中古車買い取り大手、ガリバーインターナショナル。社名を聞けば、誰しもが黄色を基調とし、緑で「Gulliver」と書かれた看板を思い浮かべるだろう。同社は1994年の設立以来、店舗で買い取った車を、中古車オークションに出品する「卸売りモデル」を柱に業容を拡大してきた。
【写真】気になる新社名とロゴは?
そのガリバーインターナショナルは、7月15日にひっそりと社名を「IDOM」(いどむ)に変更した。周辺業界では富士重工業が2017年4月に社名を「SUBARU」に変える方針だ。
■ 新しい社名IDOMに込めた思い
ただ、ガリバーの場合は消費者が慣れ親しんだブランドを捨て、まったく違う社名に変更する。SUBARUとは逆のパターンだ。
社名変更の狙いを、創業家出身の羽鳥由宇介社長は、「(アパレル大手の)ファーストリテイリングが、ユニクロやジーユー、セオリーといった複数のブランドを抱えているように、IDOMも複数の販売チャネルを抱えるようになったから」と説明する。
ガリバーは創業者の羽鳥兼市・名誉会長の方針のもと、創業から10年間は中古車の”発生元”である買い取りでシェアを獲得し、中古車流通市場の川上を抑えることに注力してきた。
2016年2月末時点では直営店とフランチャイズ店を合せて全国372店と、他を圧倒する買い取りインフラを持つ。メーカー系ディーラーを除けば、日本で最大の中古車在庫をもつ会社になった。
だが、卸売りビジネスの弱みを露呈したのが、2012年にエコカー補助金が導入されたときだった。
新車市場が活況になったものの、新車ディーラーの販売競争激化のため、顧客にとっては実質的に値引きとなる中古車買い取り価格の引き上げが相次いだ。この結果、ガリバーでも買い取り価格を引き上げざるを得なくなり、台当たり収益が急速に悪化した。
卸売りにはこうしたリスクが伴う上に、国内の新車販売低迷で買い取り台数は頭打ちの状態が続く。そこで、再び成長軌道に乗せるため、ここ数年のガリバーは卸売りよりも粗利がよい小売り事業へのシフトを進めている。2016年2月末時点で131店にとどまる展示型の小売店を2020年2月末には371店舗へ増やす計画だ。
■ 「IDOMの名が消費者に知れ渡ることはない」
中古車小売り主体「アウトレット」だけではなく、ファミリーカー専門「スナップハウス」、軽自動車専門「ミニクル」、輸入車専門「リベラーラ」と細分化されたチャネルを展開。ショッピングモール内に設置されている「HUNT」(ハント)は、カフェや雑貨店を併設し、家族連れが立ち寄りやすい工夫をこらす。
車がコモディティ化するに従って、消費者はかつてのようにトヨタ自動車の「86」が欲しい、日産自動車の「GT-R」が欲しいといったブランドやメーカーへのこだわりが薄れる。IDOMの多チャネル展開は、どのメーカーでもいいから、とにかくミニバンが欲しいといった、消費動向の変化を踏まえたものだ。
「主婦には、ユニクロを展開している会社がファーストリテイリングだと知らない人もいる。各チャネルの告知は強化するが、IDOMという社名が消費者に認知されることはないだろう」(由宇介社長)。
もう1つ、会社として強化する方針を打ち出したのがネット分野の新規事業だ。7月13日には今2017年2月期の業績見通しを営業利益108億円から76億円に下方修正した。
買い取り台数の伸び悩みや海外子会社の不振、軽自動車燃費不正の影響もさることながら、「未来市場開拓費用」という名目で、約15億円の経費を計上するからだ。
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