電は年間の売上高4兆ウォン(約3600億円)、社員2000人以上が働く公企業だが、その企業が海に有害物質を放流していたのは非常に重大な問題だ。

 今回の問題については法制面での不備に加え、管轄する行政機関の監督不行き届きによりもたらされた構造的側面も指摘せざるを得ない。海洋警察は昨年も同じような容疑で京畿道平沢の電力会社2社を立件したが、1社は嫌疑なしとなり、もう1社も裁判所が判決の先送りを決め処分を逃れた。ジメチルポリシロキサンは海洋環境管理法では有害物質に分類されているが、海洋水産部(省に相当)はその具体的な規制を定めていないため、使用した企業などを処罰する法的根拠が不十分な状態となっている。海沿いにある全国の発電所はこれを理由に、5年以上にわたりこの物質を普通に使用してきたが、海洋警察が取り締まりに乗り出した昨年以降は使用を控えている。

 有害物質を放流した発電所は当然批判を受けるべきだ。しかしもっと根本的な問題は、海洋水産部が事前に今回の放流の事実を把握していなかったことと、事実が明らかになってからも1年以上にわたり法律の整備を怠ってきたことにある。当局は海の環境や国民の健康を守ることに関心がないのか、ぜひとも尋ねてみたいものだ。

 これまで全国の他の発電所でも同じような問題がなかったのか、あるいは今なお有害物質を使用する発電所がないか国民は不安を感じている。政府は直ちに全国の全ての発電所に立ち入り検査を行い、国民の不安を払拭(ふっしょく)すべきだ。また有害物質の分類や管理・監督の規定も早急に見直さねばならない。

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