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コールセンターで売上倍増する方法:電話で利益を最大化するための検討リスト

この開発ブログでコールセンターの電話営業のKPI のことを書いてから、電話の仕事に関して聞かれることが増えました。古くて新しいというか、オンライン申込と組み合わせた売上拡大の手段として、電話受付/電話営業が注目されることが増えたように思います。

売上拡大を目指して、弊社はコールセンターを2014年に新設しました。今回の記事では、なぜ電話で売上が増えるのか、どうやってチームを立ち上げたのか、どこに苦労したのか等、試行錯誤の過程をまとめてみました。

目次

超シンプル申込フォーム→電話→CVRアップ!
外注か、内製か
電話業務の管理システム
家庭用電話機からビジネスフォンへ
スタッフ採用の勘所
営業時間と曜日とシフト管理
オフィスのパーティションと一体感
変動費率を正確に把握する
さいごに

超シンプル申込フォーム→電話→CVRアップ!

一番知りたいことは、電話受付したら売上がどのぐらい増えるの?ということだと思います。

要望を聞いて習い事をオススメ、Cyta.jpがコンタクトセンター設置で2倍の売上 のTechCrunch記事にある通り、弊社は電話業務をスタートすることで、売上を大きく拡大しました。

申込を電話で受け付けることで売上が増える要因は2つあります。

■その1:電話相談したいユーザーを取り込む

不安なことやわからないことがあるユーザーは、ネットよりも電話申込を選びます。
インターネット大好きな人からすると理解しがたいけど、ネット申込よりも電話の方が楽、というユーザーも一定数います。こんな感じでwebsiteに電話番号を載せておくだけでも多少の効果があります。

■その2:申込フォームでの途中離脱率が下がる(=コンバージョン率(CVR)が上がる)

その1より、こちらの方がはるかに重要です。
申込フォームの入力項目が多ければ多いほど、ユーザーは入力途中で離脱していきます。証券会社や保険会社の申込フォームは、(法的要件が多いこともあって)嫌がらせかと思うぐらい入力項目が多く、途中でイヤになっちゃって離脱したことがある人も多いのではないでしょうか。
電話受付の場合、ユーザーの電話番号さえ取得できれば電話をかけられるので、フォームの入力項目を劇的に減らすことができます。面倒なフォーム入力をユーザーにさせずに、代わりに電話でヒアリングして事務局側で入力するイメージです。
つまり、電話受付するから申込が増えるのではなく、少ないフォーム項目にして離脱率が下がるからCVRが高まる、というのが直接的な効果です。

弊社で達成した「電話で売上を増やす」とは、このフローのことです。(いわゆる普通の)コールセンターのように、ただの電話受付窓口を作ったから売上が増えたわけではありません。

超シンプルな申込フォーム(低い離脱率)

電話番号と氏名を取得(見込客リスト)

事務局からスーパークイックに電話(2min架電)

コンバージョン(CV)

サイタの場合、入力項目はたったのこれだけです。
(実際はユーザー別に色々出し分けてるのだけど、メイン導線はこれ。)

名前と電話番号を送信してもらったら、事務局からユーザーに電話します。極めてシンプルな入力フォームにすることで、確度の高い(あったまっている)ユーザーの見込客リストを取得しているわけです。
逆に言うと、そもそも入力フォームがシンプルなビジネスの場合は、電話にするメリットは小さいです。ワンクリックで購入できるECサイトは、電話受付を導入しても売上はあまり増えないのではないでしょうか。

ちなみに、わかりやすいので『コールセンター』と社外には言っていますが、「ただの電話相談窓口じゃないぜ」という意味を込めて、社内では『コンタクトセンター』と呼んでいます。

外注か、内製か

電話業務の話をするとまず出てくるのがこの話です。

「コールセンターなんて外注すればいいじゃん。」とよく言われます。
内製でやるなんてアホなの?みたいな顔されることも時々あります(笑)。

外部委託した方が良いかはもちろん各社の事情によるのですが、弊社の場合、私が内製すべきと判断した一番の理由は「ユーザーファースト」を実現するためです。
弊社のプラットフォーム事業はユーザーとユーザーをつなぐサービスです。ユーザーとの接点そのものである電話業務はビジネスプロセス全体を支える要素であり、なによりもそこから得られるインサイトが欲しい。だから、自前で開発していくべきだと考えました。

電話とは関係ないですが、例えば、Amazonの競争優位の一つは物流です。彼らが物流業務を外出ししていたら、今の姿はなかったんじゃないでしょうか。外部委託するかどうかは、オペレーションの全体最適をどれだけ重視するかだと思います。

その他、外注か内製かを判断するための要素はこんな感じ。

■非定型業務の割合
非定型業務の割合が高いと、そもそも外注できないです。外注すると、こちらも委託先も混乱するだけ。外注云々を検討する前に、まずは頑張って業務を標準化するべし。

■コスト
外注単価はかなり高いです。加えて、委託先会社との様々なコミュニケーションコストがこちら側に発生します。

■採用
詳しくは後述しますが、コールセンタースタッフを採用するのは(特に東京の場合)とても難易度が高いです。コールセンター業者の単価が高いのは採用コストがのっているから。暴利を貪っているわけではありません。

