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2016/08/04

お題「6月議事要旨ネタと総裁会見ネタ(続き)など」

ふーん。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160804/k10010620731000.html
首相 デフレ脱却と経済再生を最優先課題に
8月4日 4時02分

相変わらずデフレ脱却していないことになっているのか・・・・・・・・・・・・

それから今日は置物師匠の金懇がありますので正座して待ちましょう!!!!!!


○6月決定会合議事要旨ネタである

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2016/g160616.pdf

まずは『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要 』から少々。

・海外経済

『海外経済について、委員は、緩やかな成長が続いているが、新興国を中心に幾分減速しているとの認識を共有した。先行きについて、委員は、幾分減速した状態が当面続くとみられるが、先進国が堅調な成長を続けるとともに、その好影響が波及し、新興国も減速した状態から脱していくとみられることから、緩やかに成長率を高めていくとの見方で一致した。』

という話で毎回推移しているのですが、

『ただし、一人の委員は、先進国の景気回復が新興国に波及するスピードは遅く、新興国の景気減速が先進国経済を下押しするリスクにも注意が必要であるとの見方を示した。』

という指摘がありまして、先進国堅調だと世界的にコケはしないけれども、新興国がバンバン伸びて全体がヒャッハーという時と比較した時にヒャッハー感が無いなあとか何となくイメージしていたことを指摘しているなあと思ったりしたのでした。

『地域毎にみると、米国経済について、委員は、新興国経済の減速などから鉱工業部門は力強さを欠いているが、堅調な家計支出に支えられて回復傾向にあるとの認識で一致した。5月の雇用統計における雇用者数の増加が市場の事前予想を大きく下回ったことについて、ある委員は、米国経済の回復の弱さを示している可能性があるとの見方を示したが、多くの委員は、雇用情勢に基調的な変化が生じているかどうかを評価するには、もう少しデータの蓄積を待つ必要があるとの認識を示した。』

まあこちらは多くの委員に分がありましたな。

『欧州経済について、委員は、輸出は新興国経済の減速の影響などから弱めの動きとなっているが、個人消費が引き続き増加するもとで、緩やかな回復を続けているとの認識を共有した。』

『先行きについて、委員は、緩和的な金融環境のもとで、雇用・所得環境の改善などを背景に緩やかな回復を続けるとの見方で一致した。複数の委員は、英国のEU離脱問題の帰趨が、欧州をはじめ世界経済に対して与える影響には注意が必要であるとの見解を述べた。』

というお話だったのが7月にはこれを理由に追加緩和しかもETF買入拡大っていうのがもうね。


・国内経済

『わが国の景気について、委員は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けているとの認識を共有した。委員は、引き続き、企業収益が高水準で推移し、労働需給の引き締まりも続いていることを指摘し、家計・企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが作用しているとの見方を共有した。』

って毎回そういう話になっているのだが全然そうなっていないように思えるのだが。

『ある委員は、日本経済は雇用・所得環境の改善を背景に、基調としては緩やかに拡大していくと考えられるが、このところ個人消費の一部に弱さがみられることや、円高の負の影響が今後現れてくることを踏まえると、下振れリスクは大きいとの見方を示した。』

でまあこれまた7月会合議事要旨を見ないと、って言いましても議事要旨出るころには9月の時点での総括検証が出ているのでもはやどうでも良い話になっている悪寒がしますが、基本的に日本経済の下振れリスクに対応するのに何でETFの買入になったのかという点について6月の会合議事要旨で何かヒントが無いかと思いつつ探す訳ですが。

『個人消費について、委員は、一部に弱めの動きもみられるが、雇用・所得環境の着実な改善を背景に底堅く推移しており、先行きも、引き続き底堅く推移するとの認識を共有した。ある委員は、1〜3月の個人消費は、年初の国際金融市場の不安定化や暖冬の影響を受けたものの、4月の消費活動指数は持ち直しの動きを示していると述べた。』

『一方、別の複数の委員は、所得対比で消費が弱い背景として、賃金の回復力が弱いことや、年初来の円高と株安による逆資産効果、財政・社会保障制度の不確実性に起因する将来所得への不安などを挙げた。』

まあ何ですな、円高株安でマインドがコケるという話は分からんでもないのですが、だからETFを買うというのも何ちゅうか安直な話で、円高株安が何等かのリスクプレミアムを反映しているという認識を7月会合でどういう示し方をするのかが楽しみです、とか次回議事要旨のみどころばかり探すアタクシ。

しかしまあ何ですな、

『これに対し、一人の委員は、社会保障や財政に関する不安は消費性向が低い要因にはなるとしても、ここにきて消費性向が低下している要因にはならないとし、』

まあこれは分かる。

『消費性向がいずれ下げ止まれば、雇用者所得の増加を映じて消費は増加すると述べた。』

??????????????????????????

一つ上の複数の委員の見解と全然話が噛み合っていないように見える訳ですが、これ「議事要旨」な訳でして、要旨の時点で話が噛み合っていない表現に成って居るということは、恐らく本チャンの議論の場ではもっと議論になっていないのではないかと思うのですよ。つまり、議事要旨作る事務方だってこういう辺りで議論の論点をきちんと分かるように書こうとするでしょうから、事務方の編集をもってしてもこれ以上書けないってそら相当のもんじゃないのと。

でまあ大体こういうのが増えてきたのがいつごろかと考えますとそらもうジンバブエ先生辺りの頃からということで後はお察しということでしょうな。


・金融環境の評価が微妙ですのう(まあ大本営だから仕方ない面はあるが)

『2.金融面の動向』から。

『わが国の金融環境について、委員は、きわめて緩和した状態にあるとの認識で一致した。委員は、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとで、企業の資金調達コストはきわめて低い水準で推移しているとの見方を共有した。』

『何人かの委員は、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入決定後、国債利回りだけでなく、貸出金利やCP・社債の発行金利もはっきりと低下していることや、超長期の社債を低利で発行する動きが拡がっていることを指摘し、企業の資金調達環境はさらに緩和的になっているとの見解を示した。』

まあこれは良いとしまして、

『これらの委員は、金融環境の緩和によって、世界経済の不透明感が続くもとでも、設備投資は増加基調を続け、住宅投資が再び持ち直すなど、マイナス金利政策の効果は、実体経済面に徐々に波及してきているとの見方を示した。』

そ、そうなのか???????

『このうち一人の委員は、企業が国債利回りとのスプレッドよりも発行レートの絶対水準を重要視しながら社債発行を行う動きが定着してきているほか、固定金利でのシ・ローンの組成等が行われるなど、金融実務の面でも、マイナス金利のもとでの企業の資金調達は順調に行われていると述べた。』

えーっとすいません、それは「国債金利対比でのスプレッドが拡大している」と言うと思うのですが。

『また、別のある委員は、現在の緩和的な金融環境を活用することによって、民間部門が構造改革を着実に進捗させることが期待されると述べた。』

何じゃそらというお話で、そもそも成長期待が無かったら金融環境活用もへったくれも無いですし、構造改革ってそれデフレ圧力の話ジャマイカと思うので実際にこれどういう話をしているのか非常に謎ではありますな。

『一方、別の一人の委員は、銀行貸出全体の増加率は高まっておらず、マイナス金利政策の効果は明確にはみられないとの見方を示した。』

そらそうよ。


・物価動向の判断はまあこういう話になるんだろうなとは思うけど・・・・・・・・・・

続いて『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』から。

『金融政策を運営するうえでの物価動向の判断について、委員は、物価の基調的な動きが重要であるとの認識を共有した。』

といういつもの前置きから始まりまして、

『何人かの委員は、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比が、4月に+0.9%とプラス幅を幾分縮小した背景として、個人消費の一部に弱さがみられることを挙げた。このうち一人の委員は、こうしたもとで、新年度入り後の価格改定の動きは昨年ほど拡がっていないと述べた。複数の委員は、サービス価格の伸びは高まっているが、財価格の伸びの鈍化を相殺するまでにはなっていないと述べた。』

確か新年度入り前の時点では「企業の価格設定行動の推移に注目」という話をしていた筈なのですが、最近すっかりそこに言及しなくなっているのは仕様です。

『もっとも、一人の委員は、消費者物価指数の内訳をみると、上昇品目数が下落品目数を大幅に上回る状況が続いており、ここへきて、企業の価格設定スタンスに大きな変化が生じている様子は窺われないとの見方を示した。』

何かこじつけ感が。

『また、この委員を含む何人かの委員は、3年連続でベースアップが実現し、中小企業にも賃上げの動きが拡がっていることなどを踏まえると、賃金の上昇を伴いながら、物価上昇率が緩やかに高まっていくというメカニズムは、引き続き作用しているとの見解を述べた。』

単にデフレ傾向じゃなくなりましたね万歳万歳というのなら分かるのですが2%物価目標との整合性はどうなっていますねんというお話ではあります。

『別の一人の委員は、個人消費の弱めの動きを受けて、昨年のような価格引き上げが望めないため、当面、物価上昇率は高まりにくい状況が続くが、原油価格が上昇に転じていることや、タイトな労働需給を背景に賃金の上昇が見込まれることなどから、物価は今年度後半からは伸び率を高めていくとの見方を示した。』

でまあ展望レポートでもこういう話になっているのですが、このタイトな労働需給で賃金の上昇がという話が何ちゅうかこう微妙感あるのですよねえ。

それから期待インフレに関してですが、

『予想物価上昇率について、委員は、やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいるとの認識を共有した。』

毎度のマクラ。

『一人の委員は、予想物価上昇率が弱含んでいる背景として、本年入り後の国際金融市場の不安定化等から消費者マインドが悪化したことや、既往のエネルギー価格下落や円高の影響などを指摘した。そのうえで、この委員は、ファンダメンタルズが底堅く推移している中で、タイトな労働市場や設備投資の増加基調を背景に、今後、需給ギャップの改善が進めば、予想物価上昇率は徐々に高まっていくとの見方を示した。』

