どうすれば世界で勝負できるのか? 「がんばれば、夢はかなう」は本当か? 憧れを追いすぎるとスランプに陥る?
では、どうすればよいのか。前回、為末大さんが考える「限界」突破法を紹介した(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/49336)。「努力しない」「大きな夢はいらない」「成功体験はいらない」「期待にこたえない」――「限界の檻」から抜け出すための考え方とは?
無意識の領域を味方に
『限界の正体』では、限界の檻から脱出する考え方をいくつか紹介しています。
しかし、スポーツの世界では、意識すらせずに、記録を出してしまっているケースがあります。
我を忘れた集中力を、ゾーンに入ると呼ぶこともありますが、人間の無意識の領域を味方につけることができれば、さらに限界の檻を抜け出す可能性も拡がるのではないでしょうか。
それは僕の競技人生の中でも感じてきたことです。
僕は、自分の身体を使って競技を行ってきた結果として、身体も、頭も、心も、大部分は、自分ではコントロールできないものであると感じています。
以前は、自らの行動を自らの意識で決定していると思っていましたが、じつは、そうではなかったのです。
脳で意識するより動作のほうが早い
身体の動きには、意識的に動かす領域以外に、無意識に動かす領域があって、意識をしていなくても、無意識のうちに行動をしていることがあります。たとえば、相手選手をどう抜こうかと考えているサッカー選手は、考える前に無意識に足が動いてドリブルをはじめています。
現役時代に、アメリカの神経生理学者、ベンジャミン・リベットが書いた『マインド・タイム脳と意識の時間』(岩波書店)を読んだとき、とても感銘を受けました。
リベットが行った実験は、身体が先に動いて、それをあとから意識が意味づけしていることを示唆していました。
たとえば、リベットは、「右手を曲げる」という行動をとった被験者の3つのタイミングを計っています。
1. 「右手を曲げよう」と意識したタイミング
2. 手を曲げるために、脳に電気が起こったタイミング(準備電位)
3. 実際に右手が曲がったタイミング
すると、被験者が「右手を曲げよう」と意識したタイミングの3分の1秒前に、脳がすでに準備をはじめていることがわかりました。つまり、意識するよりも動作のほうが早かったわけです。
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