北朝鮮ミサイル 頻繁な発射意図は何か
北朝鮮がまたも弾道ミサイル発射という挑発行為に出た。弾道ミサイル技術を使ったあらゆる発射を禁じた国連安全保障理事会の決議への明白な違反だ。
発射されたのは、日本のほぼ全域を射程に収める中距離弾道ミサイル「ノドン」と見られる。約1000キロ飛んで、秋田県・男鹿半島の西250キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。ミサイルの弾頭部分が日本のEEZ内に着弾したのは初めてのことだ。
実戦配備されている弾道ミサイルを、他国のEEZ内に撃ち込むという危険な行為は、到底、認められない。事前予告も全くなかった。幸い航空機や船舶に被害はなかったが、状況次第では漁船などが巻き込まれていたかもしれない。
ノドンは、移動式の発射台付き車両を使うため、任意の場所やタイミングで発射することができ、探知が極めて難しい。今回、日本政府は発射の兆候をつかめず、破壊措置命令を出さなかった。
今年に入ってから、北朝鮮による弾道ミサイル発射のあまりの多さに強い懸念を覚える。3月に国連安保理が北朝鮮に対する制裁強化を決議してからも、中距離弾道ミサイル「ムスダン」、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を含め計16発の弾道ミサイルを発射している。
ミサイルの種類が多様なら、発射場所もさまざまだ。ノドンだけでなくムスダンも、短距離弾道ミサイル「スカッド」も、移動式発射台を用いるため奇襲的な攻撃が可能だ。深刻な事態と言わざるを得ない。
ノドン発射には、どんな意図があるのだろうか。今月の米韓の合同軍事演習や、米軍の最新鋭迎撃システムの韓国配備決定、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)の議長声明への反発があるのかもしれない。
だが基本的には、北朝鮮は、核開発と経済建設を並行して進める「並進路線」のもと、自国の体制維持のため、核抑止力を質・量ともに強化する方針を明らかにしており、それを今後も進めていく姿勢を示したと受け止めるべきだろう。
安倍晋三首相が「許し難い暴挙」と批判したのは当然としても、北朝鮮の意図を把握しなければ、効果的な対応策は出てこない。頻繁な発射の狙いを正確に分析し、認識を関係各国で共有しなければならない。
日米韓はもちろんだが、中国やロシアとも連携が必要だ。日韓間では、防衛の秘密情報を交換する際の取り決めとなる、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の締結を急ぎたい。日本は国際社会と協力して対応を練り直し、強化する必要がある。