という話になっているのですが、どうも眉唾な感じですの。


・6月時点で追加緩和の主張もありますな

『先行きの金融政策運営の考え方』の辺りに参りますと、

『また、何人かの委員は、英国のEU離脱に関する国民投票の結果とその後の金融経済動向を見極める必要があると付け加えた。このうち一人の委員は、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比や予想物価上昇率の指標に弱さがみられるなど、「物価安定の目標」の達成に警戒信号が点滅しており、2%の達成時期が遅れる蓋然性が高くなる場合には、追加緩和により、2%達成に向けた日本銀行のコミットメントを、人々とマーケットに改めて示す必要があると述べた。』

という理屈ですが、コミットメントを示すために追加緩和って逐次投入の発想にも程がある訳で、まあ今度の総括検証でどういう絵が出てくるのかさっぱり分かりませんが、やはり逐次投入ができるようなスキームへの乗り換えをこっそり行わないと苦しいという事をこの辺りでも示されているように思えるのですがどうでしょうか。


・なお問題点を指摘している人が3名いるのですが・・・・・・・・・・・・・

でまあ毎度の反対論だが参戦者がどう見ても1名多い。

『これに対し、一人の委員は、「量的・質的金融緩和」の効果は限界的に逓減しているほか、既に副作用が効果を上回っているとしたうえで、@長期国債保有残高の増加ペースを、段階的減額を視野に入れて「量的・質的金融緩和」導入時を下回る水準まで減額すること、A「物価安定の目標」の達成期間を中長期へと見直し、金融不均衡などのリスクに十分配慮した政策運営を行うことを主張した。』

って言ってるんだから木内さん。

『また、この委員は、近年の政策運営は、市場ではサプライズを狙ったものと受け止められており、金融政策の予見性を大きく低下させ、市場のボラティリティを高めていると指摘したうえで、市場との対話の正常化、双方向での対話の強化を早期に図るべきであると述べた。』

この委員ってんだから木内さんの話の続きですが、まあ前半の方は敗北宣言になっちゃうから色々と難しい面があるにしても後半の方は別に敗北宣言でもなんでもない話なので改善頂きたい、というかそういう議論も踏まえて総括検証という話になったのであればまあ良い傾向ではありますの。


『この間、一人の委員は、日本銀行が3年以上にわたって「量的・質的金融緩和」を継続するもとで、わが国経済は、既に物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっているとの認識を述べたうえで、国債買入れについて、その遂行にあたって、大きな問題が生じる前に、より持続的なものに転換していくべきであると主張した。』

『また、別の一人の委員は、政策の主目的は量から金利に既に移行しているとし、資産買入れを柔軟に運営することが重要であるとの見方を示した。』

ということで、佐藤さんともう一人は石田さんだと思われるのですが、これがまた残念な事に石田さんはこの会合を最後に退任されているのが何とも惜しい。


・輪番をコロコロ変えているのは市場の安定化のつもりだったのかよ!!!!!!!!

『これらの議論に対して、別の一人の委員は、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」によって、国債市場が影響を受けることは事実であるが、日本銀行では、国債市場の流動性や機能度について、サーベイや各種の指標をみながら丹念に点検しているほか、』

は????????

『市場動向を踏まえて国債買入れを弾力的に運用することで、市場の安定に努めていることを指摘した。』

えーっとすいません、毎月輪番をコロコロいじってボラを無駄に上げたり流動性を無駄に落としたりしているとしかこちらでは思えないのですけれども、もしかしてあの輪番額の毎月の変更って「市場の安定に努めている」つもりでやっているのかよと結構な驚愕の文言でして、そもそも論として市場を安定化させようとしながらどう見ても不確実性とか予見不可能性を高めている行動をとってしまっている、という時点で市場との対話もへったくれも無い訳で、もとよりインターバンク市場以外に関して日銀の市場センスってアチャーな面が多いのですが、日銀的にこういう建付けになっているのであればかなり頭がクラクラするんですけど・・・・・・・・・・

『そのうえで、この委員は、大量の国債買入れが国債市場に与える影響にはしっかりと目配りしつつも、思い切った金融緩和によって、一日も早くデフレから脱却し、日本経済を持続的な成長軌道に復帰させることが、低金利の状態を脱して市場を正常化するための一番の近道であると述べた。』

そら良いのですが、だったら何で3方向で追加緩和とか連呼していたんでしょうかねえ・・・・・・・・・・・・・・・

『この間、別の一人の委員は、銀行の国債離れが「量的・質的金融緩和」の限界や副作用を示すという一部の議論について、国債を保有していた金融機関が、国内や海外における貸出の増加など、国債以外の様々な資産にシフトすることは、ポートフォリオ・リバランスという政策効果の浸透を示しているとの見方を示した。』

「一部の議論」とか言っている時点でジンバブエの香りしかしませんが、相変わらずピントがずれていますの。



○総裁会見ネタの続き(すいません)

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2016/kk1608a.pdf

・マイナス金利に対する拘りを見せている質疑応答

まー当たり前っちゃあ当たり前ですが総括検証の話だらけではありました。

『(問) 2 点お伺いします。総裁はかねて、金融政策が効果を発揮するのに半年も 1 年もかからないと発言されていましたが、おっしゃったようにマイナス金利の導入から半年が経とうとしています。現時点で、効果について具体的にどのように感じていらっしゃるか教えて下さい。もう 1 点は、今回声明文に入った、総括的に検証するということについて、検証した結果、例えば、今のような規模で買入れを進めることはそれほど効果がない、むしろ副作用が大きいのではないか、という議論が起きた場合、今よりも規模を縮小するといった方向性も可能性としてあるのか、お教え下さい。』

2名は既に副作用の方が大きいと指摘していますね。

『(答) 1 月に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を決定し、マイナス金利は、金融機関の日銀における当座預金のごく一部に 2 月から適用されるようになりましたが、』

「当座預金のごく一部」ってエクスキューズ文言が入っているのがお洒落でして、絶賛大不評のマイナス金利に対してこういう風にコメントを入れるあたり、マイナス金利は悪くないという事には拘るという姿勢が見えますなあと思うのでありました。

『ご承知のように、国債は短期から長期、超長期に至るまで全体的にイールドカーブが相当下がっており、その結果として、金融機関の企業に対する貸出金利、家計に対する特に住宅ローンなどの金利もはっきりと低下しています。また、市場におけるCPや社債の発行金利も顕著に低下しています。そうした意味で、金融資本市場全般にわたる効果は、既にはっきり出ていると思います。』

金利が下がって貸出の量が伸びてくれないとプロコン比較的にねえ・・・・・・・

『それが実体経済にどのような影響を及ぼしているかについては、最近の日銀短観でも、景気に対する見方は若干慎重化していますが、設備投資のスタンスは非常にしっかりしています。この背景には、非常に緩和的な金融環境が続いていることに加え、今後も続くという見通しを踏まえて、企業がしっかりした設備投資計画を維持しているのだろうと思います。』

ダウト。

『また、住宅投資はこのところ再び持ち直していますし、最近のローンサーベイでも住宅ローンは顕著に伸びています。』

借り換えだけどな。

『このように、金融資本市場全体に対する影響は既に十分現れているわけですが、実体経済に対する影響も出てきており、今後、そのプラスの影響はより顕著になっていくだろうと思っています。』

でもそれを示現するのにマイナス金利である必要があったのかという話は無い辺りが大本営。

『「総括的な検証」については先程申し上げた通り、あくまでも 2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために何が必要か、という観点から、これまでの 3 年間の経済・物価動向、あるいは政策効果について検証を行うわけです。』

政府の方では財政で達成するという事になってしまっているようですがががが。

『これまでの 3 年強の経験上、「量」・「質」・「金利」、特に「量」・「質」はずっとこの 3 年強やってきましたし、「金利」は今年から始まったわけですが、「量」の面も非常に重要であることは認識しています。そうした意味で、「量」を軽視することになるとは思っていません。』

という話をしている訳ですが、「量と質」を3年間やった結果として達成していないという事実がある以上、どこからどう考えても「効果はあるが2%行かせるためにはツールとしてそんなに強くない」という話に成らざるを得なくて、その点からすると「マイナス金利」という新しいオモチャじゃなかったツールを使い出したんですから、そちらの方に期待をするしか無い、という話になるので、まーマイナス金利についての説明を頑張っていくのは当然ですし、どうせ検証してもそうなるんじゃないのという気がするのですがどうでしょうかねえ。


・物は言いよう

この質疑の答えはワロタ。

『(問) 政策の逐次投入はしない、とおっしゃっていましたが、「量」、「金利」に限界はないという中で、今回は「質」、中でもREITでも社債でもないETFに絞って拡大したことで、今後は、現状と 3 つの効果を見比べながら、逐次投入していくということでしょうか。あえて今回ETFに絞られた理由をあらためてお聞かせ下さい。』

ニヤニヤ。

『(答) 「量」・「質」・「金利」の 3 つの次元で緩和が可能であるということは先程申し上げた通りで、今、限界がきていることは全くないと思います。』

はあそうですか(棒)。

『従って、その時々で、最も適切な政策を行うということです。政策の逐次投入が望ましくないと言った意味は、その時々で必要にして十分なことを行わずに、情勢の悪化に引っ張られて次々に逐次的にやっていくやり方は適切ではないということです。その時々で必要にして十分な政策をきっちりと行うということが、逐次投入を避け、金融政策の効果を最大限発揮させることになると思っています。』

えーっとすいません、必要にして十分な政策って言って何回追加緩和してましたっけ????????