電話業務の管理システム

サイタの場合、まずはgoogle spreadsheetを使って架電受電記録表をスタートしてしまってから、徐々に自社開発を進めました。とにかくユーザー毎の電話記録さえあれば何とかなります。
そのあたりの経緯は Cyta.jp 管理画面に実装されているコールセンター機能 をご覧下さい。

現在、弊社の電話業務システムは顧客管理システムと統合されて自社開発しています。

エンジニアリソースが確保できない状況であれば、cybozu社の kintone は超オススメです。ちょっと前であれば数百万円の開発コストがかかったものが、100分の1ぐらいのコストで使えてしまう。非エンジニアでもかなりのカスタマイズができる凄腕の業務管理システムです。

家庭用電話機からビジネスフォンへ

最初は家庭用電話機を使ってました。普通の家庭にある電話機と同じです。子機が何台もある状態。電話業務をはじめてから1年以上経過して、「もう耐えられない!」となって、ビジネスフォンを導入しました。

実際に弊社で使っているビジネスフォン。ボタンがたくさんついてます。

家庭用電話機とビジネスフォンでたくさん違いはあるのですが、家庭用電話機で困るのは内線がないこと。例えば、「1番にかかってきた電話をAさんがとって保留にして、違うデスクにいるBさんが代わる」ということができません。
そのため、「Aさんが保留にした子機をBさんに直接手渡す」ということが発生します。デスクの上を子機は行き交うし、いろいろ間違えるし、とにかくすごくダサいです

大企業にとっては当たり前のビジネスフォンも、(お金がない)スタートアップにとっては投資するかどうか大きな判断となります。ちなみにビジネスフォンは内線を管理する「主装置」が必要で、これが弊社の主装置。

投資するのはちょっと早いかもと思っていましたが、通信キャリアの見直しもあわせて行ったところ、数ヶ月であっさり投資回収できました。もっと早く導入すればよかった。。。

スタッフ採用の勘所

コールドコールをひたすら電話するだけの仕事であれば違いますが、電話だけでなくemailを含めた様々な業務がある場合、スタッフ採用の難易度はかなーり高いです。サポートスタッフには、少なくともこの3つ全てが必要です。

・ものすごくたくさんの人と電話で話せるコミュニケーション力
・大量のメールをさばける読解力と文章力
・クレーマーとも対峙できる強い精神力

うーん、こんな人いるのかな、という感じですが、この3つが揃ってないと続きません。すぐ辞めちゃう。短期間で退職されてしまうと会社にとって損失ということ以上に、本人のキャリアに傷をつけてしまうので、お互い不幸になるだけ。だから、この3つを兼ね揃える人を見極めるのが採用担当の腕の見せどころです。

ちなみに、素養さえあれば、電話のトークスキルそのものは未経験でも大丈夫です。だいたい2ヶ月を過ぎたあたりで、突然別人のようにプロっぽく話しだしてびっくりすることが多いです。
弊社の場合、一人のスタッフが年間のべ5000人のユーザーとお話します。2年やれば1万人のユーザーと話すわけです。これだけ場数を踏むと、常人ではもう全く追いつけないぐらいのスキルが身につきます。

※去年の全社会で使った社員表彰用の資料。数字は一人のスタッフが1年間に通話した人数です。

あと、弊社では、採用オファーする前に数時間の「職場体験」を実施しています。
職場にいてもらって、ちょっと仕事もしてもらって、相性確認をお互いにするためです。実際のところ、職場体験の内容はそれほど重要じゃなくて、職場の雰囲気を感じてもらうことが目的。ユーザーや同僚との会話を3時間も聞いてもらえれば、会社全体のことがだいたいわかるものです。その上で、「本当にここで働きたいのか」を自分で判断してもらうために、職場体験を実施しています。

営業時間と曜日とシフト管理

自分のわかってなさを暴露するようで恥ずかしいですが、電話業務を開始してから2年間で、電話受付時間は本当に何度も変えました。

10時〜18時、週6日(月〜土)

10時〜18時、週7日(月〜日)

10時〜22時、週7日(月〜日)

10時〜20時、週7日(月〜日)

10時〜19時、週7日(月〜日) 【イマココ】

営業時間と曜日を決める上での要素はこんな感じです。

■ 接続率のゴールデンタイム
こちらはある期間の時間帯別の電話件数のグラフです。ゴールデンタイムが他時間帯と大きく異なっているのがわかります。

12時〜13時、18時〜19時の接続率が一日のなかで最も高いです。 電話業務はどれだけつながるか勝負なので、この時間に多くの人を充てられるかで売上が大きく変わります。
(詳しくは コールセンターの電話営業で一番大事なKPIは「接続率」 をご参照)

