薬師丸ひろ子、原田知世を一躍アイドルへ導いた大林宣彦監督が振り返る“あの時代”

2016年7月29日15時0分  スポーツ報知
  • 撮影時を振りかえる大林宣彦監督

 今年、角川映画は1976年「犬神家の一族」(市川崑監督)の第1作から40年。「人間の証明」「セーラー服と機関銃」「蒲田行進曲」など昭和の邦画史に残る名作48作が一挙上映される「角川映画祭」が30日、角川シネマ新宿で始まる。「ねらわれた学園」で薬師丸ひろ子(52)を、「時をかける少女」では原田知世(48)を一躍アイドルへと導いた大林宣彦監督(78)が“あの時代”を振り返った。

 ―ずいぶん昔に感じられますか。

 「40年前だからといって昔の映画ではないのね。あの時代にしかできない、あの時代を表現したジャーナリズムなの。角川映画は不思議とノスタルジーにならない。映画を使って本気で時代を変えるつもりでいたからね」

 ―日本のメディアミックスの“生みの親”とされる角川春樹氏(74)とは世代が近かった。

 「僕たちは日本で最初に平和な時代を担う大人だったのね。ずっと物と金の高度経済成長に疑問を持ちながら。1950年代にいち早く映画界はバブルがはじけて。黒澤明監督ですら自由に撮れない状態で」

 ―角川作品のメガホンは6作。「ねらわれた学園」(81年)の話を。

 「春樹さんに『薬師丸ひろ子ってアイドルになりませんかね』と相談されたのが始まり。将来を嘱望されながら、人気がなくて。じゃあ、ひろ子の“ワッペン映画”を撮ってやろうと。隅々まで任せてくれた。命がけでやりましたよ。本人は理解できずに演じていたでしょう。公開後は倍、倍にお客さんが増えて。でもひろ子は本物の女優。アイドルを脱するために相米(慎二)組に。『セーラー服と機関銃』(81年)は、あれはアイドル映画ではありませんよ」

 ―ヒットした理由をどうみますか。

 「コツがあってね。ひろ子はアイドルとして欠点だらけ。スタイルは悪いし、脚も太い。でも実は人に見せたくない顔が一番かわいいの。寝顔やくしゃみしたり。いまのアイドル映画がダメなのは、いいところばかり撮ろうとするからだね」

 ―「時をかける少女」(83年)では原田知世が一躍有名に。

 「キャメラの隣に立つのが僕の演出。まばたきひとつも口移しのように伝えて。僕と向き合って芝居するから必然的にキャメラを見る。スクリーンを見ると観客は自分が見られている感覚になる。彼女は早くに引退すると思ったけれど、多くが知世に恋しちゃったんだね」

 ―大ヒットしても評価は厳しいものでした。

 「日本の大人は『こんなの映画じゃない』と言って。ベスト10とか入ったことがない。ジレンマ? 全然。こちらから無視ですよ。僕よりレベル低い人間が選ぶんだから。こっちは本気で100年後に理解されればいい、くらいに思って撮っていたからね」

 ―最近の若い出演者の映画について。

 「既成のアイドルでその力を使おうとする。無名の新人を使うべき。専属のヘアメイクを連れて歩くことから大間違い。役でなく、いつも本人のまま。映画のメイクは本来、エキストラまで全出演者を見るもの。映画はファッションショーじゃないんだから」

 ―いま海外で監督の作品が見直されています。

 「この前イタリアで生涯貢献賞というものをもらってね。向こうでは『―学園』でひろ子が一生懸命に平和を訴えているから、子供向けの反戦映画というとらえ方。日本で酷評されたものが。つくった僕も驚くほど深く見ている。戦争はすぐに始められるけれど平和をつくるのに100年、200年かかる。いまが戦後でなく、戦前かもしれないよね」

 ―80年代後半辺りから一時期の勢いを失います。

 「春樹さんと話しましたよ。今日も満員。だけど違う。昔は熱気があったのにいまの行列は惰性ですね、と。春樹さんはプロデューサーをやっていたときは全て見えていたものが、監督を1本やって『何も見えなくなった』と。これらのいろんな背景が一時代の終焉(しゅうえん)につながったんじゃないかな」

 ―改めて映画とは何でしょう。

 「人間がつくっているのに、いまの映画には作り手の思想が見えない。観客は映画に感動するんじゃない。映画に込められたフィロソフィー(哲学)に心動かされる。あの時代は二度と戻ってこない。不安を抱え、切羽詰まった状態で命がけで生きてやろうと。本当にあの時代はおもしろかったと思いますよ」

 ◆大林 宣彦(おおばやし・のぶひこ) 1938年1月9日、広島・尾道市生まれ。78歳。CMディレクターなどを経て77年「HOUSE」で監督デビュー。82年「転校生」、83年「時をかける少女」、85年「さびしんぼう」は“尾道3部作”と称される。主な作品に「異人たちとの夏」「なごり雪」など。長岡造形大の客員教授も務めている。

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