『先程申し上げたように、現時点で日本経済の成長率見通しが下方修正されたわけではなく、むしろ上方に修正していますし、物価は足許については下方修正しましたが、2017 年度、2018 年度については従来と全く同じ見通しになっています。』

そら経済対策分の鉛筆なめてるからな。

『ただ、そうしたもとで、不確実性は高まっています。』

そら経済対策(以下同文)。

『今回の展望レポートの「政策委員の経済・物価見通しとリスク評価」のグラフを見ても、下方リスクが大きいことが示されていますし、展望レポートの文章でもかなり明確に下方リスクを指摘しています。』

ここの所分布はだいたいそうだと思うのだが。

『特に、英国のEU離脱問題や新興国経済の減速を背景として、このところ海外経済の不透明感が高まり、国際金融市場が不安定化していることは事実であり、それが企業や家計のコンフィデンスの悪化につながるおそれがあるので、必要にして十分な対応ということで、ETF買入れ額のほぼ倍増――これはかなり大きなものですが――や、外貨資金調達環境の安定のための 2 つの措置を採りました。これは、いわゆる戦力の逐次投入ではないと考えています。』

外貨の方はマイナス金利政策やって外貨資産に向かわせたのだから相互補完的なものもあるので分かるのですけれども、ブリクジット云々をネタに出してETFというのは如何にも恥ずかしいですよねえ。


・まあ似たような質疑は続くのだが資産買入に関する説明もだいぶ混乱気味ですのう

こんなのもネタにしておきませう。

『(問) 日銀のETF買入れに対しては、かねてから株価というのは企業の収益であるとかファンダメンタルズで決まるもので、市場機能を歪めるおそれがあると指摘されてきたわけですが、これを今回倍増させると、さらに市場機能を損ねるおそれ、もっと言えば日銀による相場操縦ではないか、という見方に対して、どのようにお考えになるかというのが 1 点です。(以下割愛)』

『(答) まず、ETFの買入れ額を 6 兆円にほぼ倍増するということについては、先程来申し上げているように、英国のEU離脱をはじめとする海外経済の不透明感が高まっている、あるいは国際金融市場が不安定化していることを踏まえて、企業や家計のコンフィデンスの悪化を防止する観点から決定しました。ETFの買入れは、別に特定の株価を目標にして行っているものではもちろんありません。』

ということですが、

『基本的にはリスクプレミアムに働きかけて、株式市場、資本市場がより適切に機能するようにサポートしているものであり、株式市場の機能を損ねることはないと思っています。』

という話ですから、だったら特定の水準が念頭にあるじゃんとか思う訳ですし、そのリスクプレミアムがどの程度あるのか、買入継続したらストック効果でドンドンそのプレミアムが縮小する筈なのですから、それこそ社債やCPの買入と同様にどこかの時点で「残高維持」に変わって然るべきではないか、と思うのですけどねえ・・・・・・・・・・

『国債の買入れにしても、その他色々な金融資産の市場からの買入れにしても、市場の価格に影響を及ぼすことは事実ですが、それによって、経済活動を支え、「物価安定の目標」を達成するということであり、何か特定の株価を実現しようとして行っているものではありません。』

って言ってますが、国債の買入は「名目金利に低下圧力を掛ける」って言ってやっている訳で、説明に混乱が見られる辺り、ETF買入拡大に関しては相当にヤケクソ投入したんだろうなあとあたしゃ思うのですけどね。

『もちろん、こういうことを通じて、そうでない場合と比べて株価が上昇するであろうということはその通りだと思いますが、市場機能を損ねてはいないと思っています。(以下割愛)』

市場機能っつか市場の価格発見機能であり、資源の適切な配分機能と言った方が良いと思う。そういう観点をわざとスルーして先物の売買高がどうのこうのとかそういうテクニカルな話に持って行って「市場機能はありまぁす」とか言っているのが最近の日銀だと思うの。

ということでまあ今回の質疑って総括検証の話と何でETFって話(そらそうだが)が多かったので、一々引用するのもオモロイとは思うのだが時間の関係でとりあえずこんな感じ。ただしまたネタにするかも。






2016/08/03

お題「思った以上に総括検証ネタが妙な盛り上がりをしているので市場備忘と雑談的所感を」

ここに来ましてダドリーとカプランの講演が投下されているのですがまだネタにできる状態では無かったりします(大汗)が面白そう。

カプラン
http://dallasfed.org/news/speeches/kaplan/2016/rsk160802.cfm
Speeches by President Robert S. Kaplan
Key Secular Trends and Implications for Monetary Policy
Remarks before the Official Monetary and Financial Institutions Forum
Beijing August 2, 2016

ダドリー
https://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2016/dud160731a
The U.S. Economic Outlook and the Implications for Monetary Policy
July 31, 2016
William C. Dudley, President and Chief Executive Officer
Remarks at Bank Indonesia & Federal Reserve Bank of New York
Joint International Seminar, Bali Indonesia

北京とかバリ島とかに出撃してるんですね・・・・・・・・・・・・・

#ネタにするのは来週あたりかもしれません(すいません)がカプラン総裁は質疑応答の方でマイナス金利は米国の場合アカンという話をしていたそうな

#ところで未だに嬉しそうに「ヘリコプターマネー」とか言ってるモーサテのキャスターェ・・・・・・・・・・・


○9月のMPMまで振らされるのか途中でフリーズするのか

・いやあ想像以上に動きましたなあ

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1AJ25F
Markets | 2016年 08月 2日 15:14 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続落、10年債利回り一時-0.025%に上昇

『[東京 2日 ロイター] -

<15:10> 国債先物は大幅続落、10年債利回り一時-0.025%に上昇

長期国債先物は大幅続落。前日の夜間取引で下落した流れを受けて売りが先行。日銀政策の先行きに不透明が増す中、海外勢の売りに加えて、10年債入札を警戒した業者の調整売りが膨らんだ。入札低調を確認すると、9月限は中心限月として3月16日以来の151円割れとなり、一時150円66銭まで売り込まれた。

現物債利回りに強い上昇圧力がかかった。日銀の金融政策の影響を受けやすい中長期ゾーンの利回り上昇が目立っており、10年債利回りがマイナス0.025%、5年債利回りがマイナス0.120%、2年債利回りがマイナス0.150%といずれも3月16日以来の高水準を付ける場面があった。終盤にかけては、国内銀行勢を中心とした押し目買いが入り、金利上昇が抑制された。

10年利付国債入札は落札価格の平均と最低の開き(テール)は27銭と2015年3月入札の338回債のテール33銭に匹敵する水準に拡大し低調な結果となった。

長期国債先物中心限月9月限の大引けは、前営業日比91銭安の151円33銭。10年最長期国債利回り(長期金利)が前営業日比8bp上昇のマイナス0.060%となった。』(上記URL先より)

とまあそういうことで昨日はたぶんこの記事
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGC01H0R_R00C16A8EN2000/
政府、日銀目標に見切り? 物価2%上昇「困難」の声
2016/8/2 2:00日本経済新聞 電子版

『政府内で日銀の物価目標に見切りをつけるような動きが出てきた。2017年度の物価上昇率予想は日銀が1.7%に対し、政府は1.4%。日銀は目標とする物価2%上昇の達成を引き続き目指すが、政府内では「早期実現は困難」との声が聞こえ始めた。日銀は9月会合で過去の政策の効果を検証するが、弱い物価は追加緩和への圧力としてなお残りそうだ。』(上記URL先より)

週末にも日経が「政府の中では2年で達成に拘る必要無しという考えも」みたいな報道を打ち込んでおりまして、昨日は朝刊でまた追い打ちという感じでして、いやまあ金利上がりますなあという風情で、上記記事にあるように10年国債入札がコケて先物とか長期とかの金利は上昇したのですけれども、結構売られてやがるのが中短期でして、記事にあるように2年とか5年とか大甘となっておりました。折角ですのでMPM直前の28日の引けと昨日の引けを比較しませう(ただし単利)。

2年367回:▲0.350%→▲0.165%(18.5甘)
5年128回:▲0.360%→▲0.150%(21甘)
10年343回:▲0.280%→▲0.065%(21.5甘)
20年157回:+0.145%→+0.250%(10.5甘)
30年51回:+0.245%→+0.320%(7.5甘)
40年9回:+0.310%→+0.375%(6.5甘)

まあ先物とか10年とかが叩き売られるのは兎も角として、2年とか5年が盛大に甘い訳でして、今回の「量も金利も見送り」&「総括的な検証」によってマイナス金利がそう簡単に深堀できる訳でもございませんという事になって利下げ期待(市場の中の人的に言えば「利下げ期待」というよりは「利下げに対する恐怖感で泣きながら購入」という方がイメージ的に正しいんじゃないでしょうか御同輩の皆様???)でバカスカ低下していた分が盛大に剥落した格好。

超長期に関してはゼロ金利とかまでつけた後やれ超長期輪番減額だやれヘリマネだとかいう感じでその前にフラット化が一服してたのと、そもそも金利水準がプラスの水準から始まっているから下がれば相応の買いも入る(というほど入っている感じでもないけど)のでブレーキはそらかかりますなあと思いますが、まあふーんという感じです。


と思ったら今度は引け後に「緩和縮小の見方に対して『おっしゃったようなことにはならない』と黒田総裁が発言した」というヘッドラインが出て債券先物引けから40銭位上がるとか中々お洒落な展開になっています。直接的なヘッドラインがみつからなかったのでこちらでも。

http://jp.reuters.com/article/focus-boj-idJPKCN10D14M
Business | 2016年 08月 2日 20:56 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
焦点:日銀の政策検証、可能性低い緩和縮小や目標柔軟化の選択

『黒田総裁は2日午後、麻生太郎財務相と会談。終了後の会見で、緩和検証への思惑から「市場では緩和が縮小に向かうとの見方から金利が上昇したが」との質問に対して「そもそも総括的な検証自体が、2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現する観点から何が必要かを明らかにするため。そのようなことにはならない」と緩和縮小を否定した。』(上記URL先より)

