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破壊措置命令出せず 移動式、察知困難

北朝鮮が発射したミサイルの落下地点付近を捜索する海上自衛隊の護衛艦「まきなみ」(右奥)とヘリコプター=秋田県沖の日本海で2016年8月3日午後6時59分、本社機「希望」から宮間俊樹撮影

 北朝鮮が3日、「ノドン」(射程1300キロ)とみられる中距離弾道ミサイル2発を発射し、うち1発が約1000キロ飛行して秋田県・男鹿半島の西約250キロの排他的経済水域(EEZ)に落下した。北朝鮮のミサイルの弾頭部分が日本のEEZに落下したのは初めてだが、日本政府はミサイルの破壊措置命令を出すことができず、ミサイル防衛能力の限界も露呈した。国連安全保障理事会は、日米韓の要請で3日午後(日本時間4日午前)に緊急会合を開く予定。

     ノドンは核弾頭の搭載が可能とされ、日本のほぼ全域が射程に入る。安倍晋三首相は3日夜の記者会見で、「わが国の安全保障に対する重大な脅威だ。国際社会と緊密に連携し、毅然(きぜん)と対応する」と語った。日本政府は国連安全保障理事会の決議に対する明確な違反として、北京の大使館ルートを通じて厳重に抗議した。

     政府関係者によると、弾頭が落下した地点付近にはイカ釣り漁場があるが、漁業関係者や船舶、航空機の被害は確認されていない。防衛省は3日、自民党の会合で、今回は被害が出なかったなどとして、日本に外部から武力攻撃が行われ、自衛隊の防衛出動が可能となる武力攻撃事態には当たらないとの判断を示した。

     北朝鮮は今回のミサイル発射に関して事前通告せず、車両で移動できる発射台(TEL)を使ったとみられることから、周辺国や国際機関でも十分な兆候をつかめなかった。日本は迎撃ミサイルを搭載したイージス艦や地上配備型迎撃ミサイルのパトリオット(PAC3)を展開させておらず、国が各自治体などを通じて緊急事態を知らせる「Jアラート」の発信もなかった。

     政府関係者は「もし日本の領土まで飛んできても、迎撃できなかっただろう」と打ち明ける。常時迎撃体制をとることができる陸上配備型の高高度迎撃システムの導入に向けた議論が加速する可能性もある。

     今回の発射軌道の延長線上に位置する青森県つがる市の米軍車力通信所内には、ミサイル防衛用の早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」が配備されており、ミサイル防衛関連施設への攻撃を想定した訓練との見方もある。

     自衛隊と海上保安庁は3日、秋田県沖の日本海上で、ミサイルの破片とみられる物体を航空機から確認した。海上自衛隊の護衛艦などが現場海域で回収作業に当たっている。自衛隊などが北朝鮮の弾道ミサイルの破片を洋上で発見して回収した例はない。回収できればミサイル技術や性能などを分析する。【村尾哲、町田徳丈】

     【ことば】排他的経済水域(EEZ)

     国連海洋法条約で沿岸国の経済的な主権が及ぶと定められた海域で、沿岸から200カイリ(約370キロ)の範囲。沿岸国はEEZ内の水産・鉱物資源の探査や開発の権利が得られる。

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