文/森田浩之(ジャーナリスト)
「聖火」が秘めた政治性
リオデジャネイロ・オリンピックのスタジアムに、まもなく聖火がたどり着く。いつものようにギリシャのオリンピアで採火された火が、人から人へとリレーされ、開会式で聖火台に点火される。オリンピックではおなじみの儀礼だ。
しかし、日本人が「聖火」と呼ぶあの火を、他の国ではそう呼ばないことはご存じだろうか。
IOC(国際オリンピック委員会)の公式用語では、聖火は「Olympic flame」。直訳すると「オリンピックの火」だ。聖火リレーは英語では「torch relay」。「たいまつリレー」という意味になり、味も素っ気もない。中国語では「火炬」などと呼び、ここにも「聖なる」という意味は入らない。
誰かがあの火を「聖火」と呼んだ。絶妙な翻訳ではないか。
この言葉は、「オリンピックが大好きな国民」といわれる日本人のオリンピック観に多少なりとも影響を与えているだろう。
実際、これまでのオリンピックで、聖火はさまざまな政治性を背負わされてきた。聖火という美しい日本語は、この「たいまつ」の持つ本当の力を覆い隠す方向に働いているのかもしれない。
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