という現象をまずは俺様備忘用にメモして置きまして以下雑談。


・まあ当分この調子で「総括的な検証」の解釈論でぶれるでしょうなあ

いやまあアタクシ月曜の駄文で「正反対の見方が出来ますよね」というお話で、アタクシ的にはそもそも今の政策を3方向で拡大するのは執行上の自爆大炎上が見ているので何らかの手段の工夫が必要だから見直しだぜヒャッハーと申し上げましたが、総裁会見とかを見ると追加緩和をぶち込んみそうな威勢の良い話(って最初の所しか引用してませんでしたな)をしていたりもしていて(でも効果はばつぐんだと思って限界無いと思ってるなら総括検証とかしなくて普通に追加緩和するんじゃないの??)、まー見方は割れるし多分アタクシの方がマイナーになるだろうなーとかおもっていたら思いの他緩和期待を剥がす格好に。

実際にはどうなのか分からんですけれども、やはり今回は「いつもだったらやるはずの追加緩和セットから買入も金利も外したということは、それは次回にどちらかの手綱を緩める可能性があるからでしょ」という発想になったとかいうのもあると思いますし、日経新聞がまた例によって例のごとくの「謎の政府筋」によるイタコ記事を打ち込んできて見直し機運を煽ってみたりというのがあったのと、そもそもポジションが「ここから3方向で追加緩和されてしまうと死んでしまうんですがそれは」という事になっている人たちのヘッジと言うよりは恐怖による買いも入っていて、相応にというか過剰に緩和期待(嬉しくないので期待という文言も不適切だと思うので緩和懸念の方が正しいか)が高まっていて、とりあえずは緩和懸念に対応したヘッジ的なポジションの振り落としが発生したという事でしょうな。


しかしまあ何ですな、別につるし上げる気は無いのですけれども先ほどのロイター見たら・・・・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/focus-boj-idJPKCN10D14M
Business | 2016年 08月 2日 20:56 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
焦点:日銀の政策検証、可能性低い緩和縮小や目標柔軟化の選択

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1AF4U6
Markets | 2016年 08月 1日 07:30 JST
再送-〔焦点〕黒田緩和「検証」で枠組み転換の思惑、量目標やマイナス金利修正も(この記事は29日に配信しました)

・・・・・( ゚д゚)

もうこのブレブレっぷりが何とも心温まる訳ですが、色々と飛び交うクルスク大戦車戦のレポート砲弾を見ますとついこの前まで緩和の限界とか言ってた向きが急に見直しで追加緩和の方向再びとか言い出す向きがあったりする位ですから、ベンダーがこの調子でブレブレになるのは最早お約束の類になる、と思って当分見て行かないといけないと思います。

まーとにかく検証結果が出てMPMで何らかの物件が出るのが9月下旬になる訳でして、まあ途中でああだこうだとやるのは疲れてやらなくなるとは思うのですけれども、来週頭までは置物金懇にMPM主な意見があるし、どうせこの間にあちこちのベンダーがあの手この手でコメント取ろうとするでしょうし、9月途中からは見直し内容について更に一段と思惑が飛び交うでしょうなあ、とか思いまするに、こりゃまあ当分は債券市場ってハイボラか死んだように動かないかの両極端相場をやる(って今までもそうだよと言わるとグウの音も出ませんが^^)という感じでしょうな。


・聞く方も聞く方だが話す方ももうちょっと工夫というのが無いのか

さっきの記事の部分再掲しますけどね。

http://jp.reuters.com/article/focus-boj-idJPKCN10D14M
Business | 2016年 08月 2日 20:56 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
焦点:日銀の政策検証、可能性低い緩和縮小や目標柔軟化の選択

『黒田総裁は2日午後、麻生太郎財務相と会談。終了後の会見で、緩和検証への思惑から「市場では緩和が縮小に向かうとの見方から金利が上昇したが」との質問に対して「そもそも総括的な検証自体が、2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現する観点から何が必要かを明らかにするため。そのようなことにはならない」と緩和縮小を否定した。』(上記URL先より)

まあ聞く方はニュースヘッドラインにしたいから「緩和の縮小という思惑もあるようですが」とか質問して相場を煽りたいということなのでしょうが、そもそもそういう事をして相場を荒らして日本として何の得があるのかと小一時間問い詰めたい訳で、そんなもん今の時点で方向性が無いという建付けになっている(実際は知らんけどそういう建前なんだから)事に関して一方方向にバイアス掛けた質問したら否定されるのですが、そうなるとヘッドラインに使えてアクセス増えるし、市場も荒れて俺様の功績ムハーとかやっていると思うと血圧が急上昇してしまいますよ全くでありまする。


でまあ答える方も輪を掛けて今回間抜けにも程があると思うのですが、黒田さんそもそも市場との対話とかする気が1ミリも無いし、市場のチンピラどもをゴキブリか蛆虫位にしか思っていなさそうにしか思えないのでまあこうなるのも致し方ないのは分かるのですけど、何でバイアス掛けた質問にバイアス掛けた答えをするんだかと思う訳ですよ。

つまりですな、足元の債券市場という意味で言えば茲許の動きってもう7月利下げがダンディールだというような織り込みをして(買入については微妙だし幅は10は間違いなく織り込んでいたが20は微妙)結果としては過剰織り込み状態になっていたのですよね、しかもMPM前の結構の期間において。ですから、今回追加緩和期待がそれなりに剥落したのって日銀的には非常にウマーな話で、見直しの結果10月末の展望レポートで追加緩和をするにしたって、何らかの政策見直しをするにしたって、一旦市場の見方をスクラッチに戻しておいた方が実際の施策を打ち込んだときに素直に反応して素直に期待する効果が出てくる(市場的に)と思うので、過剰な期待を剥がすことは日銀を「動かしやすくする」んですよね。

然るにこの微妙な発言バランスということで、まー勿論非常にこの辺のバランスは難しいのですけれども、とにかくヘリマネどうのこうのとかどこぞの官房参与(今はどこぞの大使)が毎回のようにMPMの度に何かコメントしてベンダーが大々的に取り上げる、とか、ベンダーの馬鹿報道合戦が一々キャッチーな報道をしてマーケットを動かそうという馬鹿祭り状態になっておりまして、まー黒田さんの振付師の皆様におかれましてはもうちょっとその辺慎重に振付けて頂きますと誠にありがたく存じます。

まあそもそも論から言えば、「政策の総括的な検証」」と言った時点で正反対の見方が成立してしまう、というのが日銀の情報発信が崩壊しているという事でもある訳で、ど〜せこれからも碌な動きをしないでしょうなあという債券市場なのでありました。


でまあもっと笑うのは、この黒田さんの発言って実は為替の方を意識して(101円台に入っていたから)打ち込んできたのかもしれないなあと思ったのですが、黒田さん的には一番反応して欲しい為替市場は1ミリも反応しないで債券先物だけ(ナイトセッションで)40銭位上昇しているという辺りでして、実に素敵な侘び寂びの世界を感じるのでした。



・ちなみに「政策見直し」でも「緩和政策の強化」って言ってくると思うで

とまあそういうことで雑談の続き。

えーっとですね、何か「政策の見直し即緩和縮小」みたいな話の方がメディア受けするからメディアってそういう言い方になるのは分かるのですが、ぼーっとレポート砲弾を見ておりますと同じような理屈で「今までの総括するのに効いてなかったとか言う訳ないから縮小は無い」とかいう向きもあってもうげんなりしてしまう今日この頃。

つまりですね、そらまあどこからどう見ても今の政策ってMB増やしても別に増えた分効く訳ではないですし、マイナス金利は1億歩譲って借入チャネルから効果が出てくるのに時間が掛かるから判断を留保して差し上げても良いのですが、初期段階では金融市場と金融仲介機能に打撃を与えて副作用先行だわなとかになっておりますし、「実質金利を下げて消費や投資を出す」ってのもう3年半やって効果が無いのにこれから効果が出るという理屈もわからんし、マネタリーショックとコミットメントでインフレ期待の引き上げを行うとか言ってたのに3年半経ってもフィリップスカーブは上方シフトどころかスティープもあんまりしていない(しているんだったら今回の展望レポートで先の方のGDP見通し上げているのに物価見通しが上がらないのがおかしい)とか、盛大にツッコミどころが多い訳ですから、本当の本当に検証したら「効いたかもしれないけどあんまり効いてませんな、いやーすいません失敗失敗」となるのが妥当だと思いますが、まあ官僚組織がそんなタマの訳が無いのでそれは1ミリも期待できません。

となりますと「政策見直し」と言っても「撤退」というような形は当然とらないのですが、我が国には敗戦を「転進」と言い換えて発表するという伝説的な官僚話法がございました訳でして、見直しの結果量か金利かを諦めるにしたって、それ以外の強化を行う事によって、たとえば「政策金利の引き下げについて」と言いながら買入やMBの柔軟化を行う(マイナス金利は10か20掘る)とかして、「これだけ詰みあがったMBはそれ自体ストックとして効果を出すので、ここからは実質金利を低位に安定させることによって一段の効果が期待できるので緩和の強化です(キリッ)」とやるだけの話で、政策のパーツのメインツール(今のメインは建付け上はMB)見直しや入替(あまり入れ替えるものにイメージが無いですけど)を行って執行面の問題を軽減する(2%が直ぐに行かないので早期の執行面からの爆発を回避しないといけない)時だって、大本営発表よろしく「新たな大緩和戦線に向かうために現在の戦線の兵力を整理して大緩和戦線シーズン4に突入する」というような話をするでしょうよ。

と思うので、政策見直しで緩和は「縮小」とはならない(仮にテーパリングしたってMBのストックは拡大するんだから緩和は拡大しているぞな、市場の反応は別にしまして)のであって、どうしてそう話が極端から極端に飛ぶのかねとは思いますが、まあそれでボラが出るのは必ずしも悪いとは思わないけれども、今ってそのボラが不健全(ベンダーの飛ばしに反応したり片言隻句に反応したり)となっているのがどうもイカンのじゃないかなあとは思いますが、流動性スッカスカで日銀が買占め相場になっているのですから致し方ないことなのかも知れません。