■非電話業務の割合
地味に大事なのがこれ。ゴールデンタイムに人をたくさん充てるほど、他の時間帯の定常業務がヒマになるので、このときにやる仕事があるかどうかです。時間をつぶすために仕事を作ってしまっては本末転倒なので、全体の業務量のバランスを見ながら、営業時間と曜日を決める必要があります。つまり、呼損率(ユーザーが電話をかけてきても話し中でつながらない率)を0%に近づけようとしてゴールデンタイムに人をたくさん配置すると、それ以外の時間帯に人が余ることになります。呼損率は何%がベストかは、最後はさじ加減。
※ゴールデンタイムにだけ働いてくれるパートタイムスタッフを採用するのは、難易度が超高いというか無理なので諦めました。

■何種類のシフトにするか
シフトの組み方次第で、売上も利益も大きく変わります。
現在の弊社の場合、9時〜18時、10時〜18時、10時半〜19時半の3種類のシフトを組んでいます。あんまり増やすと複雑なパズルみたいになっちゃうので、シンプルに維持できるかが腕の見せどころ。
実際、こんな感じで google spreadsheetを使ってます。

シフト組みは最初から専用ソフトを使いたがる人が多いですが、いろいろカスタマイズができた方が(特に最初は)便利なので、大事な要素がわかるまで、まずは google spreadsheet がオススメです。弊社の場合は、結局そのまま使い続けています。

オフィスのパーティションと一体感

電話スタッフからすると、別部署の声が入ってくるのは気持ちのいいものではありません。
隣のスタッフの業務電話は気にならなくても、別部署の雑談する声は意外と意識に入ってくるものです。要はうるさくてユーザーの声がよく聞き取れない。あとは、やばいクレームで一生懸命謝罪しているときに別部署から笑い声が聞こえると、本当にイラッと来るものです。 一方で、(エンジニアとかの)非電話スタッフからすると、電話が鳴る音も会話する声も、うるさくて業務に集中できません。

しかし、別部屋にしてしまうと部署間の溝がとても深まります。そして、部署間の溝はそのままユーザーとの距離になります

プロデューサーやエンジニアの企画でクレームが起きると、対応する電話スタッフからすると「おまえらがミスしたケツを拭いてやってんだぞ」となる。でも、非電話スタッフの多くはクレームの痛みを知らないから、「じゃあおまえが企画やってみろ(クレーム対応はそっちの仕事でしょ)」となります。まーどっちも正しくて間違ってる。
職業柄、どうしても起きてしまうのですが、放置するとすぐにダメ会社になってしまいます。企画実行の難しさと、クレームの痛みと、両方を理解したマネージャークラスの努力が必要なところです。

弊社の場合、悩んだ末に電話チームを部屋にしたけど、お互いの姿が見えるガラスの壁にしました。

あと、私がちょいちょい扉を開けっ放しにしたりしてます。
(すぐに誰かに閉められるけど)

変動費率を正確に把握する

顧客1名のLTV(=顧客生涯価値)、つまりいくらの売上と利益があるのか、特に変動費率がわかってないと、手間のかかる電話業務はスタートできません。

ネット企業のスタートアップは「プラットフォーム」であると自負していることが多いですが、問題はどの程度プラットフォームかです。プラットフォームビジネス=固定費商売、つまり低い変動費率が前提ですが、特に売上が小さい初期段階の時に、変動費率を低く見積もる傾向があるというか、弊社がそうでした。

売上が拡大すればするほど利益率がアップする、と期待するわけですが、電話業務とは変動費率を高めることに他ありません。電話受付をはじめれば売上は増えますが、利益率の低い商売に人件費をかければ、なんとか黒字を確保できたとしても、ただの小忙しい会社になってしまいます。当たり前のことを書いてるだけなんですが、エンジニア、プロデューサー、その他間接部門の人件費は本当に固定費なのか、実態としては一部変動費ではないのか、そこの見極めができていないと、売上拡大に正比例してコストも増えてしまってから慌てることになります。

電話はいったんスタートするとあちこちに影響が大きな業務なので、正確な利益率の把握、そのための迅速な月次決算ができていることが前提条件です。

さいごに

弊社の強みは、オンラインとオフラインの組み合わせにあります。その組み合わせをつなぐピースのひとつが、申込の電話受付でした。電話チームを外注せず、競争優位の一つとして内に取り込み、電話スタッフがサービス開発者そのものになることで、ユーザーインサイトへの理解がぐっと深まったと思います。また、「電話で受け付ける」という事が選択肢にあることで、新規打ち手の幅を大きく拡げることができました。

電話スタッフがサービス開発を行うことについては、「全社員を開発者にする取り組みと進捗について」や「チームが強くなるマニュアルの作り方」をご覧ください。弊社の電話スタッフは、GitHubでPull Request、SQLの修正、画像加工から経理の仕訳まで、何でもやります。その根底にあるのは、ユーザーを理解してる人が何でもできるようになったら素晴らしいサービスを作れるよね、という考え方です。私がコールセンター機能を外出ししないのは、この基本理念があるからです。

今回の記事が、電話による売上拡大に努力している人たちの参考になればうれしいです。
それから、この記事に興味をもっていただけた方は、いいねとかシェアとかしていただけると、もっと会社のノウハウをがしがし書くぞ!というモチベーションにつながるので是非お願いします!

@tkiyama

※サイタではエンジニアプロデューサーデザイナーサポートスタッフを募集しています。ご興味ある方はぜひ!

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