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【埼玉】反戦貫いた画家の生涯 原爆の図丸木美術館で「四国五郎展」
原爆をテーマにした絵本「おこりじぞう」の挿絵や詩人・峠三吉の私家版「原爆詩集」の表紙絵などで知られ、生涯にわたり反戦と平和を表現し続けた画家四国五郎さん(一九二四〜二〇一四年)の画業を振り返る「四国五郎展」が、東松山市の原爆の図丸木美術館で開かれている。六日の「ひろしま忌」には、女優木内みどりさんによる「おこりじぞう」の朗読、ミュージシャン坂田明さんのジャズライブなどのイベントも催される。 (中里宏) 四国さんは一九四八年、生死の境をさまよったシベリア抑留から広島に帰還し、「戦争を生きのびたら、ともに画家になろう」と約束していた三つ下の弟・直登の被爆死を知る。広島の惨状と肉親の死が、今も続く「広島平和美術展」の創設など、その後の活動の原動力になった。 復員の翌年、峠三吉と知り合った四国さんは、反戦詩をつづった絵を街頭に張り出す「辻詩」の活動を始める。朝鮮戦争(一九五〇〜五三年)の最中、占領軍の言論統制下でのゲリラ的な運動だった。五〇年、丸木位里・俊夫妻も官憲の目をかいくぐりながら「原爆の図」の全国巡回展を始め、出発点となった広島では、四国さんらが展覧会を支えた。 会場には、シベリア抑留時代を回想した水彩画や、四国さんがテーマの一つとしていた母子像、「おこりじぞう」の原画などの作品群が展示される。百枚以上作られ、八枚しか現存していない「辻詩」の紙の隅には、画びょうやテープの跡が残り、占領下の反戦活動の痕跡を今に伝えている。 絵画以外にも弟直登が死の前日(四五年八月二十七日)までつづった詳細な日記の写しや、シベリア抑留中に書いた豆日記をつま先に隠して持ち帰ったときの靴なども並ぶ。同美術館の岡村幸宣学芸員は「四国さんは生涯をかけて反戦と平和のために絵を描こうと誓った画家。戦争を振り返る八月に、親子で見てほしい」と話している。 同美術館=電0493(22)3266=は月曜休館(今月十五日まで無休)。入館料大人九百円。 PR情報
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