○政府の経済対策登場

http://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/keizaitaisaku.html

経済対策の題名が何かポエムみたいになっていますがそれは兎も角としまして、

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1AJ2NI
Investing | 2016年 08月 2日 16:40 JST
〔マーケットアイ〕外為:ドル102円割れ、経済対策閣議決定で材料出尽くしか

まー実際にどうなのかは知らんですけれども、昨日は東京引け後に102円割りに行って経済対策関連ではあまり反応が無くて、

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS02H8I_S6A800C1MM8000/?dg=1
財務相、40年債増発検討 黒田総裁と会談
政策協調確認
2016/8/2 21:13

こっち関連で50年債が出ないってんでヘリマネ不発ネタにでもなったのか(50年債出さないけど40年を増発すると言ってるのにヘリマネ不発という理論も1ミリも理解できないけど)一段円高とか良く分からん展開になっていましたな。真水ちと増えている気もするんだが反応せんなあ。

でまあ今回の一連のを見ているとアタクシ的には(違っていたら平伏してお詫びいたしますが)どうも株式市場とか為替市場とかを気にし過ぎに見えまして、円高株安で何か出さなきゃ→何か出す→市場の反応が最初だけは良かったけどどうもイマイチ→やっぱり増やさないと→以下ループというようになって、まーそうなるのも分からんでもないですけれども、ちょっと市場に振らされ過ぎだと思いますのよ。でもって市場ってのは何ぼでもおかわりを欲しがるというバキュームカーのような人たちですので、一々市場の「期待」に答えているとキリがないと思うのですが、どーもこう何だかなあという感じはするのでありました、という
雑感だけ書いておきます。

#ということで総裁会見ネタに展望レポートネタがお留守になってしまうまですいません(事前にストックしろよと言われるとぐうの音も出ない)






2016/08/02

お題「決定会合レビューの続きだよ」

毎年の定例行事ですが。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160801c.htm/
総合職キャリア採用の募集について

『4.歓迎する経験・スキル
金融工学・リスク管理、会計・税務(公認会計士)、マーケット関連実務など』

だそうですので一ついかがでしょうか(^^)。

でもって引き続き決定会合レビューネタで昨日の続きですが、決定会合関連のネタ(と展望レポートネタ)がある訳でまずはその辺を。


ところで小池知事の話を見たらまだこのネタ生きていたのかよという感じです。
http://txbiz.tv-tokyo.co.jp/wbs/newsl/post_115798/
小池新都知事に聞く「国際金融都市として成長目指す」2016/08/01(月)23:00

いやあのこんなに中銀が介入していて市場もそのクレクレを前提にして、MPMの度に妄想が飛び交って場中に大荒れになるような市場のどこがどう国際金融都市としての資格があるのか小一時間問い詰めたいのですが、このネタって熊手大先生が金融担当大臣だった辺りからゾンビのように生き続けてますな。何で「意識高い系(笑)」の先生方はこのネタ好きなんでしょうかねえ。



○ドル資金供給の詳細に関して(俺様用備忘メモ)

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160729f.pdf
企業・金融機関の外貨資金調達環境の安定のための措置

ということですが、だいたい昨日申し上げた通りですけれども、あとで何だったっけと見る為にメモメモ(そういや諸般の事情で過去ログの分類整理を最近していないのでどこかでキャッチアップします)。

『1.成長基盤強化支援資金供給(米ドル特則)の拡充


── 成長基盤強化支援資金供給の4類型のうちの1つ。

・ 貸付残高の上限:120 億ドル(日本銀行保有外貨資産が原資)
・ 1先当り上 限:10 億ドル
・ 貸 付 期 間:1年以内(最長4年までの借換え可)
・ 貸 付 利 率:6か月物 LIBOR(6か月毎に変動)
・ 担 保:共通担保
・ 対 象:成長基盤強化に資する1年以上の外貨建て投融資

・ 2014 年 12 月以降、貸付残高が上限に達しており、今回、上限の引上げを実施。

@ 貸付残高の上限:120 億ドル→240 億ドル
A 1先当り上 限: 10 億ドル→20 億ドル』

ということで、マイナス金利云々の前からヘッジ付外貨運用みたいなのは円金利低下のせいで拡大してドル調達があばばばばーだった訳ですが、日銀がマイナス金利政策を行ってポートフォリオリバランスを促した所でお助け措置をどさくさに紛れて入れてきましたなという結構なお話。

ただまあこの手のお助けものっていうのは政策的に言いますと、市場金利の上下限を決める為のものであれば常設ファシリティとして置いておくという事になりますが、こちらにつきましては物が外貨資金調達になりますので、そもそも論として相手国の短期市場に影響がある話になりますからして、常設ファシリティを他国が勝手に作るというのはさすがに掟破りににも程があって・・・・・・・・・・・

『2.米ドル資金供給オペレーション用の担保国債の貸出

【米ドル資金供給オペの概要】
── 6中銀スワップ取極の枠組みに基づく米ドルの資金供給オペレーション。

・ 貸 付 総 額:無制限
・ 1先当り上 限:なし
・ 貸 付 期 間:3か月以内(現在、1週間物を原則として毎週実施)
・ 貸 付 利 率:ニューヨーク連銀が指定する利率
・ 担 保:共通担保

・ 米ドル資金供給オペ利用先が日本銀行に差し入れる担保として、日本銀行保有の国債を米ドル資金供給オペ利用先に貸出す仕組みを導入。
── 当面、レートは、補完当座預金制度適用利率(政策金利残高分)となるよう設定。』

とまあそういう訳で、これは常設ファシリティチックではあるのですが、お金を出すのがNY連銀となっていて利用の方として常設ファシリティ化するのはアカンという話でして、これはそもそもがバックストップとして設けているのだから、バックストップを常設ファシリティとして使うのは使っている金融機関の個別プルーデンス問題になりますよ、とまあそういう整理になっています。

・・・・・・・・でまあそれはそれで良いのですが、この手のバックストップ的な措置に関して頻繁な利用は個別金融機関へのスティグマであるという話をするのはまー理屈は良く分かりますし、恐らく今の時点では制度作ってそんなに長くないですし、金融市場のストレスって時々ホイホイとネタになるという状態でそれなりに意識があると思うのですよね。

ただ、この手のスティグマ問題っていうのは制度作って時間が経過していくとともに、スティグマである!というのが意識として抜きがたくなってしまい、その結果として肝心の市場ストレスが掛かっている時にスティグマ問題があるからバックストップのファシリティを使えない、というようなしょうもない弊害が生じたのは米国金融危機時代のディスカウントウィンドウがまさにそういう状態になったと思うの(結局米国の場合は別途の資金供給系のオペを作ってましたが)。

つーことで何を言いたいかと申しますと、この手のバックストップってスティグマ問題を強調する(どうせ五月蠅いのは米国であって日本や欧州はそこまでスティグマスティグマ言ってないけど金主のNY連銀が五月蠅いから言っていると邪推)と市場環境が急変した時に使い物にならない(使いたいけれどもスティグマ発生して自分の所の信用問題にヒットしちゃうぐらいならファシリティ使わずに市場で何とかしようとするインセンティブが発生するから)ことになりますので、市場動向に応じてスティグマ問題というのに関する考え方も調整できれば良いのです(が市場最前線ではない中央銀行にそれを求めるのも酷ということで毎度色々と危機においてはフリクションが発生する)けどね。


○輪番のちょこまか調整は大概に何とかならんのか

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160729e.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160630e.pdf(前回)

『(注5)2016 年 8 月 1 日以降の最初のオファー金額は、
残存期間 1 年以下 700 億円、
残存期間 1 年超 3 年以下 4,000 億円、
残存期間 3 年超 5 年以下 4,200 億円、
残存期間 5年超 10 年以下 4,300 億円、
残存期間 10 年超 25 年以下 2,000 億円、
残存期間 25 年超 1,200 億円、
物価連動債 250 億円、
変動利付債 1,000 億円
とする予定です。』(今回)


『(注5)2016 年 7 月 1 日以降の最初のオファー金額は、
残存期間 1 年以下 700 億円、
残存期間 1 年超 3 年以下 3,750 億円、
残存期間 3 年超 5 年以下 4,400 億円、
残存期間 5年超 10 年以下 4,300 億円、
残存期間 10 年超 25 年以下 2,000 億円、
残存期間 25 年超 1,200 億円、
物価連動債 250 億円、
変動利付債 1,000 億円
とする予定です。』(前回)

・・・・・( ゚д゚)

物国の調整を除きますと、ご案内のように3月期末に急に月中に調整を入れたのを皮切りに、

4月:超長期前半200億円↓+超長期後半200億円↑
5月:超長期前半200億円↑+超長期後半200億円↓
6月:超長期前半200億円↓+超長期後半200億円↓
7月:超長期前半200億円↓+超長期後半200億円↓+長期200億円↓+中期1-3年250億円↑

と来ていたのですが、

8月:中期1-3年250億円↑+中期3-5年200億円↓

とまあ何をやりたいのか良く分からんオペ内訳の変更で、ついでに額が1回50億円なので月間300億円動くという結果になっていまして、片やETF買入を2.7兆円拡大しているのにMB拡大ペースを変えないで「金融緩和の強化」と説明するという謎理論になっているのに、一方のオペはその月間300億円の総額調整とか何の微調整だと言いたくなりますし、中期の前半と後半をいじってくるのって何なのとしか申し上げようがない。


・・・・・・・・でですね、この輪番内訳に関しては決定会合では

『2.資産買入れ方針(議長案)

議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、次回金融政策決定会合まで、@長期国債の保有残高が年間約 80 兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う、ただし、イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、金融市場の状況に応じて柔軟に運営する、また、買入れの平均残存期間は7年〜12 年程度とする、(以下割愛) 』(4月決定会合議事要旨より引用)

という形になっていますので、建付けとして調節やってる部署(金融市場局)のほうで言われているのは「長期国債の保有残高が年間80兆円増えること」「イールドカーブ全体の金利低下を促す観点で行うこと」「市場の状況に応じて柔軟に運営すること」「買入国債の平均残存年限を7〜12年程度にすること」となっていて、それに沿った運営をしている、ということになっているようなのです。

でまあそれは良いのですが、たとえば今回の変更にしたって中期の中で短い所を増やして長い所を減らしていまして、それはまあMPM前の時点で2年と5年がインバートしていたこととか、直前の2年入札が盛大に滑って短い所の需給が悪化したとか、そういう市場状況を踏まえてのことだと思うのですがちょっと待って頂きたい。

つまりですな、そもそも2年5年がインバートなんてそれ需給もあるけれども背景として政策金利引き下げの刑を食らった場合にどちらがヘッジとしてワークするかというようなことを考えた場合にはそらまあインバートしても何らおかしくは無いでしょうという話でして、恐らくはその辺の状況と足元の需給に応じて「金融市場の状況に応じて柔軟に運用する」として調整を入れていると思うのですが、そもそも論として昔のように日銀の輪番がそうは言ってもドミナントじゃなかった時とは全然違いまして、日々の需給読みに輪番の日程がどうなるというのを極めて真面目に予想をするとかいう状態になり、輪番(と入札だが入札は事前に日程も額も読めるのでそこは最初から織り込んで計算する)日程の読み方が需給を振り回すみたいになっている訳ですよね。

そこに来てこの毎月月末引け後になると翌月の買入の変更が入ると来ますので、日銀の輪番額変更がカーブ形成に影響を与え、その動きを見た結果としてまた日銀の調整が入る、みたいな事になってしまいますと、まさしく「自分の尾を追う犬」という状態になってしまいかねませんので「動かない」というのも作った方が良いと思うんですけどね。

あとはこの微調整に関して、市場局で出しているのですから政策インプリケーションは無いという建付けになっているのは明らかなのですが、そうは言いましても超長期の金利が低下してから暫くして急に超長期の輪番が減りだした挙句に7月分ではツイストのような事が行われるなどというのを見ると、そらもう市場の方は「実はステルスで政策メッセージを出しているんじゃないか」と疑心暗鬼になる(そういうトークは割と多いんですよ)というような弊害もありまして、機械的に運用しているならそのロジックを出して頂きたいですし、裁量持ってやるならそれはそれで良いのですが、昔の短期トン調節時代みたいに裁量のベースになる判断材料が出ていないと、結局のところ何が何だか分からないので月末になると変な思惑が出る(今回はそもそもMPMだったからオペとはあまり関係なかったけど)とか、やり難くて敵わん次第で、何をどうしたくて毎月調整しているのかをもう少し示すか、変更は未達のような極端な事が無い限りは四半期程度のペースで調整するとかにして、毎月変なイベント扱いになるのは勘弁して頂きたいものでありまする。


○MPMの日程に関しては今回改善の跡が見られて誠に結構

うむ。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160729b.pdf
2017 年の金融政策決定会合等の日程

とにかく以前より実に困ると思っていたのが4月の展望レポートで、毎度の如く大型連休直前の昭和の日前日にMPMが実施されるので、その後市場がネタを消化する前に大型連休に入って連休明けには海外がネタをちゃっかり消化して国内勢あばばばばーという事案が多々あった訳ですが。今回の決定会合日程を見ますと、月末開催は1回で展望レポートのある会ではありますが火曜日がケツですし、4月は昭和の日の2日前に終わるようになっているので翌日に市場があります(なお来年の昭和の日は土曜日なのでただの土日だ)し、週末開催になるのは6月ですが、展望レポートの無い会なのでそんなにややこしい事も無いような気がするというような感じで、随分とこう工夫した日程になっております。

なお、先般このようなものが出ておりましたが、この日程と上記日程を比較してみましょう、などということは良い子の皆さんはやってはいけませんのでご注意ください。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomccalendars.htm#26566
2017 FOMC Meetings


○基調的な物価ェ・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpipre.pdf
消費者物価の基調的な変動

総合(除く生鮮食品・エネルギー): 5月0.8→6月0.8
刈込平均値: 5月0.2→6月0.1
上昇品目比率−下落品目比率: 5月35.3→6月34.4

・・・・・・・もはや何も申し上げる事はございません、お大事に。


○おお時間がないが総裁会見の前半という事で

すいませんすいません。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2016/kk1608a.pdf


・何故ETFだけとは聞きますな

『(問) 2 点伺います。今回、ETFの買入れ額を増加しましたが、なぜマイナス金利の深掘り、あるいは量の拡大をしなかったのか、それらの政策が限界に近づいているのではないのか、その点についてお聞きしたいのが 1 点目です。もう 1 点、その質問を踏まえてですが、次回、総括をすると言われましたが、なぜこのタイミングなのかと唐突な感じもします。そこで、これまでやってきた政策のスキームチェンジまで考えていらっしゃるのか、なぜこのタイミングでそういうことをやろうとされているの消費者物価の基調的な変動か、お考えを頂ければと思います。』

でまあ後半では総括検証の質問で、今回はこの質問がバカスカ出ていますね、当たり前ですけど。

そしてこの答えがアホのように長いというのも味わいがあります。

『(答) まず、マイナス金利あるいは量的な拡大が限界にきているのではないかとの点については、限界にきているとは考えていません。』

来ているとは言っていないが近づいているという認識はあるのではないでしょうか????????そうじゃなかったら素直におかわりするようにしか思えませんけどねえ・・・・・・・・・・・・・

『マイナス金利については、本年 1 月に導入を決定して以来、市場に受け入れられて、マーケットとしてもうまく機能するようになっています。』

ダウト。

『金利の引下げ効果は非常に大きいものがあり、既に金融資本市場だけでなく、実体経済にもプラスの影響を及ぼしつつあると思っています。』

先生!インフレ期待は下がっているし基調的な物価も頭打ちです!!!

『これについて何か限界がきているとは考えていません。欧州の状況などを見ても、まだまだマイナス金利を更に深掘りしていく余地はあり得ると思っています。』

先生!欧州は日本のような大規模資産買入状態になっていないですが単純比較していいんでしょうか!

『量的なものについても、年間 80 兆円に相当するペースで国債保有額を拡大していくことを通じて、おそらく国債の 3 分の 1 くらいを既に取得していると思いますが、逆に言うと、まだ 3 分の 2 が市場にあるということでして、今、何か量的な限界にきているとは全く思っていません。』

国土の3分の1が戦略爆撃で焼け野原になりましたが、逆に言うとまだ3分の2が焼けていないということなので一億突撃火の玉だということですね、わかります。

『現に、日本銀行による国債の買入れについて何らかの障害が出るとは全く思っていません。そうした意味で、マイナス金利あるいは量的緩和の拡大が限界にきているとは全く思っていません。』

そらまあ思っているとは言えんというのは分かるが、それを強調するあまりに説明がヤケクソになっているというのはさすがに末期症状。

『むしろ、先程申し上げた通り、あるいは公表文にも書いてある通り、今、英国のEU離脱問題あるいは新興国経済の減速を背景にして、海外経済の不透明感が高まり、国際金融市場で不安定な動きが続いているわけで、こうした不確実性が企業や家計のコンフィデンスの悪化につながることを防止するとともに、わが国の企業および金融機関の外貨資金調達環境の安定に万全を期して、前向きな経済活動をサポートする観点から、今回のようなETFの買入れ額のほぼ倍増や企業・金融機関の外貨資金調達環境の安定のための措置を導入したわけです。これが、現時点で、最も有効で適切な政策であると考えています。』

海外中銀は様子見ですけどね、というのと、「ETFが企業コンフィデンスを高める」(外貨ファンディングの負担軽減は銀行チャネルを通じて好影響なのと、一般企業の外貨調達にも資する面もあるでしょうからその点はまあ分かる)という理屈も今回初めて繰り出された理屈でして、そういう風に政策反応関数が毎度毎度コロコロと変わって、「こういう施策をするとこういう波及経路を持って主にこういう事に効果を出すことを期待している」というのがその時その時で実施したい施策に対して後付理屈でホイホイと設置するもんだから、段々市場の方が何をやるか訳分からなくなるのですよね。

確かに非伝統的政策だから分かりにくいとか、予見可能性が下がる面は致し方ないのですが、「このような状況でこの点にボトルネックがあるのだから日銀はその点を解消する為にこのような政策を行って、こういう形でその政策が波及していくので効くのではないか」という点について日銀が何か考察を出すでもない所か、今申しておりますようにやった政策に後付で理屈を捻りだしてくるというああいえばこういう状態になっているのですから、そら市場の方も解釈が混乱するというのもので、やれヘリマネだなんだというような話がバカスカ飛び交うというこのアホアホ状況については、日銀がきちんと政策反応関数や政策の波及メカニズムについて説明していない事も大いに悪影響を与えていると思うのですよ。

実際に効くかは後になってみないと分からない面があるのは仕方ないにしても、そのレビューだって碌に無かった訳ですし、まあ今回のMPM前の大混乱カオス市場(債券よりも他のカオスが酷かったですな、まあ結果後は債券がカオスになりましたが、笑)とかコミュニケーションをグダグダにして2%物価目標を2年で達成するという目標に対する結果が碌すっぽ出ていない(これちなみに結果さえ出ていればコミュニケーションがある程度グダグダでも意外に何とかなるというのは逆さ絵おじさんのFRBで示されておりますな、ドラギ先生はどうも気が付いて態勢の立て直しに入っているように見えます)という今の日銀の惨状がコミュニケーショングダグダと相まって絶賛炎上モードになったという事でしょう。

・・・・・・とつい悪態になってしまいましたが続き。

『展望レポートにもあるように、また、冒頭の説明でも申し上げた通り、経済成長率は、足許、特に 2017 年度の成長率は、経済対策等の効果もあってかなり上振れています。物価についても、足許は予想より低下していますが、今申し上げたような成長率の上振れその他によって、2017 年度、2018 年度の物価の見通しは従来と変わっていません。そうした中で、最も適切な金融緩和の強化策を採用したとご理解頂きたいと思います。マイナス金利あるいは量的緩和に限界がきたということは、全くないと考えています。


だから何でETFが適切なのかが分からんし、これ経済対策の効果が過大評価だった場合は追加緩和をするの??と聞きたくなる。置きの問題だから追加緩和をしたくないからそう置いたんじゃないの???という話になるわな。


『総括の点についても、公表文で示した通り、海外経済・国際金融市場を巡る不透明感などを背景に、特に物価見通しに関する不確実性が高まっている状況を踏まえて、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する観点から、次回の金融政策決定会合において、この 3 年強の間の色々な金融緩和の下での経済・物価の動向、あるいは政策効果について、「総括的な検証」を行うことにしました。』

まあ何だかねという話は昨日もしたのでしつこくなるから割愛(^^)。

『もちろん、スタッフは常に分析をしているわけですが、「量的・質的金融緩和」を導入して 3 年強、そして「マイナス金利」を導入して半年――1 月に決定して実際に適用されたのは 2 月からですから半年位――というところで、「総括的な検証」を政策委員会において行うということです。政策委員会の全てのメンバーがこうしたことが望ましいと言われまして、この公表文に示したということです。具体的に、「総括的な検証」を行った後の金融政策については、「総括的な検証」を行ったうえでのことですが、明確なのは、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために何が必要かという観点から、「総括的な検証」を行うということです。』

ここちょっと疑問なのですが、確かに今の建付けはそうなっていますけれども、そもそも論として「できるだけ早期に」について木内委員は反対してますし、「2%の物価安定の目標」に関しても木内委員や佐藤委員の言う2%の安定と置物副総裁が言うようなものとは違っていると思いますし、達成の定義もアクチュアルな物価の話なのかフォーキャストターゲットなのかとかも敢えて曖昧になっている次第で、こういう定義論について全く触れないというのも変じゃないのかねとは思いますが、まあ最初の時点で定義論に触れると言った瞬間に世紀末救世主伝説市場になってしまうから、出さないというのもまー分かるけど、実際問題としてどこまで踏み込んで行くのかがイマイチ見えない説明ですよね。もしかしたら「主な意見」の所でもう少し見えてくるのかもしれないですしそれを期待したいですけどね。

ということで質疑一つで時間切れになってしまいましたすいませんすいません。






2016/08/01

お題「決定会合レビューである」

自民と民進の東京都連が間抜け揃いなのが良く分かる都知事選挙でしたが、当選した方も「これまでにない都政、これまで見た事が無い都政」とか余計な事や出来ないことをやって爆発炎上のフラグにしか思えないので2年以内にまた都知事選が実施に100ドラクマ。

ということでそれは兎も角決定会合。

○色々とツッコミどころの多い今回の決定会合ではありました

声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160729a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160616a.pdf(前回)

展望レポート基本的見解
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1607a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1604a.pdf(前回)

まー色々とツッコミどころは多いのですが・・・・・・・・・・・

・先にアタクシ的な総括:甚だ恥ずかしい「金融緩和の強化」ですが見直し内容によっては評価できる

兎に角ですね、今回の決定内容を声明文の形で見た時に「こんな声明文出して恥ずかしくないのかね」とは思ったのですが、まあ最後に項番5を見てああそうですかやっと現実的な収拾策考えましたか、という感想になったので、まあその点がアタクシの想像通りに行くならば評価しようじゃないの、ってな感じですな。

つまりですな、そもそも今回ETFの拡大だけというのは品が無いのと、これまでの金融緩和の日銀的な定義からズレてくるのでやらないでしょとか思っていたのですが、堂々とETF拡大だけで「金融緩和の強化について」って来たのには腰が砕けましたし、ブリクジットに関してFEDとか「短期的なリスクは消えた(diminish)」とか言うわBOEやECBが金融政策の様子見に入るわという中でブリクジットを声明文の1発目に突っ込んでくるとか、まあ見てる方まで恥ずかしいにも程がある声明文ではあるのですけれども、一方で今回は金利も量も拡大していないとか、その上で項番5にある見直しをしてくるとかいう所でして、まーその辺については今後どうなるか次第ですが評価できる方向性になるかも知れませんなという感じです(ただしETFの拡大にも問題があると思うという悪態は先の方に)。


・金融緩和の強化?????

今回の冒頭表現が『金融緩和の強化について』となっているのですが・・・・・・・・・・・

昨年の決定会合声明文一覧
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2015/index.htm/

こちらを見ると分かりますが、昨年12月の「補完措置」って『当面の金融政策運営について(「量的・質的金融緩和」を補完するための諸措置の導入、12時50分公表)』というお題になっていまして、この時って「量的・質的金融緩和」を補完するための諸措置の導入」というのがあって、設備・人材投資ETF買入という謎の措置があったりしましたが、その中で長期国債の買入平均年限を7-10年から7-12年に伸ばすというのもやっていまして、これって買入の年限が長期化されるという事になりますから、「質的な緩和の強化」でもあった筈なのですが、この時は「マネタリーベースの拡大ペース引き上げを伴わないから追加緩和ではありません」という整理をしていた筈なのですよね。

一方で今回の追加緩和においてはマネタリーベースも金利も変更が無いのに「追加緩和」という説明になっていまして、これって従来の整理と違っているのですが(量的質的金融緩和自体はマイナス金利の前からやっているのでETF単独の拡大が質的な緩和だったら長期国債の買入平均年限の長期化も緩和と説明して然るべき)、何で今回は「金融緩和の強化」という看板を出したのかが謎、というかどこからどう見ても大人の事情(銃声)。

#つーかヘッドラインで「追加緩和」って出たのに量も金利も変わらなかったので「はぁ?」でございましたわ


ちなみに英文のお題はこうなっています。

今回
http://www.boj.or.jp/en/mopo/mpmdeci/state_2016/index.htm/
Enhancement of Monetary Easing [PDF 67KB]

昨年12月の補完措置
http://www.boj.or.jp/en/mopo/mpmdeci/state_2015/index.htm/
Statement on Monetary Policy (Introduction of Supplementary Measures for Quantitative and Qualitative Monetary Easing, Announced at 12:50 p.m.) [PDF 32KB]

一昨年のバズーカ2
http://www.boj.or.jp/en/mopo/mpmdeci/state_2014/index.htm/
Expansion of the Quantitative and Qualitative Monetary Easing (Announced at 1:44 p.m.) [PDF 65KB]

量の拡大を伴っていないからExpansionじゃないのか、3方向の一方だけだからEnhancementなのか知りませんが、英文の表記が色々とございますなあという感じで。

・下振れリスクで何故ETF??????

今回の追加緩和にの背景については項番1に記載がされていますが、まあ出オチにも程があるのでそこを引用しますと、

『1.英国のEU離脱問題や新興国経済の減速を背景に、海外経済の不透明感が高まり、国際金融市場では不安定な動きが続いている。こうした不確実性が企業や家計のコンフィデンスの悪化につながることを防止するとともに、わが国企業および金融機関の外貨資金調達環境の安定に万全を期し、前向きな経済活動をサポートする観点から、日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下の措置を決定した。』(今回声明文より)


>英国のEU離脱問題や
>英国のEU離脱問題や
>英国のEU離脱問題や

・・・・・・・・さっきも書いたけれども、今月はBOEも影響見るからと現状維持、ECBは結構オトボケで現状維持、FEDは態勢立て直しモードに入って「短期的な下振れリスクは解消した」というアセスメントまで出す中で、その3中銀よりも英国の影響が小さいとしか思えないジャパンの中央銀行がブリクジットをお題にして追加緩和実施とか、それってお前ジャクソンホールのシンポジウム行って恥ずかしいとか思わないのかと小一時間問い詰めたい内容でして、言い訳に出すにしたってもうちょっとマシな言い訳を出せよという所ではございます。

>国際金融市場では不安定な動きが続いている
>国際金融市場では不安定な動きが続いている
>国際金融市場では不安定な動きが続いている

・・・・・・・・・えーっと、株価とかブリクジット前を大体奪還してて、流れとしてはリスクオンに戻っていると思うんですが(以下さっきの繰り返しになるので割愛^^)。

とまあそういう理由づけもワケワカランですが、今回はETFの拡大「だけ」というオモシロ決定になっている訳ですよこれがまた。

つまり展望レポートに記載されている見通しの方で言いますと、成長率見通しは政府の経済対策で思いっきり下駄を履かせているようで上方修正、物価見通しは先行きの2%到達時期を含めて長めの見通しに変化は無し。ということでメインシナリオに関しては変化が全然ない(目先の所は弱含みになっていますが先の見通しには変更が無いという事ですからね)となっていますので、本来ならば追加緩和をやる必要があるのかどうか謎な訳ですよ。

もちろん「下振れリスク対応」で追加緩和というのは、バズーカ2の時にも「インフレ期待の下振れリスクに対応」という形で実施していますが、逐次投入で下振れに対するプリエンティブな対応で追加緩和(福井の俊ちゃんが得意技としていましたが)というのがあっても良いのですけれども、仮に下振れ対応でプリエンティブで追加緩和を実施、というのであれば、今回少なくともマネタリーベースの拡大か政策金利の引き下げという措置を実施しないと今までの政策フレームワークとの整合性が取れないのですよね。

従ってETF「だけ」というのがそもそも訳が分からないですし、元々ETFなどのリスク性資産の買入というのは「リスクプレミアムの縮小を行い、市場価格を安定させることによって金融政策の波及メカニズムをワークさせる」という措置だった筈で、ETFの買入拡大を「追加緩和」と称すること自体が話が変だろという事でもあります。即ち、リスクプレミアムが発生しているのでそれを縮小させて適切なプライシングを促す、という意味でのリスク性資産の買入であれば政策として意味が分かるのですが、自分から追加緩和と称して買入を一段と拡大させる、というのは最早リスクプレミアムの縮小ではなく、リスク性資産の価格形成において、リスクプレミアムをマイナス方向、すなわち金融不均衡を発生させる方向に追加措置を行った、と宣言するに等しいお話な訳で、金融政策としてそもそも適切なのかという問題があって、その点においては現行のペースでも如何な物かと思っていたのに6兆円ペースとかお前ら何考えているんだ、というのは大いにありますな。

とまあそう考えますと、6兆ペースにする必要あるのかというこの数字の根拠をどう出しているのか、そもそもこのETF買入拡大がどのような政策波及効果を狙ったものなのか、という定量的&定性的な評価を出せやゴルァ!と暴れようかと思ったら項番5があるので勘弁してやろうかというようなお話になるのでありました。


・項番3も何ちゅうかとしか申し上げようがない

『3.この間、政府は、大規模な「経済対策」を策定する方針にあるなど、財政政策・構造政策面の取り組みを進めている。日本銀行としては、今回の措置も含め「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を推進し、きわめて緩和的な金融環境を整えていくことは、こうした政府の取り組みと相乗的な効果を発揮するものと考えている。


まー項番1のブリクジット云々がとにかく今回の声明文を禿しく見苦しくしている(というかお笑いにしている)元凶ですが、この項番3も何を申し上げたいのかという所ですの。まあ今回の展望レポートで政府の経済対策を思いっきりトッピングすることによってメインシナリオを変えずに済んで、その結果政策金利やマネタリーベースのおかわりをしなくて済んだ謝辞ですかそうですかという感じですが、一応金融政策と財政政策の連携はあるけど別に一体化している訳ではないとか言いたいんでしょうが、まあ分からん人が読んだらヘリマネの布石とか取られるような書き方でもあって、こういうのは下手に入れない方が良いと思いますがね。いやまあ実はヘリマネの布石でしたってんだったら別に良い(良くは無いが)んですけど。


・項番4はいつもの文章ですが・・・・・・・・・・・・・

『4.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続する。今後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、「物価安定の目標」の実現のために必要な場合には、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じる(注4)。


と言っているのですから、ブリクジットの影響で追加緩和の実施が必要だというのであれば、金利なりマネタリーベースなりのおかわりをすれば良いという話ですが、項番5の政策見直しキタコレとなっておりますので別の小見出しで参りましょう。


○項番5の「政策検証」は見解が割れるので9月まで思惑(やヘナチョコヘッドライン)で荒れるでしょうな

『5.なお、本日公表した「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で示した通り、海外経済・国際金融市場を巡る不透明感などを背景に、物価見通しに関する不確実性が高まっている。こうした状況を踏まえ、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する観点から、次回の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」・「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとでの経済・物価動向や政策効果について総括的な検証を行うこととし、議長はその準備を執行部に指示した。


まあ各種措置よりもこちらの方が注目度大となった訳ですが(当たり前ですが)、まあ一見して何が何だか良く分からない悪文になっているのが実にこうアレな訳ですが、この場合悪文にしているのは「どうとでもとれるような書き方にしている」というお話な訳ですよ。

「物価見通しに関する不確実性が高まっている」という認識を示し、「2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する観点から」政策について総括的な検証を行う、という説明になっていますが、その見方としての読み筋は全く逆の2方向となる訳で、

(1)色々と最近評判が悪いので悪評を叩きのめす理論的なバックボーンを作ってから追加緩和や!!!
(2)これまでの政策の限界が色々と出てきたから政策の転進を目指すための整理遂にキタコレ!!!

という両方の解釈が可能でありまして、現にMPM出た直後からその双方の何とかストレポートが飛び交いだしておりまして、今日になったら更にそれがクルスク大戦車戦の如く砲弾が飛び交うの図となるでしょうなあと思いますし、次回決定会合まで結構な日数があるので、その間に思惑記事みたいなのが飛び交ってみたり、早速今週は4日に置物副総裁の置物駄話会(またの名を金融経済懇談会)が横浜方面で行われるようですので、そういう機会での会見とか、まあ色々な機会で解釈論が盛り上がって相場が振らされることになるかと存じます。

でまあせっかくですので金融政策にイヤミと悪態を申し上げるのを趣味としている(筈では無かったのだが・・・・・・・・)不肖このアタクシも解釈論を一席申し上げますと、まあ後者の方じゃないですかねえと思うのですよ、その根拠は以下のような感じかな。


えーっとですね、元々現行政策が特段問題なくワークしていて、こうかもばつぐんだ!という風に認識しているんだったら、別にこんな包括的な検証云々とかしなくても良い訳ですし、それこそ今回は下振れリスク対応で自称追加金融緩和を行っている訳ですから、問題ないと思っているのであれば今回政策金利の下げなり長期国債買入の拡大なりその両方セットなりを実施すれば良いはずなのですよね。

然るに今般は金利も量もいじらずに、ETFの買入ペース拡大だけをもって「追加緩和」と政策の看板を「盛る」形にしてきた訳ですから、それはもう「マイナス金利下で量の大規模拡大を志向する政策(そもそも今の政策枠組みは「マネタリーベースの拡大ペース」が調節方針で金利ではない)の遂行に問題があり、このままでは執行で行き詰ってしまうという事を認識したからこそ政策の限界を手前に寄せる追加緩和を回避した、ということだと思うのですよ。一方で色々と大人の事情とか市場のクレクレがやかましいとかいうのがあるから追加緩和を何かしておかないといけないので、とりあえずおかわりをしても直ぐに限界にぶち当たらない(筈の)ETF単独拡大というのを下品を承知で実施した。とまあこういう解釈になるのって自然じゃありませんかね????????

もちろん(1)のような考えも成り立つと思うので別に全否定する気は無いですけれども、そもそも問題が無いと思っているならば今回追加緩和期待も高かったんですし素直に量や金利の政策が出てきていたと思うので、「追加緩和の予告型」というのは当たらないと思うのですよねー。予告だったら「新たな政策手段の検討」というようなものが出る筈。


まー(1)だと思ってしまうのは、会見でも総裁が説明していたし、こちらの声明文にもありますように「2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する観点から」という文言が入っているので、2%は変わらない、出来るだけ早期にも変わらない、となるとそらもう追加緩和をやらないと2%にも届かないし早期達成も出来ないでしょ。という発想になると思うのですが、そもそもこの2%とは何ぞや的なお話をするとか、フォーキャストターゲット的な意味での2%であるともっと明示的にするとか、まあ色々と2%もいじりようがあると思うのですよね。

それに「できるだけ早期に達成」とありますが、元はこれって「2年程度を念頭に」というのがあった訳で(QQE導入当時の声明文http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130404a.pdfをご覧ください)、いまに始まった訳ではないですが2年程度というのをしらっと抜かしており、こちらでの検討指示文言でも堂々と外している以上、「できるだけ早期に」というのをこれまた心の問題にすることは可能で、「できるだけ早期に達成する努力はしているけれども、そもそも経済は生き物なので先般の原油価格みたいに我々のあずかり知らぬところで問題が起きる場合もある」とか言い出すのも可能。

もちろん(2)と考えているにしたって今からそれを前面に出す訳には行かない(というか転進モードになるにしたっていきなり9月から転進するのもフリクション大きいから難しいのではないかと思う次第)でしょうから、いきなり上記のような総括が出てくるのかも謎ではありますけれども、まーここは素直(かどうか知らんが)に政策の限界が近づいてきたので、政策の限界とか言われ出す前に戦線の整理縮小を企図している、という風に読みたいと思います。

なお、英文では以下のようになっています。

『5. As shown in the July 2016 Outlook for Economic Activity and Prices (Outlook Report) released today, there is considerable uncertainty over the outlook for prices against the background of uncertainties surrounding overseas economies and global financial markets. Against this backdrop, with a view to achieving the price stability target of 2 percent at the earliest possible time, the Bank will conduct a comprehensive assessment of the developments in economic activity and prices under "QQE" and "QQE with a Negative Interest Rate" as well as these policy effects at the next MPM. The Chairman instructed the staff to prepare for deliberations at the next meeting. 』(今回声明文英文版より)

a comprehensive assessmentですかそうですか。


○ドル供給関連は特則部分はウマーですな

実施施策のうちドル供給部分はまあ宜しいのではないでしょうか。

『(2)企業・金融機関の外貨資金調達環境の安定のための措置(全員一致)

@ 成長支援資金供給・米ドル特則の拡大

成長支援資金供給・米ドル特則(企業の海外展開を支援するため、最長4年の米ドル資金を金融機関経由で供給する制度)の総枠を 240 億ドル(約 2.5 兆円)に拡大する(現行の 120 億ドルから倍増)。

A 米ドル資金供給オペの担保となる国債の貸付け制度の新設

金融機関に対する米ドル資金供給オペに関し、担保となる国債を、日本銀行当座預金を見合いとして貸し付ける制度を新設する。』

一々倍にするのが好きですなと思いますが、ドル特則に関しては現状でも枠いっぱいまで利用があるという人気オペになっておりますし、最近ますますドル運用ニーズの高まる中でベーシススワップがアイヤーという感じになっておりますので、そーゆー意味では嬉しい話ですがまあ1兆円少々の拡大ですかまあ仕方ありませんねという感じ。

2番目のドル資金供給オペですが、これに関して言えば常設ファシリティとして利用するようなオペになれば更にウハウハという感じではあるのですが、資金出す方のFEDが当たり前ですがそんな事されたら自国のファンディング市場に無駄な変化を生み出す事になるからそらまあ首を縦には振ってくれませんよねと思いますので、常設ファシリティ化というのは難しいでしょうな。まあこれが常設ファシリティになったら腰抜かしますが。

しかし「当預担保に国債をSLFで貸し出す」とかMB出した側から回収しているようなもんでして、モノがドル資金だから話としては成立しますが、MBの量に意味がある派の方からするとどうなのでしょうかねとも思ったりします。


#というところで続きは明日以降